第二の脳とは?その特徴と作り方は?なぜ今必要なのか?

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第二の脳とは何か?その特徴と作り方は?なぜ今必要とされているのか?

私の愛しいアップルパイへ

私が物質的現象界へやってきてからというもの、第二の脳(Second Brain)という単語を耳にすることが増えました。第二の脳とは七面倒くさい説明を端的に説明するなれば「考えるためのノート」です。

「しかし、およそノートなんぞは大体考えるために使われるのであり、「第二の脳」など従来どおりのノートについて少しばかし人の目を引きたい俗人が案出した言葉遊びに過ぎんのではないか? え?」

とおっしゃいましたか? その疑問はごもっともです。賢いお方です。

今日は第二の脳なるものが従来のノートとはどう違い、どのような歴史の中で醸成されてきたのか。そして、それがなぜ今必要とされていて、あなたにどのような効果をもたらしてくれるかについてお話しましょう。

私は貪欲にも、この第二の脳というすべての知識労働者にとって望ましいユートピアについて、私が知っているすべてをあなたにお伝えせんとやってきた次第であります。

今日は長い夜になるでしょうから、どうぞ熱いコーヒーでも用意してこちらにお掛けください。

私が第二の脳を作り始めた理由

最初に少しだけ、私がいかにして第二の脳を欲したかについて経緯をお話しましょう。これによって第二の脳というものがどのような用途で、どのような課題を解決するか具体的なイメージを最初に持っていただけるでしょうから。

私が第二の脳を構築することについて本格的に考え始めたのは1年ほど前、2020年のことです。それまでもノートアプリケーションの使い方については試行錯誤を続けてきましたが、これまでとはまったく別の次元へアップデートしようと決意したのはこのころでした。

私は自らの人生哲学を根本から見直すとともに、経営者として幅広い知識をもとめられるようになったことで、ものごとをより広くより深く考えられるプラットフォームが必要となったのでした。

このころから、まさに今こそ第二の脳を本気で構築する必要性があるという切迫した感覚を持ちはじめました。

その理由は大きく3つあります。

  1. 時代の大きな流れの中で個人的な価値観および人生哲学を変化させる必要性を感じ、多種多様な情報を集めて体系的に整理する場所が必要となった。特にヒューマニズムからデータイズムへの移行について1
  2. フリーランスから会社の経営者になったことでこれまで以上に幅広い知識とその統合が求められるようになり、従来のノート術に限界を感じた
  3. 10年前に比べて文章によるアウトプット量が減っていた状況を改善したかった

1点目は、これまで主に芸術や哲学を通して培ってきた自由主義的ヒューマニズムという基本的な価値観を変更する大仕事に本気で手を付ける覚悟が決まったことにあります。これには幅広い範囲の複雑な知識を体型的にまとめて新たな洞察へとつなげるいく場所が必要となります。

人生哲学は思考面でも行動面でも人生のあらゆる側面に大きな影響を及ぼします。これは第二の脳構築において、精神エネルギーを土台とする大きな原動力になりました。

2点目は仕事面です。仕事で求められる知識の幅が広がり、今後のキャリアプランにおいても知識の管理と向上が大きな意義をもつようになったのです。

これによって第二の脳構築は切迫した課題となり、重要度の高い取り組みとなりました。

3点目は業務的な側面です。執筆は私の主要な業務の1つで、この効率と効果性を高めることは仕事へ直接的に影響します。

これによって第二の脳が日々の実際的な業務と関連し、第二の脳構築に緊急性をもって継続的に取り組むうえで大いに役立ちました。

加えて、もともと使っていたEvernoteの大型バージョンアップによる改悪からノートアプリケーションを移行する必要に迫られたことも大きい要因でした。昨今では数々のノートアプリケーションが新しくリリースされてきていますから、良いタイミングでした。

そういったわけで、アプリケーションを移行するタイミングでノート・テイキングメソッド、ひいては個人の知識管理メソッドを根本から見直すプロジェクトへ本格的に取り組むこととしたのです。

