ノイズ・インダスリアルの鬼才Jim Foetus(フィータス)を堪能できるおすすめアルバム10選

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私の愛しいアップルパイへ

私が一番好きなバンドと言える「Foetus」を紹介したのは記憶に新しいでしょう。

インダストリアル・ロックの鬼才Jim Foetus(フィータス)を全力で紹介します

あなたは次に「jMatsuzaki、落ち着いて。あなたの気持ちはよく分かったわ。だから教えて。そのFoetusとやらのおすすめ曲をね。」と言うでしょう。

FoetusとDavid Bowieに限って言えば1曲1曲味見するより、アルバムを通して聴くことがおすすめです。アルバムを聴き終わったころにはFoetusの音楽を満喫できるでしょう。

ちなみに、Foetusはいろいろと名義を変えてアルバムをリリースしているので注意が必要です。Foetus、Jim Foetus、Scraping Foetus Off the Wheel、Steroid Maximus、Manorexia、Wiseblood、J. G. Thirlwellなどなど。名義は違いますが、同一人物です。

デビューは1981年ですが、2015年現在でも現役で活動中です。ここではデビューからいままで、すべての名義のなかからおすすめアルバムを紹介します。

jMatsuzaki最愛のバンドFoetus(フィータス)を堪能できるおすすめアルバム

驚きのブレイク作「Hole」(1984年リリース)

まずおすすめすべきは1984年の「Hole」でしょう。1981年のデビューから3年後で、3枚めとなるアルバムです。名義は「Scraping Foetus Off the Wheel」となっています。Foetusの初期の代表作の1つです。iTunesが擦り切れるほど聴きました。

内容としてはハンマーやチェーンやパイプやドラム缶などの金属を使ったパーカッション(インダストリアルというジャンルの特徴で、メタルパーカッションと呼ばれます)を多用した破壊的な作品です。

楽曲の骨組みはドラム・エレキギター・エレキベース・ボーカルというバンドサウンドが支えていますが、その枠を大きく飛び越えてノイジーな電子音楽を展開しています。曲調はどこか退廃的で、どこか原始的でもあります。

1970年代の後半、工業的に大量生産される俗っぽいロックに反発した音楽として、電子音やノイズ、金属音を取りいれた前衛的なジャンル「インダストリアル」が台頭してきましたが、その1つの完成形といえるのではないでしょうか。

1曲目の「Clothes Hoist」からして、その特徴を全力で発揮しています。また、雨音とハスキーボイスが絡みあう陰鬱なミドルテンポで始まり、少しずつテンポアップしながら様々な旋律が絡み合い、楽曲の終わりに向けて徐々に盛り上がっていく5曲目の「Sick Man」を聴けば、Foetusが単に暴力的で破壊的なアーティストではないことが理解できるでしょう。

ロックとは趣の違うモチーフが多様され、いま聴いても驚きに満ち溢れた会心の作です。

Holeを押し進めた「Nail」(1985年リリース)

Holeの翌年には「Nail」がリリースされます。NailはHoleの正当な延長戦上にあるような作品で、Holeをさらに充実させた音楽を聴くことができます。こちらもHoleと同じく「Scraping Foetus Off the Wheel」名義です。

1曲目の「Theme From Pigdom Come」はHoleとうってかわって交響曲のように厳かなインストで始まります。後にFoetusは自ら交響楽団を率いて交響曲を制作し、アルバムリリースもしますが、その片鱗を見せてくれます。しかし2曲目以降はFoetusらしさをいかんなく発揮しています。

6曲目の「Enter The Exterminator」はグリーグの「山の魔王の宮殿にて」で有名なモチーフを取り入れた遊びにあふれた曲。7曲目の「Di-1-9026」はFoetusの暴力性と緻密さが共存する非常に高度な楽曲になっています。

Nail以降、「Thaw」「Sink」などNailの路線を突き詰めたアルバムを立て続けにリリースします。

Foetusらしくも聴きやすい「Gash」(1995年リリース)

Nai路線のアルバムをリリースした後、Nailから10年後の「Gash」で方向性が変わります。

「Gash」は「Hole」と「Nail」を引き継ぎながらも、主旋律がはっきりしていてアルバム全体としてとっつきやすいものに落ち着きます。それでもFoetusらしい知的な暴力性は衰えていない名盤です。こちらはFoetus名義。

