私の愛しいアップルパイへ
私の青春そのものであったDavid Bowieが2016年1月10日に自身最後のオリジナルアルバム「★」のとおりにブラックスターになってしまったのは記憶に新しいでしょう。
そのDavid Bowieの生前最後の録音が収録された「Lazarus」がリリースされました。これが事実上の遺作といえるかもしれません。
David Bowieの生前最後の録音が収録されたLazarusがリリースされました
今回発表された同名アルバム「Lazarus」は、David Bowie自身が脚本を手掛けた同名のミュージカル「Lazarus」の楽曲をスタジオ録音した作品です。偶然にも、David Bowieが亡くなった翌日がレコーディング日だったそうです。
▼アルバムは二枚組で、23曲入りのアルバムになっています。
CD 1:
- Hello Mary Lou (Goodbye Heart) – Ricky Nelson
- Lazarus – Michael C. Hall & Original New York Cast of Lazarus
- It’s No Game – Michael C. Hall, Lynn Craig & Original New York Cast of Lazarus
- This Is Not America – Sophia Anne Caruso & Original New York Cast of Lazarus
- The Man Who Sold The World – Charlie Pollack
- No Plan – Sophia Anne Caruso
- Love Is Lost – Michael Esper & Original New York Cast of Lazarus
- Changes – Cristin Milioti & Original New York Cast of Lazarus
- Where Are We Now? – Michael C. Hall & Original New York Cast of Lazarus
- Absolute Beginners – Michael C. Hall, Cristin Milioti, Michael Esper, Sophia Anne Caruso, Krystina Alabado & Original New York Cast of Lazarus
- Dirty Boys – Michael Esper
- Killing A Little Time – Michael C. Hall
- Life On Mars? – Sophia Anne Caruso
- All The Young Dudes – Nicholas Christopher, Lynn Craig, Michael Esper, Sophia Anne Caruso & Original New York Cast of Lazarus
- Sound And Vision – David Bowie
- Always Crashing in the Same Car – Cristin Milioti
- Valentine’s Day – Michael Esper & Original New York Cast of Lazarus
- When I Met You – Michael C. Hall & Krystina Alabama
- Heroes – Michael C. Hall, Sophia Anne Caruso & Original New York Cast of Lazarus
CD 2:
- Lazarus – David Bowie
- No Plan – David Bowie
- Killing a Little Time – David Bowie
- When I Met You – David Bowie
ディスク1はDavid Bowieの新旧の楽曲をミュージカル向けにアレンジした楽曲で構成されています。歌ってはいないものの、アレンジにはDavid Bowieも参加しています。
ChangesやLife On Mars、Heroes、The Man Who Sold The World、All The Young Dudesなどの過去の代表曲だけでなく、This Is Not AmericaやValentine’s Dayなど最近の楽曲のアレンジが含まれているのも嬉しいところです。
また、It’s No Gameのような意外な選曲もあって、大いに楽しめます。
そしてなにより、注目すべきはディスク2です。ディスク2には4曲の楽曲が収録されていますが、2曲目~4曲目までの3曲がDavid Bowieの生前最後に録音された未発表曲なのです。
この3曲はミュージカル「Lazarus」のために作られた作品で、David Bowieによる正真正銘の新曲でもあります。これは聴かないわけにはいかないでしょう。
死と再生をテーマとした「Lazarus」
ちなみにミュージカルとアルバムのタイトルにもなった「Lazarus」は、David Bowieの25枚目のアルバムであると同時に最後のオリジナル・アルバムにもなった「★」(ブラックスター)の3曲目に収録された楽曲の曲名でもあります。「★」の代表曲でもあるこの曲はDavid Bowieがファンに送った遺書でもあり、自身の最後を歌った曲になっています。
そもそもタイトルに使われている「Lazarus」は死後4日後にキリストによって蘇生された人物です。病気のラザロに会いに来たキリストが、彼がすでにこの世を去ったことを嘆き、自らの手で蘇生するのです。日本ではラザロと呼ばれています。
死を前にしたDavid Bowieが伝えようとしたのは、死の恐怖と葛藤のなかでも失われることのなかった未来への希望でしょう。彼が死んだあともDavid Bowieの偉大なる創造は残り続け、世代を超えてまるでラザロのように人々のなかで蘇るのですから。
曲は死の暗さと悲しみを蔵していると同時に、サウンドはどこか近未来的で、詩にはどこか希望があるのも頷けます。
貴下の従順なる下僕 松崎より