第二の脳とは

では、まず第二の脳とはなんでしょうか。端的に言えば考えることをサポートする外部システムのことを指します。第二の脳という用語は主に個人的なナレッジマネジメント(Personal Knowledge Management = PKM)に関連して使われます(PKMについては後述)。

PKMの中でも特に情報の知識変換に特化したシステムを第二の脳と呼ぶことが多いです。

人が何かを考えるときには通常長期記憶と短期記憶を使うことになります。記憶を処理しながら考えをまとめていくわけです。

そのため、考えられる内容も当然のことながら脳内の記憶に縛られます。思い出せないことは考えられないからです。

このとき記憶の制限を超えて考えられるように第二の脳が用いられます。第一の脳である頭脳が備える短期記憶と長期記憶に加えて、外部の記憶が使えるイメージであるため「第二の脳」と表現されます。

第二の脳という考え方が一般的に広まった背景には、2008年にローンチされたEvernoteをはじめ、2000年第代初頭から無料または低価格で使えるSaas型ノートテイキングサービスの登場が要因として挙げられます。

▼ちなみにこれが現在私が構築している第二の脳です。ZettelkastenメソッドにもとづきNeovimで作っています。

PKMとは

第二の脳は「PKM」と呼ばれるより大きな概念に包括されます。

PKMはPersonal Knowledge Managementの略で、個人的なナレッジマネジメント(知識管理)のことです。

1999年にJason Frand氏とCarol Hixon氏が発表した「Personal Knowledge Management : Who, What, Why, When, Where, How?」で「Personal Knowledge Management」という言葉が使われ、広く議論されるようになりました。2

両氏によれば、PKMは個人として重要だと感じる情報を整理・統合し、個人の知識へと変換する概念的なフレームワークです。PKMは、ランダムな情報を体系的に適用できるものに変え、個人の知識を拡大する戦略を提供します。

これはデータから始まり、文脈を加えて情報とし、理解を加えて知識とし、判断(価値観)を加えて知恵を得る概念であると述べました。3

Ismail Shahrinaz氏とAhmad Sharifuddin氏によれば、PKMを実現にするには一般的に「検索」「理解」「接続」「共有」の4機能からなるシステムが必要です。情報を検索して理解し、それを他者とつながって共有するのです。4

Emerging Personal Intelligence in Collective Goals: Data Analysis on the Bottom-Up Approach from PKM to OKM

もともとナレッジマネジメントは個人ではなく組織的活動を対象に研究されてきました。古くは野中郁次郎氏が哲学者である西田幾多郎氏の“Ba“(場)の概念を取り入れて1990年に考案し、改良が続けられた「SECIモデル」が広く知られています。5

SECIモデルは暗黙知と形式値がどのように組織内でやりとりされ、組織の価値を高めていくかという組織内のナレッジマネジメント(OKM)に主眼が置かれています。それをベースとした研究が進むにつれて徐々にPKMにも主眼が置かれるようにシフトしてきたわけです。

OKMとPKMの違い

上述したとおり、PKMはもともとOrganisational Knowledge Management(OKM)の文脈で語られることが多いものでした。組織(会社など)の知識が現場を通して社員一人一人に伝わり、個々の社員が経験とともに自分の中で洗練させた知識をまた組織へとフィードバックしていく流れをモデル化したものでした。

組織が作り出すこのような知識変化プロセスを「形式知」と「暗黙知」の2種類に分けてフロー化したものが「SECIモデル」でした。6

知識創造の経営―日本企業のエピステモロジー

知識労働と知的生産が組織の主要な業務となるにつれ、このような知識の循環と成長は組織のポテンシャルを引き上げ、組織の根本的な価値向上につながると考えられたためです。

情報化が進むとともに知識労働における個人の比重が大きくなり、徐々にOKMからPKMへと議論の中心がシフトしていきました。個人の知識が組織に与えるインパクトが大きくなったためです。

