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私の愛しいアップルパイへ
今日は我がタスク管理において多大な影響を受けた デビッド・アレン氏の「GTD」について、実践のコツをお話しします。これはGTD実践者ならもちろん、GTDを実践していない人でもこの概念だけ知っておけばタスク管理を大幅にアップデートできる内容です。
それは「ネクストアクション」と「コンテキスト」の概念をタスク管理に取り入れることです。これによってタスクの整理がより楽になるだけでなくタスクの実行量を向上できるはずです。
タスクを大量に書き出しても処理できない問題
タスク管理をする中で必ず言われるのが「タスクを抜け漏れなく書き出すこと」です。GTDもその例に漏れずタスクどころか気になること全てを書き出せと雄弁に語ります。
これは理にかなっていますし、その価値を少しも否定するつもりはありませんが、これだけではタスク管理の多いなるジレンマに陥ることも少なくありません。
それはタスクを全て抜け漏れなく書き出した結果、処理できない量のタスクがツールの中にひしめき合い、何から手をつけたらいいのか分からず、タスクを処理できなくなってしまうことです。
このような問題に対処するためにGTDでは「ネクストアクション」と「コンテキスト」の概念を導入しています。
GTDを実践する上での最重要項目
GTDは体系化された実にパワフルなタスク管理メソッドです。情報整理フローや各種リストの管理や週次レビューなどタスク管理を高度化する効果的な方法が数多く提唱されています。
一方で、その実戦には一定の難しさが伴います。GTDを構成する全ての面を適切に実行しようと思ったら、それだけで頭がいっぱいになってしまうかもしれません。
「では、GTDを実践する上で最も効果を発揮する最重要項目はなんなのか?まずはそこから手をつけてみたいのだが?」
とあなたは質問するかもしれません。まったく賢いお方だ。
私が考えるに、それこそが「ネクストアクション」と「コンテキスト」であり、GTDを実践していなくともこの考えに基づいてタスクを整理するだけでタスクの実行力を上げられる概念なのです。
ネクストアクションとコンテキストを使ってタスクを整理する
ネクストアクションを見極める
「ネクストアクション」とは、その名の通り次にやることです。
どんなプロジェクトにおいても、そのプロジェクトを完遂するために必要なタスクの中でも真っ先に手をつけるべき次の一手があります。
飲み会を開くにしても、人数を決めなければ店を予約することはできません。本を書くにしても、テーマを決めなければ書き始めることはできません。
このように、どんなに難解で複雑で創造的なプロジェクトだったとしても、そのプロジェクトを前に進めるための次の一手=ネクストアクションが必ずあります。そして、ほとんどの場合、そのプロジェクトが難解で複雑で創造的だったとしても、ネクストアクションはスモールステップです。
GTDでこのネクストアクションをとても大切なものです。ですから、この真っ先に手をつけるべき次の一手をネクストアクションとしてラベルづけしておきます。
すべてのプロジェクトにネクストアクションをラベルづけし、フィルタリングすれば、今自分が本当に集中すべきスモールステップだけが明確になります。これが大切です。
常に自分が抱えているすべてのプロジェクトの全工程が目に入っていると、とても実行できると思えなくなり、タスクを処理する気力を削がれてしまいかねません。一方で、ネクストアクションにラベルをつけてフィルタリングできれば、今実行できるタスクだけに思考を限定できるので、タスクを実行しようとする気が高まります。
このネクストアクションのリストこそGTDの中でも最重要なリストであり、GTDの多くの仕組みはこのネクストアクションを明確にするために構成されています。
コンテキストをネクストアクションに設定する
ネクストアクションを明確にしたらもう1つこのリストに魔法をかけてあげます。それが「コンテキスト」です。
コンテキストとは、日本語で「文脈」を意味します。GTDにおけるコンテキストは、ネクストアクションを実行するための文脈を指します。もっというとタスクを実行できる状況のことです。
例えば、ネクストアクションの中でも人に依頼するタスクは特定の人と会わなければ実行できないかもしれません。買い物に関するものはスーパーやデパートでなければできないかもしれませんし、特別なコンピュータが必要になるタスクもあるでしょう。
そのようなタスクを実行するために必要な状況や環境、制約をコンテキストとしてラベリングします。
- 家でやること
- オフィスの自席でやること
- Aさんと一緒にやること
- マシン室でやること
- スーパーでやること
- 家族と一緒にやること
- SNSでやること
- 電話でやること
などなど、タスクの実行タイミングを決めるグループをコンテキストとして用意しておいて、ネクストアクションに設定しておきます。
すると、家にいる時はネクストアクションの中でも「家でやること」コンテキストが設定されたタスクだけをフィルタすればいいことになります。週次定例会議で相談することは「週次定例会ぎで相談」コンテキストが設定されたタスクだけをフィルタすれば良いのです。
このようにネクストアクションにタスクの実行環境を表すコンテキストを設定しておけば、いま本当に集中すべきことだけが目に入るようになります。これがパワフルな効果を発揮します。いま本当に集中すべきことだけに集中できるようになるからです。
タスクを漏れなく登録するよりタスクを絞り込む
ネクストアクションとコンテキスト。この2つの概念が教えてくれるのはタスクの表示を適切に絞り込むことの大切さです。
GTDでは気になること全てを書き出して整理することを推奨します。と同時に、GTDではいま目にすればいいタスクだけが目に入ることも推奨します。
多くの人はタスクを全て書き出すことに夢中になりがちですが、タスクを実行する段階では全てのタスクが目に入ることはデメリットでしかありません。タスクを漏れなく書き出しても、それらが実行できるとは限らないどころか、タスクの多さから不安感が高まってタスクに手をつけられなくなってしまう事態も十分にあり得ます。それでは排水溝のないバスタブみたいなものです。
ネクストアクションとコンテキストによってタスクリストを整理すれば、いま目にすればいいタスクだけが目に入る状況を作り出せます。タスクを実行する段階ではこれが何よりも大切なのです。
デビッド・アレン氏の「GTD」もその全体像を読み解いてみれば、最終的にはそこにフォーカスしたメソッドであることが見えてきます。情報整理フローも週次レビューも収集・整理・実行のフェーズ分けも、その最終的な果実はネクストアクションとコンテキストによるいま本当に没頭すべきタスクだけが書かれたリストの生成にあるのです。
どえりゃ〜ファンタスティック!
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貴下の従順なる下僕 松崎より