個人ブログを10年書き続けてみた結果

私の愛しいアップルパイへ

2021年8月をもってjMatsuzaki個人ブログが10周年を迎えました! Wow!

ありがとうございます! ありがとうございます! そんなに祝ってもらえるとは思いませんでした。

あなたもご存じの通り、このブログを開設したことは人生を変えたと言っても過言ではないでしょう。

10年で1,700を超える記事をこの個人ブログに投稿してきました(他メディアへの寄稿を含めるともう少し多いです)。

今日は10年に渡って個人ブログを書き続けてきて経験したことや効果についてまとめます。

10年間のうちに経験したこと

10年前の8月、仕事にすっかり膿んでいた私は変化を求めてブログを開設しました。

当初、ブログに対して期待したのは、自分の学びを文章化することで知識を深め、キャリアプランに弾みをつけることでした。そして、願わくば会社外とのつながりを増やしてキャリアプランに柔軟性をもたらしてくれることを期待しました。

そしてそのすべてを期待どおりに、いや期待以上に実現してくれたのがこの個人ブログでした。個人ブログは間違いなくこの10年のすばらしい変化の要として働いてくれたのです。

ブログ開設当時、良い意味で現実からの逃避的な機能をもたらしてくれました。これは江東区の自宅と会社の往復でしかなかった生活に潤いをもたらしてくれました。私は毎日隙あらばブログを書きました。昼休みやトイレ休憩、通勤時間など、文字どおり隙あらばです。

それからすぐ、人生に素敵な偶然をいくつももたらしてくれました。これは本当の意味で生活を根本から変えてくれました。仕事もライフスタイルも、すべてです。

ブログを書き始めてすぐに同じ興味をもつブロガー友達ができました。この関係は当時会社で知り合った友人とのような堅苦しさがなく、実に心地良いものでした。

彼らとの交流を通して、私は会社の中ではけっして得られなかったであろう数々の知識を得ました。山羊のように視野が広がった気持ちでした。

ブログ開設から数ヵ月後、アップルパイが増えるに伴ってブログ執筆だけにとどまらない活動ができるようになりました。出版社からの依頼で本を執筆したり、各種イベントに招かれたり自ら企画して講演するといった活動です。

ある時期には毎週何らかのイベントに登壇していました。仕事との両立には大きなエネルギーが必要でしたが、自らの才能を生かした自立的な活動は刺激的で楽しく取り組めました。

執筆や講演を仕事に含めれば、私は毎週7日間フルで馬車馬のように働きました。

その努力が実って、ブログ開設から半年が経ったころにいよいよ会社を辞めることにしました。ブログによって広がった活動に全力で集中したかったからです。

正直に告白すれば、フリーランスになった当時の生活は苦しいものでした。後悔したことも何度だってあります。文字どおり食事が喉をとおらないときすらありました。不安で寝付けなかった日は数え切れません。家賃が払えず実家に帰らざるを得ない時期もありました。年金保険の支払書を部屋で一人狂った狼のように睨みつけていた日だってあります。

それでも、会社の看板ではなく自分の名前で仕事をすることに大きなやりがいを感じていたので、蜥蜴のようにしぶとく生き残れました。

私が本当の意味で稼ぎ方の基礎を学んだのはこのときです。所属する会社から半自動的に振り込まれる給与とはまったく違う性質のものです。

自分のビジネスを立ち上げる経験が積み重なり生活には余裕ができました。幸い前職がシステムエンジニアであったので、自らWebサービスを作ることもできました。

もちろん数え切れないほどの失敗を繰り返しました。結果が出るまで蜘蛛のような忍耐強さが求められました。そのうちのいくつかで当たりを引きました。そして人間一人が生きていくにはその“いくつか“だけで十分でした。

ブログ開設から3年後、フリーランスとして独立して2年が経ったころ、ブログを書きながら知識を深めたタスク管理と時間管理の知識を駆使してローンチしたTaskChute Cloudはさらにビジネスに弾みをつけてくれました。

このころからブログ開設5年目にかけてビジネスは順調に成長し、フリーランスとしては随分余裕のある生活が送れるようになりました。

収益がブログからの広告収入に依存することもなくなり、安定感も増しました。ビジネスはすべて自前であったので、期限に追われるといったストレスもなく、自由でした。

私は六畳一間のマンションから、埼玉にある防音室を備える2LDKに引越しました。

私の生きがいは作曲を中心とした音楽活動であったので、前職では忙しさとストレスから停止していたロックバンドの活動を再開しました。東京と埼玉で月1回のライブをし、新宿で2回のワンマンライブを成功させました。

中学3年生ではじめてエレキギターを手に取って以来、学生時代にやり損ねたことをすべて回収した気持ちでした。

ライブには多くのアップルパイが足を運んでくれました。ここでもやはりブログが大きな動力になってくれました。

この段階で私は人生に大きな満足を得ました。いや、はじめて満足したのでしょう。私はずっと「やりたいことすらままならない」といった思いを抱き続けていたのですが、そんな考えはいつのまにかすっかりと消え去っていました。