OKMが組織の知識を中心として個人の知識が循環し融合するトップダウン的なアプローチであったのに対し、PKMは徐々に組織がもつ既存の知識を超えた個人の多様な知識を生かそうとするボトムアップ的なアプローチへと変化しました。

個人の力が大きくなったことで、組織の枠にとらわれない個人の知識が予想外に有益な成果をあげるようになったからです。

Ismail Shahrinaz氏とAhmad Sharifuddin氏は、1人1人のPKM(検索、理解、接続、共有)が相互に関連し合いながらOKMを醸成していく流れを次のような図で解説しています。7

Emerging Personal Intelligence in Collective Goals: Data Analysis on the Bottom-Up Approach from PKM to OKM

Zhang Zuopeng氏はPKMとOKMとの間で知識が変換されていくプロセスを「OAPIプロセス」として次のような図で解説しています。8

Personalising organisational knowledge and organisationalising personal knowledge

PKMがボトムアップ的なアプローチにシフトしたからといって、OKMが軽視されるようになったわけではありません。むしろ逆です。

上に挙げた図をご覧いただいても分かるとおり、PKMにおいて「知識の共有」と「他者とのつながり」は重要です。これによって生まれる人的ネットワークの広がりは新たな情報の収集を可能にするとともに、他者との議論やコラボレーションによって知識を深め、新しい知識の発想を促進するからです。

特にWeb 2.0が当たり前のものとなり、ソーシャルネットワークが発展した現代においてはPKMどうしの接続によって生まれるOKMとの相互作用は大きな可能性を秘めています。9

そこで、PKMのボトムアップ的アプローチによってOKMにつながっていくという考え方が生まれてきます。PKMは単に個人の知識を管理するという範囲にとどまらず、その先に組織(会社、コミュニティ、社会)への貢献についても念頭におかれているのです。

この経緯を考えれば「Obsidian」「Notion」「Scrapbox」「Trello」などのPKMに特化した現代のツールが知識を外部に共有する機能を有しているのは自然です。

PKMとOKMの相乗効果は、組織内で個人が活躍する土台となるものであり、同時に個人のキャリアプランに柔軟性をもたらすでしょう。

実際のところ私は個人ブログを10年描き続けてその効果を実感しています。

PKMとPIMとの違い

PKM以前にはPersonal Information Management(PIM)という類似の概念がありました。PKMとPIMはどう違うのでしょうか。

両者で使われている単語のうち違いがあるのはKnowledgeとInformationです。Knowledgeは知識であり、Informationは情報です。

それぞれの違いは次のように表現できます。10

なお、データは「ある事象に関する一連の離散的で客観的な事実」と言えます。

同じ情報でも解釈や推論の内容は受け手によって変わります。ですから、情報を問題解決や意思決定のために個人的に解釈することで知識が生まれるのです。

PIMとPKMは関連する概念ですが、その目的は大きく異なります。

PIMはPKMよりも前から存在する考え方です、PIMはその名のとおり個人的な情報管理を主眼としていました。

PIMは紙文書や電子文書などの情報アイテムをあとで検索したり利用したりするためにコレクションすることを目指します。簡単な例では電話帳や名簿などです。

PKMは情報から知識へとさらに一歩踏み込んだものになります。情報ではなく、知識の効率的かつ効果的な管理を目指します。情報に対する個人的な解釈や要約を体系化することで知識に変換し、問題解決や意思決定に役立てることです。

そしてPKMの中でも特に情報の理解と分析に焦点を当てたものとして第二の脳という考え方が存在するわけです。

普通のノートと第二の脳との違い

ここまで第二の脳という概念とその歴史的背景についてお話してきました。では、従来のノートと第二の脳はどう違うのでしょうか。

第二の脳は研究や執筆、プログラミング、作品制作など高度な知性と創造性を発揮する必要がある分野において特に大きな効果を発揮します。単に情報の”覚書きメモ”を検索できるようにしておくだけでなく、新しいアイデアの発想や新しい洞察を見つけるために積極的に使われる”考えるためのメモ”である点が従来のノート術との違いです。

