GTDとタスクシュートを組み合わせる

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私の愛しいアップルパイへ

デビッド・アレン氏のGTD(Getting Things Done)は非常に優れたタスク管理手法でした。

すべてを書き出すことで脳内メモリを解放する、思考と実行のタイミングをずらす、情報を最新化する週次レビューに取り組む、情報を整理するフローチャート、そして単に効率的に仕事をこなすタスク管理ではなくいま没頭すべきことに没頭することを目的とする、など画期的な考え方に瞳からは自然に涙が流れ、この金色のオーラをまとった書物との奇跡的な出会いについて神に感謝したものです。

GTDは私たちのような夢見リアリストの耳に心地よく響きました。しかし、完璧な人間がいないのと同じように完璧なタスク管理手法というものがないのも事実です。

GTDとタスクシュートを組み合わせる

私はGTDについて一通り実行したあと、GTDには致命的な欠点があると確信しました。そして、その欠点を埋めてくれたのがシゴタノ管理人の大橋悦夫さんが考案した「タスクシュート」でした。

私が思うに、GTDには大きな問題が2つあります。簡単に説明しましょう。

問題1:ネクストアクションは決まったけど…

結論からいえばGTDの役割はネクストアクションを見極めるところまでで、ネクストアクションをどうすれば実行に移せるのか?ネクストアクションをいつ行動に移せばいいのか?といった疑問にはほとんどまともな回答が用意されていないということです。

しかし、すでに私たちが自分に対して理解しているとおり、人はやるべきことが明確になったとしても、それだけでは簡単に行動には移せないものです。やる気が低い、時間がない、変化が怖いなど、例を挙げればきりがありません。

GTDではコンテキスト(家で実行、移動中に実行、◯◯さんと会ったとき、など)を設定することで、適切なタイミングでネクストアクションを実行に移せるようになると書かれていますが、この方法は最初の一ヶ月を過ぎてから(GTDの新鮮味が薄れたあたりから)はうまく機能しなくなるでしょう。

整理フローにのっとってネクストアクションを見極めて脳内メモリを解放する。GTDに素晴らしい価値があることは疑いようがありませんが、ネクストアクションがうまく実行に移されなければその価値は半減してしまいます

ネクストアクションを適切に実行に移していくにはどうすればいいのでしょうか?これがGTD実践者が最初に行き詰まる問題でしょう。

問題2:サムデイリスト(いつかやることリスト)に関する勘違い

もう1つ、GTDで明らかに勘違いされているのがサムデイリスト(いつかやることリスト)です。GTDでは期限が明確でないタスクはサムデイリストに追加されるようになっています。

サムデイリストは今すぐにやらなくてもいいタスクの集合体なわけですが、ほとんどのGTD実践者はこれを優先度の低いタスクの集合体ないしはゴミ箱同然のものとして扱っていることでしょう。

しかし、このサムデイリストに書かれたタスクを日々の生活のなかでどれだけ積極的に取り組んでいくかがどれほど重要かについてはほとんど言及されていません。おそらく多くのGTD実践者がこのサムデイリストの重要性について勘違いしていることでしょう。

健康に関すること、成長に関すること、新しい分野の勉強、新しい仲間や古い友人との交流、家族との絆を深める施策、人生哲学や人生戦略に関する考察、好きなことを見極める内省など。

サムデイリストこそネクストアクションと同等か、それ以上に重要なリストでもあります。サムデイリストにどう取り組んでいくかはネクストアクションを適切に実行に移していくのと同じくらい重要なことです。

解決策:習慣(記録)からタスクリストを作るタスクシュート

では、どうやって?私は最初、中長期的なプランを練ることでこの問題を乗り切ろうとしていました。今週、今月、一年のプランといった高いレベルでタスクを俯瞰することで、タスク実行のタイミングをコントロールしようとしたのです。しかし、この方法はすぐに破綻します。

プランはタスクの優先度を見極めるためにパワフルな効果を発揮しますが、タスクを実行に移すためにはそれほど大きな効果を発揮してくれなかったからです。

そのうち、ネクストアクションやサムデイリストをきちんと実行に移すという問題に対しては、百八十度反対の方法が必要であることに気がつきました。それがタスクシュートです。

タスクシュートの最もユニークな点は、計画ではなく記録からタスクリストを作りあげていく点です。人は習慣の塊です。昨日やったことのほとんどは今日もやることになります。つまり、昨日の記録を参考にすれば、現実的であり、なおかつ現実的に実行可能なタスクリストを作ることができるわけです。

タスクシュートがGTDを補完してくれる最大の理由は2つあります。

第一に、タスクシュートはGTDのネクストアクションには決してあらわれることのないアクションを明確にしてくれることです。それは習慣です。GTDでは気になることがネクストアクションになりますが、気になることにならない習慣はネクストアクションにあがってこないのです。しかしそれはネクストアクションを実行していくうえでとても重要な情報であるのは間違いないでしょう。

第二に、タスクシュートは習慣を可視化することで、ネクストアクションやサムデイリストを実行するベストなタイミング(GTDでいうコンテキスト)を炙り出だせることです。タスクシュートを使うと記録をもとに時間に余裕がある時間帯、気力が高いもしくは低い時間帯というものが見えるようになります。

このような時間帯のコンテキストが分かると、適切なタイミングで適切なアクションを実行できるようになるのです。

GTDで選択し、タスクシュートで実行する

GTDはいうなれば選択のタスク管理術でした。頭のなかに雑多にある気になることを選り分け、いま没頭すべきことを明確にしてくれます。

一方、タスクシュートは実行のタスク管理術といえるでしょう。記録から習慣を可視化し、まだ習慣化されていないより複雑でより高度なネクストアクションの実行タイミングを見極め、実際に実行できるようになります。

選択と実行。この2つのタスク管理術は実に相性が良いのです。

私がタスクシュートを実行するときは、クラウドで実行できる「TaskChute Cloud」を使っています。

貴下の従順なる下僕 松崎より

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システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。