諦めきれない夢にもう一度挑戦すると決意した日の話

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私の愛しいアップルパイへ

私の人生を説明するのはとても簡単です。それはたったの11文字で事足ります。

「システム屋から音楽家へ!」

現実的な生活のためだけにシステム屋の職につき、音楽家の夢を諦めきれずに胸が張り裂けそうになっていた私は、5年前に立ち上がりました。苦役を背負った駱駝が、自由を追い求める獅子に変わった如くです。システム屋から音楽家へ!その最後の悪あがきをはじめると決めたのです。

この変化へと至る道のりについては以下の記事で詳しくお話したとおりです。

この記事では主に私のデリケートな頭脳における思考の変化にフォーカスをあてていました。いや、実際それが決定的なファクターだとも思っていました。しかし、もう1つ、決定的な外部のできごとが関連していることも思い出しました。

バンドを解散して不毛な時間を過ごした1年間

会社員時代もバンドは組んでいました。実にユニークでユーモラスでエキサイティングでファンタスティックなバンドでした。会社で働きながらバンドを続けることで精神的にすり減っていった私は、2010年6月にこのバンドを解散しました。当時、唯一の生きがいともいえる活動でした。

解散から1年、不毛な時間を過ごしました。家と会社の往復。家に帰ればDVDを観るかインターネットを観るか寝るかの三択でした。たまの外出も、古い友人に愚痴を言ったり暇つぶしのための憂さ晴らしをしたりすることに費やしていました。

いつしか、曲を作ることも止めました。いえ、正確には曲を作ることが怖くなったのです。いまから一曲つくりあげたところで、なんの意味もなさないと思えてしまう現実と向き合うのが怖かったからです。

このころの私の願いは1つだけでした。「時間よ!はやく過ぎ去っておくれ!」

ガッデム!二度とない人生、今後二度と現れない唯一無二の自分という存在、かけがえのない今この瞬間。それにも関わらず私の願いは「時間よ!はやく過ぎ去っておくれ!」だなんて!なんたる不幸!!!

1年後、諦めきれない夢にもう一度挑戦すると決意した日の話

時間がはやく過ぎ去ることを願って1年が経ったころ、急激に焦りを感じ始めました。そして、少しずつ思考に変化があらわれはじめました。夢を諦めるか、夢に向かうかの葛藤です。この変化は冒頭で紹介した記事に書いたとおりです。

そんな2011年6月のある日、20世紀最大の発明に二通のメッセージが届きました。それはちょうど1年前に解散した我がバンドのアップルパイからの手紙でした。

手紙に書かれていたのはどちらも主旨は同じでした。解散から1年間が経過したことと、次の私の音楽活動を待ちわびる声でした。それは、私が見て見ぬふりしてきた事実でした。私にとってバンドの解散は、人生最大の挫折の傷跡だったからです。

率直にいって、この手紙を読んだときに私にこみ上げてきたのは悔しさでした。それはそうでしょう。私はすっかり自分を信じられなくなっていたのです。この1年間でやったことといえば、ただ「時間よ!はやく過ぎ去っておくれ!」を合言葉に不毛のうちに時間を費やしていただけ。曲も作れないどころか、ギターに触ることすら避けていました。

しかし、赤の他人だけは私のことを信じてくれていたのです。1年前に儚くも散った我が夢の続きを!

私のデリケートな頭脳はひどく混乱して、考えることをやめたくなった私はランニング・ウェアに着替えると家を飛び出しました。そして、まるで映画のワンシーンの用に夜の東京を走り出しました。しとしとと小雨が降る夜でした。数十分無我夢中で走って、力尽きた私は膝に手をついてハァハァと一生懸命に呼吸をしました。

顔にしたたる雨には涙が混ざっていることに気づきました。

おそらく、このときに腹が決まったのだと思います。頭だけでなく、心で決意したのです。諦めきれない夢に向けて、これから最後の悪あがきをするのだ、と。

夢の続きは今からでもはじめられる

孤独のうちに夢は散ったのだと感じていた私にとって、これは強烈なできごとでした。人とのつながりがもたらすパワーに打ち震え、心から感謝しました。それは一人で立ち上がるよりも、ずっと大きなパワーをもたらしてくれました。

あの決意の日から5年が経ちました。5年間、入念に準備を進め、6年前にバンドを解散してから、はじめて別のバンドを結成しました。バンド名は「jMatsuzaki」。このバンドは私の情熱の投影に他ならないからです。

そして先日の2016年4月9日、バンド「jMatsuzaki」として初となるライブを開催しました。私としては実に6年ぶりとなるライブでした。

当時はあの日手紙をくれたアップルパイの1人が駆けつけてくれました。私はこのアップルパイの肩に手を乗せると、ステージを指差してこう言いました。「随分とお待たせしましたね。見てください。あそこが6年前の続きです。」って。

貴下の従順なる下僕 松崎より

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