インダストリアル・ロックの鬼才Jim Foetus(フィータス)を全力で紹介します

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私の愛しいアップルパイへ

作曲を生きがいとする者であれば恐らく誰でも、あまり安易に一番好きなアーティストとか一番影響を受けたアーティストとかってのは明確にしたくないものです。不要に先入観を持たれたりやレッテルを貼られたりする可能性は極力なくしておきたいものですから。

よって最愛のアーティストってのは、相当に気に入ってないといけないですし、音楽的に優れているのはもちろんのこと、こいつには到底敵わないというある種の畏敬の念を持てるアーティストでなくば名前を出したくないものです。

私にとっては誰かって?いろいろなジャンルの音楽を聴いてますから…と言葉を濁したいところですが、手放しで紹介できる唯一のアーティストがFoetusです。

工業的に大量生産される偽善ロックに飽き飽きしたなら!

私がFoetus(フィータス)を知ったのは15歳か16歳の頃、高校に入ったばかりだったと記憶しています。最初はその訳の分からない音楽に驚きました。ガッデム!確かにそう叫びました。

知的な暴力性とでも言いましょうか。まるでデヴィッド・リンチの映画から退屈さを取り除いたような、底のしれない音楽でした。フィリップ・K・ディックにトム・ウェイツを書かせたような、未来的な音楽でした。

ロック、ハード・ロック、ラウドロック、エモ、ヘヴィー・メタル、ただ激しいだけの音楽はいくつも聴いていましたが、Foetusの音楽はその幅を大きく広げるものでした。ありきたりで偽善的なロックに飽々していた私にはうってつけでした。

それは我が肉体の内側に宿る、自分でも持て余すほどの複雑な衝動にぴったりと呼応してくれる音楽でした。

叫びだしそうなドラム、跳ねまわる金属音、図太く歪んだシンセ、重力のように楽曲を支えるエレキギターとエレキベース、管楽器のアドリブめいた旋律、ときおり皮肉っぽく見せる完成された和声、短いモチーフが重なりあい、楽式論でも見たことのないめまぐるしい展開、その上にすべてを見透かして不条理を歌うようなFoetusのハスキーボイス。きめ細やかで調和された不快音。パーフェクト….

リリース日を確認しました。ガッデム!もう一度そう叫びました。そのソングは当時から20年以上も昔の1984年、つまり私が生まれる2年前にリリースされたものでした。

聴けば聴くほど魅了されてしまう!

それから私はFoetusの音楽に没頭しました。デビュー当時から最新のアルバムまで。アニメのサントラに入ったトラックからリミックスもの、ライブ盤まで1つ1つじっくりと聴きこみました。あまりにパーフェクトだったので、ときにはどうにかして欠点を探し出そうと努力しました。しかし、なかった!聴けば聴くほど魅了されてしまう!一時は嫉妬に来るって聴くのをやめたことすらあります。

Foetusのソングはまるで、この狭くてひどく窮屈な世界のなかで人間の内面に広がる無限の葛藤を自由に描き出しているような音楽でした。世界を真っ逆さまにしたような不可解さを見事に表わしていました。綺麗ごとでは言い表せない人間の粘りつくような衝動や欲求や願望が詰め込まれた工具箱のようでした。

部屋を真っ暗にして毛布を被って大音量でFoetusのソングを流せば、人間の精神に宿る不可解さと、そこから生まれる無限の苦悩が自分のうちから飛び出して、軽快に踊りだして、快感に変わっていきました。

あなたはご存知かもしれませんが、私は2010年頃に一度、音楽を諦めようとしたことがあります。スパッと音楽から足を洗うためにこんな風に自分に言い聞かせたものです。「Foetusが居るのだし、自分で曲を作らなくてもいいのではないか?」って。このプライドの高い私がですよ。驚きでしょう?

それで、おすすめアルバムの紹介ですが…おっと、そのためのスペースが不足しているようですね。続きは次回にしましょう。

jMatsuzaki最愛のバンドFoetus(フィータス)を堪能できるおすすめアルバム

貴下の従順なる下僕 松崎より

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システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。