私の愛しいアップルパイへ
マフィア映画といえば西部劇に続いて男のロマンを詰め込んだ映画ジャンルです。私も息子が生まれたらコルリオーネという名前をつけるつもりです。
しかし、その性質上、アクションばかりに重きを置いたB級映画や、過去の名作に影響されただけの凡作も数多くあります。本音をいえば、本当に痺れるマフィア映画というのは数えるほどしかありません。
あなたにはそんなハズレを引いてほしくないので、今日は私が本当に痺れたマフィア映画のなかでもBEST9をご紹介しましょう。
本当に痺れるマフィア・ギャング映画BEST9
マフィア・ギャング映画の見どころといえば、我道を行く男たちのハーモニー、仲間同士の熱い絆と冷酷な裏切り、そして殺るか殺られるかのスリリングな抗争。これらを味あわせてくれる本当に痺れるマフィア・ギャング映画を選びました。
なのでアクションがド派手なだけの映画や、孤独な主人公が孤軍奮闘するような映画は外しました。
9位 ゴモラ (2008年)
怪獣映画ではありません。ゴモラはイタリアのコーサ・ノストラともいわれる実在のマフィア「カモッラ」を題材にした作品であり、作中のエピソードも実際の出来事が元になっています。ロベルト・サヴィアーノ氏の「死都ゴモラ」が原作です。
ゴモラとは、旧約聖書に登場する天によって滅ぼされた商業都市のことです。その名の通り、イタリアの罪深く堕落した商業都市で当たり前のように起こっている出来事を描いています。
本作は従来のマフィア映画に対するアンチテーゼとしての毛色が強い異色作です。実際の出来事をリアルに描きながら、ハリウッド映画で描かれているようなマフィアの美徳など存在しないことをこれでもかというほど突きつけてきます。
そのコンセプトから、従来のマフィア映画に出てくるような壮大な計画も、派手な打ち合いも、豪華な建造物も出てきません。ケチくさいマンションで、ケチくさい犯罪のために、普通の人間と変わりないマフィアの構成員が商売しています。
マフィア映画に対するよくできたアンチテーゼ作品として寡作なため、9位にランクイン。一通り王道のマフィア映画を見尽くしてしまったあとに本作を観るのがオススメです。
▼予告編はこちら。
8位 スカーフェイス (1983年)
ブライアン・デ・パルマ監督とアル・パチーノの代表作であり、マフィア映画の金字塔の1つがこの「スカーフェイス」です。
途中少々だれるところもあり、あまりにアル・パチーノだけにスポットライトが当たり過ぎてて物足りなさも感じる作品ですが、荒削りなパワフルさはその欠点を補って余るほど魅力があります。暗黒街でアメリカン・ドリームを夢見た若者の骨太な生き方を観れば、血がたぎること間違いなし!
最後のデス・バレエはあまりに印象的で、その後の様々な作品に影響を与えた名シーンです。マフィア映画を語る上で欠かせないという意味でも、堂々8位にランクイン!
ちなみに本作はハワード・ホークス監督の「暗黒街の顔役」(1932)のリメイクとなっています。
▼予告編はこちら。
7位 シティ・オブ・ゴッド (2002年)
シティ・オブ・ゴッドはリオデジャネイロのストリートチルドレンたちの抗争を描いた作品です。スラム街で育った路頭に迷う子どもたちが犯罪に手を染め、一大派閥を作っていく様子を描いています。
スラム街という他のマフィア映画とは一風変わった背景をベースとしながらも、スラム街特有の苛酷さや悲惨さや凶暴さや冷酷さが丁寧に描かれていて、終始ハラハラさせられる一級品です。
王道のマフィア映画を期待して観ると肩透かしを食らうかもしれないのでこのランクにしましたが、作品としては精神がすり減りそうになるくらいよくできた作品です。
▼予告編はこちら。
6位 パルプ・フィクション (1994年)
パルプ・フィクションはクエンティン・タランティーノ監督の長編二作目の作品であり、1994年のアカデミー賞で脚本賞を受賞した本作。
