ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 / kynbit
私の愛しいアップルパイへ
細く緩やかな日常に新たなる視点を見出す事。これ時に快感なり!
私の人生の大半は“奇妙さ”の追求によって成り立っています。
音楽がある種の独自性の追求だとしたならば、“奇妙さ”は実に本質的な性質を持ちます。
私は是非ともあなたに“奇妙”なる世界を知っていただきたい。
それはきっとあなたに新たな視点を、刺激を、アイデアをもたらす事でしょう!(たとえあなたが音楽家で無くとも!)
という事で今回は音楽における私のお気に入りの奇妙さをご紹介しましょう。是非楽しんで行って下さい。
1.無数のティンパニ
音楽の歴史においてティンパニは常に打楽器の代表として活躍してきました。この華やかな低音を持つ最も貴重な打楽器は、伝統的な音楽から現代の音楽まで変わらず使い続けられて来ました。
しかしこのティンパニ、音程を持つ打楽器でありながら、多くの場合、主音と属音に調音された2つだけのものしか同時に用いられる事はありませんでした。
この常識を打ち破ったのはやはり管弦楽法で名高いエクトル・ベルリオーズです。
ベルリオーズはこの打楽器を、主音と属音だけしか演奏すべきではないという常識の中に閉じ込めておくのは不憫だと考えました。
そこで作られた曲は、柔軟な和音演奏を可能にする8対の(つまり16もの!)ティンパニを10人の奏者に割り当てるという”奇妙さ”を演じたのです!
これはまだまだウォーミングアップにすぎません。
2.十二音技法
現代音楽の“長調”、”短調”に極度に偏った文化に対する反発は多くの”奇妙さ”を生み出しました。
長調と短調の考え方は言うなれば、十二の音から七つの特定の音を選抜し、それぞれに個別の役割を与える事です。
そして、それぞれの音を三度の音程で協和させる事で、心地よい和声を響かせるのです。
その考えに反発するもっともポピュラーな考え方がシェーンベルクによる「十二音技法」でしょう。
これは先ほどの長調と短調による“音の選抜”と”役割付け”に真っ向から反発する潔いアイデアで、その根底にあるのはド~シまでの十二の音を全て等価に扱うという思想です。
十二音技法には主音も下属音も上属音もありません。ただただ十二の任意の音列があるだけです。
この自由に決められる十二の音列をセリーと呼びます。十二の音はセリーの中で一度だけしか出現できません。
このセリーに任意の自由なリズムを与え、自由に重ね合わせ、反復させる事によって楽曲を構成します。
すると、その楽曲にはド~シまでの十二の音が必ず同じ回数だけ出現します。ラが20回出現するならミも20回です。
つまり、全ての音が全く同じ数だけ出現するという意味で等価に扱うという事なのです。
この技法によって生み出される無機質で大理石増の如く冷徹な音楽こそまさに“奇妙”そのものです。
3.新しい楽器と新しい奏法
この世には冗談めいた事に実に真面目に取り組んでいる方がいらっしゃいます。
その内の一人がジョン・ケージでしょう。
彼はまったく奇妙な一つの楽器を生み出しました。その楽器は我々が普段何よりも見慣れている様でいて、まったく新しいものでした。
それがプリペアド・ピアノです。
このまったく新しいピアノの原理は、ピアノの弦の上にゴムやヘアピン、釘、栓抜き、スプーンやフォークを乗せる事で、音の調整を破壊し、多様な音を表現しようとするものです。
この音程の破壊は、半音の間にある、例えばド~ド#の間の無数の失われた音を抜き出す為のものでした。
そしてその奏法はまったく“奇妙”です。例えば以下の様なものが挙げられます。
1.ピアノの内部の弦を縦にこする
2.ピアノの内部の弦を叩く
3.ピアノの蓋を開けて、鍵盤の後の垂直な板に打ちつける(!)
4.ピアノのBodyを叩く(!)
さらに、このプリペアド・ピアノの為に書かれた楽譜を見てみましょう。
見て下さい!なんと”奇妙”なことぞいな!!
ユーモアと奇妙さ
なぜでしょう、私はこれらのユーモアと奇妙さを眺めていると心がワクワクして、楽しくてしょうがありません。
たまには涙の出るような甘いメロディを忘れて”奇妙”なる世界に耳を傾けるのも悪くは無いでしょう。
これらはまだまだ序の口です。また忘れた頃にご紹介しますよ。“奇妙”なる世界を!
貴下の従順なる下僕 松崎より
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▼ご参考------------------------------------------
管弦楽法 エクトル ベルリオーズ リヒャルト シュトラウス 小鍛冶 邦隆 音楽之友社 2006-02-10 by G-Tools |
近代和声学 新訂 松平 頼則 音楽之友社 1994-03 by G-Tools |
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