THE PRODIGY(プロディジー)という伝説のバンドとおすすめアルバム紹介

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THE PRODIGY LIVE@Germany (11.27.2018) “No Tourists Tour”

私の愛しいアップルパイへ

イギリスで結成されたTHE PRODIGY(プロディジー)という伝説的なバンドをご存知でしょうか。私のようなダイハードなロックキッズならば誰もが一度は憧れる偉大なバンドです。彼らは90年代を代表するダンス、ロックシーンの象徴であり、2019年に入ってからも精力的に活動している実にパワフルなバンドでした。

しかし、2019年3月4日。メインのボーカリストでありフロントマンであったKeith Flint(キース・フリント)が亡くなるという衝撃的なニュースが入ってきました。現在のところ詳しい死因や原因、そして彼らのこれからの活動は分かりません(リーダーであるLiam Howlett(リアム・ハウレット)のTwitterによれば自殺だそうです)。

去年は7枚目となるニューアルバムのリリースに併せて世界ツアーを敢行しており、去年は私もベルリンで2回ほど彼らの素晴らしいアクトを体験したばかりでしたので、大きなショックを隠しきれません…

今日は私の心に火をつけ続けてくれた彼への追悼の意を込め、THE PRODIGYの歴史と活動、そして彼らが残した偉大な作品の数々を振り返りながら、あらためて彼らに想いを馳せましょう。

THE PRODIGYとは?

THE PRODIGYは1990年代にロンドンにほど近いエセックスで結成されました。元々は5人編成でしたが、最終的には3人で落ち着きます。世界的に知られるダンス・ミュージック界を代表するバンドです。

メンバーは楽曲の製作とサウンドシステムの構築を担当するリーダーのLiam Howlett(リアム・ハウレット)、ボーカルでありフロントマンともいえるKeith Flint(キース・フリント)、メインボーカルでありMCも務めるMaxim(マキシム)の3名からなります。

バンドは当初レイブカルチャー(クラブではなく屋外や倉庫で開催されるパーティーの一種で1980年代から1990年代にかけてイギリスで流行った文化)の元で活動し、イギリスのアンダーグラウンドシーンで頭角を現します。

着実に人気と知名度を伸ばしつつあった1997年に満を持してリリースされた3rdアルバム「The Fat of the Land」は世界中で1,000万枚を超えるモンスターヒットとなりました。どうアルバムに収録されている代表曲「 Smack My Bitch Up」「Breathe」「Firestarter」はロック好きなら一度は聴いたことがあるのではないでしょうか。

その後も決して停滞することなく、Always Outnumbered, Never Outgunned (2004年)、Invaders Must Die (2009年)、The Day Is My Enemy (2015年)、No Tourists (2018年)と、ロックとダンスシーンを牽引する最先端のアルバムをリリースし続けました。

ダンス・ミュージックを軸に、ドラムンベース、ブレイクビーツ、エレクトロ、オルタナティブ・ロックを統合し、90年代イギリスのダンス・ミュージックを世界中に広めた立役者となるまで成長し、現代にも繋がるダンス・ミュージック・シーンの土台を作った伝説的バンドとなりました。現在のクラブでもTHE PRODIGYの楽曲はよく使われています。

バンドの特徴と凄さ

THE PRODIGYの音楽性の特徴は、クラブでノリノリになれるようなプログラミングされた電子音を軸としつつ、ロックらしい疾走感と攻撃性を見事にミックスしたダンス・ミュージックの基礎を築いたことにあります。

メンバー構成も絶妙で、作曲とサウンドシステムの要でありリーダーのLiam Howlettがシンセサイザーとプログラミングによって芯のある繊細なミュージックを構築し、その上にギターの攻撃的なサウンドとKeithとMaximによるユニークな男性ツインボーカルが乗っかります。

シンセとプログラミングを駆使しているためサウンドの幅は極めて広く、Keithの歪んだボーカルとMaximのラップを駆使したボーカルが見事に融合しています。楽曲は全体を通して柔軟で幅広く繊細ながらも、強烈な個性を確立しています。

また、なんといってもTHE PRODIGYの本当の凄さはライブパフォーマンスの完成度にあります。Liam HowlettのシンセサイザーとKeithとMaximのツインボーカルに加えて、サポートとして生のドラムとギターが入ることで実に臨場感と高揚感のある完成されたサウンドが聴けます。

その上で、通常のバンドなら低音を担う楽器として必須のエレキベースを抜くことで非常にバランスのとれたサウンドを実現しています。エレキベースが居ない分、同じ周波数帯でドラムのキックとシンセの低音が響き渡り、THE PRODIGY独特のサウンドを実現しています。アルバムだけを聴いていると分かりづらいですが、THE PRODIGYは最高のライブバンドなのです。