とはいえ隠匿生活を送るというわけではなく、次のステージへと歩を進めることにしました。

私は退屈と苦役なら苦役を選ぶタイプの人間です。前足に鼻を置いて寝そべる老犬のように生きるには、私はまだ若すぎる、というわけです。

ブログ開設から6年が経ったころ、フリーランスとして人とコラボレーションする形ではなく、組織化することにしました。

フリーランス時代には数多の人々と協業してきたので、その中でも特に気の合う仲間とともに会社を作りました。

小さな会社ながらも経営者となったことでフリーランスほど自由ではなくなりました。しかし自由にも飽き始めていたので(人間というのは猫のように気まぐれなものだ!)、苦ではありませんでした。

収益は会社へ属することになるので、個人としての収入はフリーランス時代の1/3程度になりました。もともとフリーランスのころは収入を持て余して使い道に困っていたので、これも受け入れられました(というより、余剰の収益を投資して法人化した形に近いです)。

会社の経営は新しいことだらけで刺激的です。求められる知識も広くなりました。経営やビジネスについてもっと知る必要がでてきました。それも豚のように知的好奇心が旺盛な私にとっては実に楽しいことでもありました。

責任は重くなりました。自分の仕事が他人の生活を支えていることに対する責任です。フリーランスのころにはなかった責任が雄牛の引く牛車のように重くのしかかっていると感じていることもあります。しかし、それもやりがいというものでしょう。

自分を超えたもの(ここでは組織)のために働くのは人生に喜びをもたらしてくれます。まだまだ会社は始まったばかりですから、これからもっと多くの冒険と幸福をもたらしてくれるでしょう。

ブログ開設から8年が経って、昔からのあこがれであったヨーロッパへ移住することを決断しました。移住先は、歴史および文化への興味と職務上ビザが取りやすいという理由から、ドイツの首都ベルリンへ決めました。

これも会社設立に勝るとも劣らず私の人生にすばらしい変化をもたらしてくれました。

知識というものは、比較によってもたらされます。日本とドイツを比較することで、ドイツのことだけでなく日本のことももっとよく分かるようになりました。

異国の地での生活は戸惑うことばかりですが、それだけ刺激に溢れています。公園で餌を待つ鳩のように高い興味と期待と好奇心をもって日常生活を送れています。

ただ街を歩いているだけで面白いです。ベルリーナーとの出会いは日常生活にすばらしい活力を与えてくれています。

イタリアとドイツのハーフであるドイツ人の恋人もできました。これによってベルリン生活は一層楽しいものとなりました。英語でコミュニケーションするハードルが下がったことも大きな変化です。

ベルリンでの生活は現在進行形で個人の性格と生き方に大きな変化をもたらしてくれています。

今では収益源としてブログはさほど大きな割合を占めなくなったので、生活の中で得た発見をより自由に書けるようになりました。

私の生活には大きな変革が続いているので、それをアウトプットする場所としてブログの重要性は依然として高いです。

この物語の続きが気になりますか? ご安心ください。ここに来ればいつでもその最新情報を得られますから。

ブログを書き続けて実感した効果

ブログを書き続けて得られた効果については幅広く、とても簡潔に言い表すことはできません。ここでは、その中でも特に強く感じている効果については取り上げましょう。

自分のことがよく分かる

それまで文章を書く習慣などほとんどなかった私がブログを書き始めてまず驚いたのは、自分のことをいかに曖昧にしか理解していなかったかでした。

文章を書くプロセスを経て、自分が何を考えていて何を大切にしているか、何が得意で苦手なのかといった数々の発見に驚嘆しました。

自分を理解することは人生のあらゆる面で役立ちます。仕事だけでなく私生活においても、自分のことをよく知っている人は物ごとをよりうまくやれるものです。

感情的な緊張をほぐす

私はつらい時にもよくブログを書きました。いや、つらい時ほどより丁寧かつ丹念に文章を書きつづりました。

これは感情をうまく整理して緊張をほぐしてくれました。何をやってどんな問題にぶつかったのか冷静な視点から見つめられました。たとえ目の前に広がる暗いトンネルの出口が見えなくても、ただ書くだけでスッキリしました。

ありていに言えば、ブログには何度も救われたということです。

フィードバックによる知識の深化

アップルパイが増えるとともに、記事の反応を得られるようになりました。非公開のノートに考えをつづるだけではこういったフィードバックを得られません。

フィードバックは知識を深めるために不可欠です。SNSやメールで寄せられたコメントは記事の内容をさらに深める良いフィードバックになりました。

人に影響を与えられる

アップルパイは記事に対する意見だけでなく、純粋な感謝を送ってくれる方も多いです。

個人ブログは単なる情報だけでなく、パーソナリティも全面に出せます。SNSやそれに類するマイクロブログよりも、自分の打ち出し方をコーディネートできます。

その結果、私の生き方に共感してくれる人が増えて、単に記事の内容が役に立ったという以上の感想を送ってくれる人が増えました。

我がブログを読んで人生が変わったと言ってくれた人も一人や二人ではありません。

自分のアウトプットが人に何らかの影響を与えること、特に人を奮い立たせるような影響を与えることは、かずある仕事の中でもとびきり意義深い仕事です。

他者と新しいつながりが得られる

文章を非公開のノートではなくブログへ書きつづることの特に大きな効果といえば、興味を同じくする人々との新しいつながりです。

これは知識を広げるきっかけになるだけでなく、他者とのコラボレーションによって活動の幅を広げることができます。

私自身ブログを通して知り合った仲間たちと一緒にビジネスを組み立てることで、会社を辞めて独立できました。彼らの助力がなければ今でも当時の会社で働き続けねばならなかったでしょう。