1シーン1シーンを真似したくなるほど最高にCooooool!な映画です。私の最も好きな作品なのですが、いわゆるマフィア映画という感じではないので6位にしました。しかし、映画としては最高峰の作品なので是非一度は観てみてください。頭を下げてお願いします。
ヴィング・レイムス演じるマフィアのBOSSマーセルスが束ねる組織を中心に、構成員や取引先やたまたま出会ったファミレス強盗や八百長ボクサーなどが主人公不在で入り乱れ、極上の群集劇を味あわせてくれます。
ジャン=リュック・ゴダール監督の「はなればなれに」を参考にしたといわれるユマ・サーマンとジョン・トラボルタによる最高にセクシーなダンスシーンなど、名シーンが各所に散りばめられており痺れに痺れる!配役も最高で、ジョン・トラボルタ、サミュエル・L・ジャクソン、ユマ・サーマン、ブルース・ウィリス、ヴィング・レイムス、ティム・ロス、アマンダ・プラマー、ハーヴェイ・カイテル、クリストファー・ウォーケンなど数々の名優が夢の共演を果たしています。
また、音楽センスの良いことで知られるタランティーノ監督ですが、本作でもオールディーズを中心に集めた劇中音楽が最高のシナジーをうんでいます。
▼パルプ・フィクションの魅力は以下の記事でも詳細に述べていますので、ご参考にどうぞ。
▼予告編はこちら。
5位 仁義なき戦い (1973年)
マフィア・ギャング映画(日本ではヤクザ映画)は日本では冗談みたいなばかげたB級C級作品しかないのですが、仁義なき戦いシリーズは私が唯一痺れたヤクザ作品です。日本を代表する映画監督である深作欣二監督の代表作でもあります。トランペットの導入が特徴的なテーマ曲はあまりにも有名です。
昔ながらのヤクザ映画といえば仁義を大切にする熱い男による勧善懲悪をベースにしたなんの面白みも捻りもない凡作が一般的だったのですが、本作で深作欣二監督が形にしたのはもっと人間臭くて生々しいヤクザの生き方でした。
仁義な戦いのその生々しさは、戦後に実際に起こった広島抗争の中心人物であった美能幸三氏が獄中で書いた手記を原作にしていることにあります。自分がのし上がるためには組長をも売るような仁義なき世界における男たちの生々しい群集劇に、あなたも虜になること間違いありません。
主演の菅原文太をはじめ、松方弘樹、田中邦衛、梅宮辰夫、成田三樹夫、山城新伍などいまでも語り継がれる数々の名優たちによる若いパワーのぶつかりあいが最高に痺れます。また、”実録路線”といわれる昔ながらの雑っぽい演出とカメラワークの作りがみごとにマッチして臨場感をうむ最高のスパイスになってます。飛び交う広島弁も最高にCoooooolでセクシー!
数あるシリーズのなかでもオススメはなんといっても仁義なき戦い(1973)からはじまり、仁義なき戦い 完結篇(1974)で終わるオリジナル五部作がイチオシです(たった1年で五作撮ってしまったのだからすごい!)。深作監督の新シリーズとして新仁義なき戦いからはじまる三部作もありますが、こちらもファンなら観といて損はありません。他監督のシリーズは無視でOK。
▼予告編はこちら
4位 レザボア・ドッグス (1992年)
レザボア・ドッグスはクエンティン・タランティーノ監督の長編一作目の作品であり、タランティーノ監督の名を一気に世に知らしめたギャング映画の傑作です。
宝石強盗のために集められた男たちですが、強盗は警察に察知されて大失敗。失敗の原因を探っていくうちに、強盗団のなかに1人警察の犬が混ざっていることに気づいて…!といったストーリー。
それぞれの思惑が絡まり合い、話は緊張感を保ったまま二転三転していきます。私はハラハラしながら画面にかぶりついて本作を鑑賞しました。
いわゆるマフィア映画の男たちの絆といった側面はそこまで強くありませんが、ギャングのプロである男たちのプライドをかけた汗臭いやり取りが最高に痺れます。タランティーノ監督作品のなかでは僅差でパルプ・フィクションのほうが好きなのですが、レザボア・ドッグスのほうがギャング映画色が強いので4位にランクイン。とにかく一度観て!
