シンプルプレゼン by ガー・レイノルズを読んだ感想とまとめ

Presentation

私の愛しいアップルパイへ

私にとってのプレゼンの定義はこうです。「自分のアイデアを相手に伝え、現実を理想に近づけるための協力をお願いすること」。つまり「説得」です。そう考えると、ほとんどの人にとって重要な意味を持つ技能だと分かります。

あなたも、かのスティーブ・ジョブスズ氏やTEDカンファレンスなどの優れたプレゼンターに憧れを抱いているかも知れません。

しかし、プレゼンに苦手意識を感じている人は多いようです。あなたも「素晴らしいプレゼンはやりたいけど、日本ってのは海の向こうとは風土が違うから、こう上手くはいかないだろうね」なんて諦めてはいないでしょうか。

この先入観について小気味よく「NO!」を突き付けてくれる本があります。それが今日紹介する「シンプルプレゼン」です。

「パワーポイントによる死」を回避せよ

著者であるガー・レイノルズ氏は過去にアップルに務めていた経歴もあるプレゼンの名手です。彼は本書の冒頭で「日本人にはプレゼンの教育も、いいお手本も居ない。だから日本人はプレゼンが下手だ。」というのは誤解だと力強く説きます。

問題なのは日本人かどうかではなく、”箇条書きを多用した複雑なスライドを用いたプレゼン”=”パワーポイントによる死”に陥っていることだと言うのです。

そして、日本人でもコツさえ身につければ、スティーブ・ジョブスズ氏やTEDカンファレンスなどの如き優れたプレゼンターになれるのだと。

記憶に残るプレゼンをするための6つのポイント

あなたが「パワーポイントによる死」を回避し、記憶に残る日本人プレゼンターになるためにはどんなことができるのでしょうか。本書から私の胸を強く打ったポイントを6つご紹介しましょう。

1.最初はアナログで発想する

プレゼンの構成を考えるときに、いきなりパソコンの前に座るのはナンセンスです。まずは付箋やノートなどを用いて、アナログ環境でアイデアを練ってみると良いでしょう。

こうすると、パソコンとは違ってノイズが目に入らないので集中できますし、マウスを使うよりずっと直感的にアイデアを練れるのです。

私もプレゼンに限らず、ブログ記事や作曲などについても、壁に付箋を貼りながらアナログ環境で作業するようにしています。こうすると確かに何かが違うのです。

想像力を使う作業は、壁とポストイットでアナログに思考を発散させる | jMatsuzaki

2.メッセージを徹底的に絞り込む

最も重要なのは、伝えたいメッセージをこれでもかというほど徹底的に絞り込むようにすることです。「あれもこれも」では何も伝わらなくなってしまうのです。「パワーポイントによる死」に一直線です。

プレゼンの構成を考える前に、聴衆のニーズについて熟考し、何を持ち帰って欲しいか明確にする必要があります。ポイントは何を入れるかではなく、何をそぎ落とすかを考えることです。

著者は記憶に残るメッセージの要素として、以下6つの要素を上げています。

①シンプル
②意外性
③具体性
④信頼性
⑤感情
⑥ストーリー

3.感動的なストーリーを語る

記憶に残るメッセージの要素にも上がっていますが、ストーリーを語ることはプレゼンを成功させるために不可欠の要素です。

プレゼンが「説得」だとしたなら、「共感」なしにそれを達成することは出来ません。そして「共感」を得るためには、感動的なストーリーを語るのは大きなパワーを発揮します。

論理的な数値やデータだけでは不十分なのです。

4.デザインスキルを身につける

プレゼンにおいてスライドは協力な武器になります。人は情報を耳で聞くだけより、目と耳で同時に伝えた方が圧倒的に記憶に残りやすいからです。本書にはこんな風に書かれています。

メディナ氏の調査によると、聴覚と視覚を同時に刺激すると、記憶に残る割合は大幅に上昇します。情報を耳だけで聞いた場合、3日後には10%しか記憶に残りません。しかし、そこに画像を加えると、記憶の定着率は65%まで上昇します。

P.70

そして、こう続きます。

ただ、画像と言ってもイメージやデコレーションではダメです。スライドの内容に関連する画像でないといけないのです。

P.70

つまり、プレゼンの内容を効果的に伝えるデザインスキルを身につければ、強力な武器になるということです。

5.身構えず自然体で話す

人は信頼している人の話を聞きます。逆に信頼できない人の話は聞かないものです。

ですから、話し方については自然体で話すことが大切になってきます。スクリーンを見ながらスライドを棒読みしているだけでは、聴衆から信頼されるのは難しいでしょう。

スティーブ・ジョブズ氏のように、普通の会話みたいに親近感のある話し方をするのがベストなのです。

6.聴衆の集中力の波を把握する

著者はプレゼンに際して、聴衆の集中力の変化に誤解があると言います。

最初は聴衆の集中力が低くて、中盤に向けて徐々に集中力が高まり、終盤でまた集中力が落ちると思っているとしたら、その認識は間違っています。ですから、ウォーミングアップ代わりに最初にプレゼンの内容と関係ない話をするのも間違いということになります。

正しくは逆なのです。最初が最も集中力が高く、中盤は集中力が下がり、終盤になってまた集中力が上がるのです。ですから、プレゼンが始まったら、聴衆の集中力が高いうちに一番の要点を話した方が良いのです。

本書ではこの集中力の実態から、プレゼンの構成を以下4つの役割に分けています。

開始直後「コネクト」→つながる
中盤前半「エンゲージ」→絆を強める
中盤後半「サステイン」→維持する
終了「パワフル」→力強く終わる

P.103

あなたも記憶に残る日本人プレゼンターになれる!

上記は本書に散りばめられた煌びやかなアイデアのうちのごく一部です。

本書が面白いのは、著者であるガー・レイノルズ氏による講演のDVDが付属している点です。内容は本書に書かれているプレゼンのコツに関する講演です。実際に優れたプレゼンを見ながら、プレゼンのコツを学べるというわけです。このDVDを見るだけでもきっと引き込まれますよ :^D

「私もジョブズのようなプレゼンができれば、、、」。あなたがもしそう考えているのなら、オススメの一冊です。

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著者画像

システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。