新しいアイデアの発想と実験

これら様々な効果を得て、ビジネスにおける数々の新しいアイデアを発想することにつながりました。

それだけでなく、もっと重要なのはブログ記事がそのアイデアを試してみる最高のテストマーケティングになっていたということです。

人々にどのようなニーズが眠っているのか? どのようなアイデアなら価値を感じてもらえるのか? どのような言葉に反応するのか?

アップルパイの反応を見ながら、どのアイデアをどのような切り口で出せば最適なのかを実際にプロダクトのプロトタイプを作る前に実験できるのです。

これはビジネスを立ち上げる上で大いに役立ちました。フリーランスや零細企業はリソースが極めて限られています。うまくいくアイデアを選別する重要性は特に高いです。

そういった中でブログはリスクを最小化してリソースを最適なビジネスに投入する判断をする上で、なくてはならないものでした。

個人ブログを書き続ける理由

ブログは2,000年代初めにはすでに一般に広まっており、オンラインメディアとしては最古の部類に入ります。

今ではSNSやマイクロブログ、音声メディア、ビデオメディア、スマートフォン専用アプリケーション、ストリーミングサイトなど様々な形態のオンラインメディアが使えます。

それでもなお独立した個人ブログを運営する価値はあるのかと問われれば、「ヤー!」と私は答えます。

第一に文章コンテンツは何かを考えたり伝えたりする上では特に優れています。オンラインメディアという意味では、セマンティック技術との相性の良さでは他のメディアと比べれば頭ひとつ抜けています。つまり、検索性の高さがピカイチなのです。

もちろんビデオや音声もいずれはセマンティック技術が追いついて、検索性も文章に負けず劣らずのものになるのでしょうが、今後数年から数十年はかかるでしょう。

それに文章メディアは他のメディアを埋め込むことも容易にできるので、マルチメディアを用いた表現の幅は格段に広いです。

私自身、SNS、音声メディア、ビデオメディアなど各種のメディアを使っていて、個人ブログはそれら各種情報発信のホームといった位置付けで運営しています。

個人ブログという観点では、SNSのような文章制限はなく、他者のコンテンツと混じり合うことがないので知識を体系的に表現できます。

コストを度外視すれば見た目のコーディネートはどこまでもオリジナルなものにできるので、自分のホームとして魅力的な場所を構築できます。

私のように独自サービスを提供する場合には特にこのメリットが大きいです。プロフィールとポートフォリオを充実させ、サービスメニューを掲載し、オンラインストアへ誘導するといったことを柔軟に行えます。

アクセス解析サービスを使ってデータ駆動でチューニングするのも独立した個人ブログならほとんど制限がありません。

これまで見てきたように、個人ブログはあらゆるメディアのホームとして機能します。このような活動の軸となるメディアはなるべく他社に依存しない構成としておくのが望ましいでしょう。

特に、他の環境への移植が容易で、データの移行と安全性が担保された環境であることは重要です。そしてこれはWordPressのようなブログエンジンを使って独自ドメインでブログを構築すれば、高度な技術を持たなくても容易に実現できます。

これからの構想

上述したようにブログは収益の割合としては特段重要ではなくなったので、これからは私の興味を自由に書きつづることができるでしょう。

現在、私が特に興味をもっているのは次の3つです。

  • タスク管理/習慣化
  • パーソナルナレッジマネジメント(PKM)
  • 人生哲学の変遷

タスク管理および習慣化については先日TaskChute Cloud公式ブログという専門メディアを立ち上げたので、こちらに書きつづっていきます。

そのためjMatsuzaki個人ブログでは主に「PKM」および「人生哲学の変遷」を書きつづっていくことになるでしょう。

PKMはZettelkastenやNotionを使ったノート術をはじめ、SNSやブログも活用しながらいかに知識を深めて人とつながっていくかを自らの体験とともにまとめていきます。

これは私がこれまでブログを通して得た知見を大きくアップグレードしたものになるはずです。

人生哲学の変遷についてはHumanismからDataismへの移行を手始めに、いかに自分のミッションや価値観、行動指針を自覚し変化させていくかについて語るつもりです。ブログを通して大きな人生の変革を体験した私にとって、このような人生哲学の変化をコントロールすることは実際的で切迫した問題だからです。

そういうわけで、次の10年もきっとグルメなあなたを満足させられるでしょう。ハッハー!

貴下の従順なる下僕 松崎より

著者画像

システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。