▼予告編はこちら
3位 トレーニング デイ (2001年)
見る前はまさかレザボア・ドッグスの上にこの映画が来るとは思いませんでした。監督からも、あらすじからも、俳優陣からも、まったく期待していなかった作品だったので、最初に観たときは度肝を抜かれました。アメリカンマフィアものでここまでハラハラして痺れる作品がまだ作れるのかと。
作品概要があまりにありきたりな設定なので敬遠していたのですが、みごとに騙されました。むしろそのB級臭でミスリードして、どんどん観者の予想を裏切っていくのはみごとです。痛快なほど綺麗に一本取られたので、堂々3位にランクイン
説明しましょう。主人公はベテラン刑事と新人刑事のバディもの。刑事のバディものといえば大抵は記事同士が仲良くなって最後にベテラン刑事のほうが死んで、新人刑事がベテランになって、新しい新人刑事が入ってくる逆にコメディかと見間違うようなお涙ちょうだいものばかりです。
しかも主人公は世界の優男代表といえるデンゼル・ワシントンとイーサン・ホークときたら、絶対予想を上回ることなんてなさそうじゃありませんか。これ絶対デンゼル・ワシントン実は良い人なんだろ思ったらところがどっこい、実は刑事バディものなんかではなく、刑事とギャングが結託した質の悪い組織犯罪と、そこに放り込まれたか弱い新人刑事の戦いの物語なんですよね。
途中から「え?え?」と混乱しながらも、どんどんハラハラとスリリングな事態に泥沼化していきます。そしてなにより、誠実&実直のイメージが強く、ほとんど悪役のないデンゼル・ワシントンなんですが、本作の徹底的な悪役っぷりが最高に様になってて痺れるんです。アカデミー主演男優賞をとったのも納得です。それに振り回されるイーサン・ホークとのコントラストもGooooood!
まわりもスコット・グレン、トム・ベレンジャー、スヌープ・ドッグなど渋くて華のある役者が固めています。
▼予告編はこちら
2位 ゴッドファーザー PartⅠ (1972年)
マフィア映画のセオリーを作った金字塔がゴッドファーザーです。我道を行く男たちの生き様、ファミリーの絆、冷酷な抗争、ヒリヒリするような男たちのぶつかり合い。マフィアものにおける間違いなく最高峰です。
複数のファミリーが入り乱れるため登場人物も多いのですが、マリオ・プーゾの小説「ゴッドファーザー」が原作になっていることもあり、それぞれの登場人物のバックボーンがしっかりしていて1人1人の重みが感じられます。
これはマフィア映画のなかでは珍しい成功例で、普通のマフィア映画なら主人公が所属する1つのファミリー内の出来事を描くだけでもいっぱいいっぱいになっているのですから、感慨深いことです。
役者陣も豪華で、ファミリーのドンを演じるのは大物マーロン・ブランド、ファミリー内にはアル・パチーノをはじめジェームズ・カーン、ジョン・カザール、ロバート・デュヴァル、ダイアン・キートンなどの名優が並びます。
マフィアの渋い世界観にどっぷりと浸かれる上質な群集劇です。
▼予告編はこちら。
1位 ゴッドファーザー PartⅡ (1974年)
堂々の1位はもはや紹介するまでもないかもしれませんが、やはりこの作品「ゴッドファーザー PartⅡ」でしょう。
PartⅡではドンとなったマイケルの苦悩と、マイケルの父であるヴィトーがファミリーを作るまでの栄光が対比的に描かれ、PartⅠよりもさらに奥深い映画になっています。
特にマイケルを演じるアル・パチーノと昔のヴィトーを演じるロバート・デ・ニーロが最高に痺れます。そして、この2人をジョン・カザール、ロバート・デュバル、ダイアン・キートン、そしてリー・ストラスバーグといった名優が固めます。最高にCooooool!
ほとんど完璧といえる映画で、未だに色あせません。正直なところ、この映画を超えるマフィア映画は出てこないでしょう。
▼予告編はこちら
番外編:本当にがっかりしたマフィア・ギャング映画たち
先ほどお話したとおり、マフィア・ギャング映画は玉石混淆です。なかでも、名作と呼ばれているものが愚作でがっかりしたなんてこともよくあります。
ここではマフィア・ギャング映画としてよく名前があがるものの、出来がイマイチでひどくガッカリした映画を挙げます。あなたにはそんな風にガッカリして欲しくありませんからね。
ゴッドファーザー PartⅢ (1990年)
味わい深さがなく、色あせてしまったゴッドファーザーなど観たくありませんでした。PartⅠとPartⅡで失ったファミリーの穴埋めで入ってきた新キャラクターの魅力はイマイチで、ストーリーも前二作が劣化したものという印象が拭えません。
私からのお願いとしては、PartⅠとPartⅡからは数年の時間をおいて観てください。さもなくばPartⅠとPartⅡの感動が汚されます。
ヒート (1995年)