このアルバムの代表曲でもある「Verklemmt」は、Foetus特有のダイナミクスの激しいメタルパーカッションを背景に、メロディーラインのはっきりしたボーカルが乗っていて、より最近っぽい楽曲を聴かせてくれます。Foetusの入り口としてとても良いアルバムです。

Gashをさらに完成させた「Flow」(2001年リリース)

「Gash」から6年後となる7枚目のアルバム「Flow」は中期のFoetusを語るうえで外せない名盤でしょう。成熟したFoetusを聴けるアルバムであり、全体の完成度が最も高いのがこの「Flow」ではないでしょうか。

1曲目の「Quick Fix」はFoetusらしくノイジーでスピーディーに。2曲目の「Cirhosis Of The Heart」はうって変わってJazzっぽい落ち着いた曲。3曲目の「Mandelay」からは陰鬱で重苦しい雰囲気が広がります。5曲目の「The Need Machine」はFoetusの代表曲の1つ。バンドサウンドにノイジーな電子音楽がのっかりながらも、1つのソングとしてよくまとまっています。それから8曲目の「Heuldch 7B」でその盛り上がりが最高潮に!

何度通して聴いても興奮する名盤です。

Flowの最強リミックス集「Blow」(2001年リリース)

Flowのリミックス・アルバムである「Blow」も最高です。Flowを様々なアーティストがEBMやエレクトロニカ風に再構築しています。Flowとあわせて聴けばよりFoetusの世界を楽しめるでしょう。

8曲目で「Suspect」の一風変わったリミックスを聴かせてくれるDJ Foodは、後にDJ FoodがリリースしたアルバムでFoetusと共作しています。11曲目のUrsula 1000によるリミックス「Some Who Cares」は非常に渋いリミックスで私のイチオシです。

ちなみに、12曲目の「The Need Machine」をリミックスするJG ThirlwellはFoetus自身の別名義です。最近はJG Thirlwell名義での活動が増えてきました。

ノイズ・インダストリアルを脱却して近代化した「Love」(2005年リリース)

Flowから4年後にリリースされた「Love」からは、ノイズ、インダストリアル色がさらに薄れて、Foetusの音楽家としての幅が広がっていきます。

バンド・サウンド、ノイズと電子音、そしてオーケストレーションが見事に組み合わさり、深みのある楽曲を聴かせてくれます。

このアルバムの代表曲でもある9曲目の「Time Marches On」は、3分ほどの楽曲のなかにそれらすべてが詰め込まれた名曲です。

以降リリースされる「Hide」「Soak」をもって、この近代化した路線はさらに突き詰められていき、単なるノイズ・インダストリアル系の音楽と一線を画したソングを聴かせてくれます。

Foetusのインスト専用プロジェクトSteroid Maximus(1991 – 2002)

Foetusのサイドプロジェクトも取り上げておきましょう。Foetusのサイドプロジェクトとして最も有名なもののうちの1つが「Steroid Maximus」でしょう。

Steroid MaximusはFoetusの別プロジェクトであり、インストゥルメンタルの楽曲だけを制作してアルバムリリースしています。

Steroid Maximus名義では1991年から2002年にかけて、3枚のアルバムがリリースされています。時期的に「Flow」前後なので、Flow路線で完成度の高いインスト曲が聴けます。

初期Foetusが炸裂するノイズ・ロック・バンド「Wiseblood」(1987)

Foetus(ここではClint Ruinという名前を使っている)と、Swansに在籍していたこともあるRoli Mosimannによるバンドが「Wiseblood」です。

Wisebloodでは「Hole」を彷彿とさせる初期Foetusの破壊衝動あふれるサウンドが聴けます。楽器構成はFoetusよりもバンドよりで、激しくて偏屈なノイズ・ロックを堪能できます。最高!

リリースされているアルバムは「Dirtdish」だけ。現在入手困難で、18歳頃に探し回りました。運が良ければオークションで安く買えます。

Foetusの底知れない音楽性にどっぷり使って欲しい

今日はFoetusのなかでもとくにおすすめのアルバムを厳選して紹介しました。今日紹介したアルバムだけでも、1年は楽しめるはずです。

ありきたりの音楽に飽々して、新しい音楽を求めているのならFoetusの音楽を味わってみてください。

Foetusを聴いている人とはいまだかつて出会ったことがないので、是非Foetus談義でもしたいものです。

貴下の従順なる下僕 松崎より

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システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。