私もヨーロッパで2回ほど彼らのライブを聴きに行ったことがあるのですが、度肝を抜かれました。1度は屋外で、もう1度はホールでのライブだったのですが、どちらもサウンドと視覚的なパフォーマンスのクオリティが極めて高かったのです。THE PRODIGYはライブバンドなのだと痛感しました。

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THE PRODIGY LIVE@Germany (8.11.2018) “MERA LUNA”

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THE PRODIGY LIVE@Germany (11.27.2018) “No Tourists Tour”

それもそのはずで、彼らは元々生演奏を重視したレイブカルチャーから生まれたバンドですから、生で体験する音楽は大得意なのです。単にアルバムを提供するだけでなく、野外や倉庫などのパーティー会場でぶっ飛べる音楽を提供することが彼らの核にあるのです。

このような音楽とパフォーマンスにおけるアプローチは、90年代の革命的にテクノロジーが進歩した時代と、それと並行してインターネットの台頭がエゴイズムを刺激して快楽主義的な傾向が爆発した時代に、音楽とパフォーマンスの両面で見事にマッチしたといえます。

THE PRODIGYの本当の凄さは、新しい音楽シーンのパイオニアになったと同時に、音楽を越えて文化の醸成にまで寄与し、シーンの象徴になったことだといえます。

おすすめアルバム3選

それではTHE PRODIGYのおすすめアルバムを3枚ほどピックアップして紹介しましょう。彼らは通算7枚のオリジナルアルバムをリリースしています(2019年3月時点)。

正直、どれも名盤といえるのでデビュー作から順に聴いていっても良いと思いますが、今日は忙しいあなたのために「まずはこれを聴け!」といえる名盤中の名盤を3つ紹介します。

The Fat of the Land (1997年)

まずもって最初に3rdアルバムとなる「The Fat of the Land」でしょう。これこそTHE PRODIGYの代表作であり傑作であり、ダンスミュージックのみならず20世紀末を象徴する作品の1つと言っても過言ではないでしょう。全世界で1,000万枚売れたアルバムですから、様々なものが凝縮されています。

1992年の1stアルバム「Experience」で衝撃的なデビューを果たし、1994年の2ndアルバム「Music for the Jilted Generation」でTHE PRODIGYサウンドを確固たるものとし、その上でジャンルの幅を大きく広げてこれまでのダンスミュージックの世界観をさらに高みに押し上げた本作は決定的な一枚となりました。

なかでも本作からシングルカットされた「Smack My Bitch Up」「Breathe」「Firestarter」はダンスミュージックのアンセムとなり、今でも至る所で使用されています。

Invaders Must Die (2009年)

続いてのオススメは5thアルバムとなる「Invaders Must Die」です。上述した3rdアルバム「The Fat of the Land」から数えて10年後となるアルバムです。

本作は「The Fat of the Land」の路線はそのままに、10年でそのクオリティを格段に上げた作品といえます。THE PRODIGYファンとしては待ちわびたアルバムで、「Invaders Must Die」や「Omen」など彼らの代表作が収録されていることもあり、THE PRODIGYらしさの詰まったアルバムです。

No Tourists (2018年)

3つ目のオススメはやはり2018年末にリリースされたばかりの7thアルバム「No Tourists」でしょう。停滞することなきTHE PRODIGYの最新のサウンドが聴けるというだけでも聴く価値のある作品です。

2019年にフロントマンのKeith Flintがこの世を去ったことから、彼の遺作ともいえる作品となり、ファンにとっては非常にメモリアルな作品となりました。

1曲目の「Need Some1」から THE PRODIGYらしさ全開で、進化した最先端のサウンドと新しい取り組みも随所に垣間見えて、実に聞き応えのある作品に仕上がっています。

いま一度THE PRODIGYに酔いしれる

私もあらためてTHE PRODIGYをデビューアルバムから聴き返していますが、彼らの音楽センスの良さには本当に舌を巻きます。私自身も作曲する身なのですが、THE PRODIGYサウンドの全体としての統一された鋭さ、バランスの良さ、細部にわたる完成度の高さ、ライブアクトとしての魅力は何度聴いても勉強になります。

ダンス・ミュージックの台頭という20世紀後半から21世紀にかけての音楽史の極めて重要な部分を担ってきたバンドとして、時代を象徴する偉大なバンドでした。49歳というKeith Flintの早すぎる死が残念でなりません。

これからのTHE PRODIGYの活動にも期待を込めつつ、今日は彼らの甘美な調べに身を投じようと思う次第です。

貴下の従順なる下僕 松崎より

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システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。