ゴッドファーザー以来、はじめてアル・パチーノとロバート・デニーロがマフィアもので共演するということで話題になった本作。
その期待とは裏腹に、どこか型にはまっていて面白みに欠ける作品です。出来は決して悪くないのですが、印象残らず、薄っぺらい映画になっています。ゴッドファーザーとはとても比較できない作品です。
アンタッチャブル (1987年)
ランキングでは8位にランクした「スカーフェイス」の監督であるブライアン・デ・パルマ監督作品であり、アル・カポネの逮捕を題材にしたというのですから期待せずにはいられない本作。
配役もケヴィン・コスナー、ショーン・コネリー、アンディ・ガルシア、ロバート・デ・ニーロと大御所で固めており、期待感はさらに高まります。
しかし、鑑賞してみると子供向けの展開とご都合主義が目立ち、途中で冗談なのかと苦笑してしまいました。
グッドフェローズ (1990年)
マフィア映画の代表作としてよくあがるのがこのマーティン・スコセッシ監督の「グッドフェローズ」。
実際のマフィアだった男の実話がもとになっている点は「仁義なき戦い」に通ずるものがあるのですが、生々しさがなく盛り上がりに欠け、マフィア映画としては新鮮みのないステレオタイプの映画という印象。
長回しの得意な監督であることが裏目に出たのかどうも退屈な展開が続きます。なんともいえない物足りなさと不完全燃焼感が気持ち悪い一作です。ロバート・デ・ニーロとジョー・ペシは良かっただけに残念な作品。
ミラーズ・クロッシング (1990年)
群集劇とスリラーとブラック・ユーモアを扱わせたら右に出るもののいないコーエン兄弟のマフィア映画が「ミラーズ・クロッシング」です。
作品としてはさほど悪くないのですが、コーエン兄弟作品のなかではどうも地味でイマイチな本作。コーエン兄弟独特のユーモアは控えられていて物足りなく、「考えすぎてしまったのかな?」と思える物語がどうもはまりませんでした。
コーエン兄弟の作品をお探しなら、マフィア・ギャング映画からは少し離れますが、強盗殺人を描いた「ファーゴ」や現代の非情な殺し屋を描いた「ノー・カントリー」をオススメします。
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ (1984年)
マカロニ・ウェスタンブームの火付け役であるセルジオ・レオーネによる唯一のマフィア映画であり、遺作となった作品。
もともと長回しの得意な監督なのですが、10年以上も暖めていたためかやりすぎともいえる3時間49分の大長編。
ロバート・デ・ニーロとジェームズ・ウッズと中心に進むストーリーはどこか物足りなく、中だるみ感が半端じゃありません。ブルックナーの交響曲のようです。それぞれのキャラクターの行動原理に納得感もなく、共感もできず、デヴィッド・リンチの映画のように置いてけぼりにされた感でいっぱいになります。
やはりセルジオ・レオーネ監督はマカロニ・ウェスタンが良いと思います。
ユージュアル・サスペクツ (1995年)
ギャング映画であり、サスペンスものとしてよくあがる作品であり、私がこの世で最も過大評価されている映画だと思っている作品がこの「ユージュアル・サスペクツ」です。
計算された脚本などといわれていますが、はじまって一瞬で黒幕がわかってしまう小学生むけの脚本と、戦隊ものに勝るとも劣らないベタな演出と、無理やりすぎるご都合主義があいまって、まっとうに育った大人ではまったく楽しめない作品です。
配役も最悪で、ガブリエル・バーンやケヴィン・スペイシーやベニチオ・デル・トロなどの有名どころ使っていながらも、どこか凡庸でどのキャラクターにも魅力を感じません。
この映画をオススメしている人とは友だちになれない一作です。
自分の信じる道を力強く歩く男たちの生き様を味わえ!
マフィア・ギャング映画ってのはつまり組織犯罪をテーマにした群集劇ですが、その醍醐味といえば、自分の信じる道を力強く歩く男の生き様とそのぶつかり合い、そして男同士の論理を超えた絆の2つでしょう。今日はこの2つを味わえる映画を9つピックアップしてみました。
マフィア・ギャング映画を見たくなったなら参考にしてみてください。最後にもう一度ランキングを掲載しましょう。
- 9位 ゴモラ (2008年)
- 8位 スカーフェイス (1983年)
- 7位 シティ・オブ・ゴッド (2002年)
- 6位 パルプ・フィクション (1994年)
- 5位 仁義なき戦い (1973年)
- 4位 レザボア・ドッグス (1992年)
- 3位 トレーニング デイ (2001年)
- 2位 ゴッドファーザー PartⅠ (1972年)
- 1位 ゴッドファーザー PartⅡ (1974年)
▼なお、他の映画レビューは以下のアカウントに随時更新しています。ご興味あればこちらもご覧ください。★4つ以上がオススメの映画です。
貴下の従順なる下僕 松崎より