従来のノートに対する一般的なイメージであるインプットした知識をただキャプチャしておくだけの受動的なノートとしてではありません。

第二の脳には、保存された既存の知識と新しくインプットした知識を接続し、新しい発想へと導くことが期待されます。それはまるでニューロンとシナプスの関係のようであり、そういった意味でも「脳」の比喩がよく合います。

Hause Lin氏によれば第二の脳は次の3つの点で従来のノートとは異なります。11

  1. 忘れないためではなく、よく考えるために書く
  2. 情報を分類するのではなく、つなげる
  3. アイデアをキャプチャするのではなく、育成する

それぞれ簡単に補足していきましょう。

第一に、従来のノートは忘れないことに重点を置きがちでした。第二の脳は単に忘れないだけでなく、思索を促してノートに書かれていない新しい発想に至ることを目的としています。

第二に、従来のノートは既存の知識にもとづいてフォルダやディレクトリで整理することが一般的でした。哲学は哲学ノートに、物理学は物理学ノートに、プログラミングはプログラミングノートに、音楽は音楽ノートにといった具合です。サブカテゴリを作ってメソッドごとや人ごとにさらに分類することも多いです。

第二の脳では分類は悪手であると考えます。分類は既存の知識に依存するものですが、知識は常にアップデートされるものですから、知識が増えるほど分類は複雑となります。分類をメンテナンスし続けるのは事実上不可能でしょう。

さらに、分類は過去の知識を元にするため、知識をサイロ型の構造に押し込んでしまうことになります。しかし、分類を超えた知識の結合こそ新しい発想へと導く効果的な方法なのではありませんか。

上述の例では、哲学とプログラミングを掛け合わせたり、物理学と音楽を掛け合わせたりすることです。分類はこういったアイデアの交差を抑制してしまいます。

そのため、第二の脳では(実際の脳がそうしているように)分類を排除して柔軟なネットワーク構造として接続しあうことで過去の知識にも新しい文脈を与えられるようにします。これは現在のWebサイトがコンテンツとリンクによって常に新しい構造を更新し続けている様子に似ています。

第三に既存のノートはひらめいたアイデアをキャプチャする受動的なプロセスに重きを置いていました。

第二の脳ではアイデアや嗜好を単にキャプチャしておくだけでなく、積極的にそれらを活用して新しいアイデアや嗜好を生み出すことを目的とします。

第二の脳に求められる機能

このような目的で作る第二の脳には、次の3つの課題を機能的に解決することが求められます。

このような問題を解決するためにZettelkastenをはじめとした様々なメソッドとツールが存在します。

第二の脳を作る効果

第二の脳を作ることで、どのような効果を得られるのでしょうか。

従来のノートにはない第二の脳特有の効果を次に例示します。これは私が第二脳を作るプロセスの中で実際に体験したものでもあります。

第二の脳は今どうして必要とされているのか

ここまで長々と「第二の脳」という概念について語ってきました。続いては、第二の脳が必要とされている理由についてもみていきましょう。

「第二の脳」という言葉は2000年代初めから聞こえてくるようになりました。それから20年ほどの月日が経つわけですが、下火になるどころか時の経過とともにその重要性はどんどん高まっていると感じています。

むしろ今こそ第二の脳に本格的に取り組むべき時が来たとすら感じられます。

その理由は大きく3つあると考えます。

OKMからPKMへのシフト

現代の業務では個人の知識労働の与える影響力が日に日に高まっています。その必然の結果としてPKMが注目されるようになり、それを実現する「第二の脳」という考え方も急速に広まりつつあります。

もともとPKMはOKMから派生した概念でしたが、時の経過とともにOKMの一分野としてではなくPKM単体として論じられることが増えました。これについては上述したとおりです。

知識労働が一般的になり、その重要性が高まるとともに、PKMの必要性は高まっています。そして、PKMの中でも特にボトルネックになりがちな「理解」のステップを支えてくれる第二の脳の存在は重要視されるようになるでしょう。

