目標管理は誤りだと分かったので、この単語は封印することにします

medium_3882316845
photo credit: Foto Pamp via photopin cc

私の愛しいアップルパイへ

謝らなければならないことがあります。

これまで自分ではしっくり来ていないながらも、イメージが湧きやすいという理由だけで使ってきた単語があるんです。「目標管理」というやつです。私はいつまでに何をやりたいかという長期的な計画を持っており、それを日々実践しながら修正しています。しばしばこれを目標管理と呼んでいました。

先日「仕事は楽しいかね」がオーディオブック化されたということでさっそく聞いてみたら、「目標管理」という単語がいかに相応しくなかったかを理解しました。デイル・ドーテンを褒めてあげたいです。

仕事は楽しいかね?

目標管理のアキレス腱

夢を叶えるプロセスは宝くじに似ています。第一に、どれが当たりくじかは引いてみるまで誰にも分からないということです。第二に、私たちが出来るのは引くくじの数を増やすことだけなのです。

「仕事は楽しいかね」にはこんな風に書かれています。

今までに読んだ素晴らしい小説の中で、ベストセラーにならなかったものが何冊あるか、考えてごらん。地方の劇場に出ている俳優だって、ブロードウェイの俳優と同じくらい実力のある人が何人いるだろう。

問題は、才能のあるなしでもなければ勤勉かどうかってことでもない。コイン投げの達人じゃないってことなんだ。だから僕はたった1つしか目標を持っていない。「毎日毎日、違う自分になること」

これは、試すことを続けなければならないということだ。そして試すこととは、あっちにぶつかりこっちにぶつかり試行錯誤を繰り返しながらそれでもどうにかこうにか、手当たり次第にあれこれやってみるということだ。(中略)

必要は発明の母かも知れない。だけど、偶然は発明の父なんだ。

夢を叶えにいくということは、現状にどでかい変化を起こすために日々実験を繰り返すことです。ご存知の通りトーマス・エジソンは「私は失敗を一度もしていない。一万回も”このやり方ではうまくいかない”という発見を得たのだから。」と言いました。含蓄のある言葉です。

さて、これに関連して私は今までよく目標管理と題した話をしてきましたが、その時に受ける反論は概ね以下のようなものでした。

●宝くじの結果をコントロールしようとしている
●将来どうなりたいかが思考の幅を狭めている
●長期の目標をたてようとしても、毎日続けたいほど好きなことが見つからない

これらは実にごもっともなご意見です。まさに宝くじの考え方にのっとっています。ただ、私もこれらの点に留意しながら計画というものを作って来たのです。

ですから、ここできちんと釈明しようと思います。私が必要としてきたのは、そして私が実践してきたのは「目標管理」ではなく「実験計画」でした。

それでも実験計画が必要な理由

「仕事は楽しいかね」に書かれている通り、究極的な目標は「毎日毎日、違う自分になること」です。何が当たるかわかりませんから、とにかくあれやこれやと実験してみること。言うは易しですがこれを理解したところで、ほとんどの人は実践できないでしょう。

Why?阻害要因は大きく3つあります。

第一に、多くの場合私たちは夢に貢献する実験以外にも無数のタスクを抱えています。掃除や洗濯などの雑多な作業はいくつもありますし、睡眠だってとらないといけません。第二に、人間ですからときには怠惰に流されたくなるときもあるでしょう。

そして第三に、あなたの夢に貢献するか否かに関わらず人からの依頼というのは絶えず降って湧いてくるものです。人からの依頼というのは悪魔的な魅力を持っています。人を喜ばせられるので一時的な快楽を得られますし、その人の要望に答えれば良いのでゴールが明確ですから、つい流れに身を任せたくなります。

そこで「実験計画」が必要になるのです。今日これから夢に向けて変化を起こすためにどんな実験をしていくのか、その計画があれば、雑多な作業に流される前に、怠惰のうちに流される前に、人からの依頼に流される前に、もうひと踏ん張りするパワーが得られるからです。

自分の夢を主体的に追い求めるのは実に勇気が要ることです。このとき計画は強制ギプスのように働きます。現実に押しつぶされる前に一万回もの実験を繰り返すことのできる内なる炎になるのです。

(実験×計画)-目標=変化

大切なのは将来どうなるかを見通すことではありません。今日どんな実験をするか決めることです。

変化に向けて実験することと、これからの計画をたてることは互いに干渉しあう要素ではありません。変化を恐れず実験計画を遂行する訓練を積み重ねれば、いずれ計画がなくとも実験を繰り返せるようになるでしょう。唯一の目標は「毎日毎日、違う自分になること」です。

仕事は楽しいかね?

貴下の従順なる下僕 松崎より

著者画像

システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。