PKM関連ツールの進歩

今こそ第二の脳を作る時期としてふさわしいと考えられる理由の最たる要因はツールの進歩にあります。

SaaS型で導入しやすく高品質なノートテイキング・アプリケーションが増えたことで第二の脳を作るのは以前よりはるかに容易かつ身近になりました。

「Notion」「Roam Research」「Obsidian」「Scrapbox」「Evernote」などのツールが登場したことで第二の脳を作る現実的な環境が整ってきつつあります。それに伴い、各種コミュニティで第二の脳構築に関する方法論も盛んに議論されるようになりました。

古くからあるZettelkastenをはじめ、それを土台とした「Evergreen notes」「Link Your Think」といったモダンな方法論も提示され始めています。

加えて、SNSが浸透したことで知識を共有して他者の意見を聞いたり、コラボレーションしたりすることが容易になったことも大きいです。

考えることの重要性

個人に求められる能力として、自らの知識を存分に発揮して問題に創造性な対処をすることが強く求められるようになりました。

というのも情報化社会が当たり前のものになった今、情報にアクセスできることはさほど大きな価値を持たなくなったからです。ブラウザを開けば大抵の場合は専門的な情報でも即座に入手できますし、それを理解する分かりやすい情報がいくつも見つかるでしょう。

つまり情報を入手する仕事はコンピュータに取って代わられたということです。ならば、知識労働において人間に求められる仕事は何でしょうか。それは「考えること」です。

単に必要な情報を取捨選択して集めるだけでなく、それをもとに自らの考えを構築し、問題に対して自分ならではの解決策を考えることが求められます。

インターネットとSNS、スマートフォンの登場によって情報は溢れています。油断していると情報の渦で溺れ、ただ情報を消費するだけの存在になりかねません。1990年代以降にインターネットが一般化したことで、いまやWeb上にはそれ以前の歴史で記録された情報を上回る量の情報が掲載されているのですから。12

しかもWeb上の情報は書籍や論文と違い査読や編集はされないことが通例ですから、正しい情報をもとに知識を組み立てるのは容易でありません

さらに悪いことに、脳は常に“目新しいこと“を求めているので、大量のノイズに耳を傾けなければなりません。スマートフォンの登場によってこれは切迫した問題になっています。13

まとめると、我々がアクセスできる情報は以前に増して目を見張るほど膨大になったものの、「考えること」は以前に増して難しくなっているということです。

このような状況下で第二の脳のようなPKMシステムは必要性を増しています。必要不可欠と言ってもよいでしょう。

そのうえ、時代の変化と長寿化があいまって生涯雇用が非現実のものとなり、人は生涯様々な分野の会社を渡り歩きながら働くことが求められるようになりました。

このようなワークスタイルで求められるのは「ジェネラリスト」ではなく「連続スペシャリスト」であるとリンダ・グラットン氏は「ワーク・シフト」の中で述べます。14

特定の会社の中でのみ通用する知識を身につけるジェネラリストではなく、複数の分野で専門的な知識を発揮して柔軟かつオリジナルな仕事ができる連続スペシャリストです。

つまり、知識の成長と拡大を生涯続けていく必要があるということです。

第二の脳構築はこのようなキャリアプランにぴったりと当てはまります。

第二の脳を作る実践方法

第二の脳には様々なメソッドや方法論が考えられますが、ここでは私が実践する中で共通して重要だと感じられていることをいくつか挙げておきましょう。

自分の言葉で説明し直す

第二の脳に保存するノートは極力すべての文章を自分の言葉で書くことが重要です。新しくインプットした知識を自分の言葉で説明し直すのです。

これこそ情報コレクターから抜け出して、第二の脳と言えるシステムを構築する要の習慣と考えています。

詳しくは「ナレッジノートは自分の言葉で説明し直すこと」を参照ください。

リソースをかけることをいとわない

第二の脳を作るためにリソースを費やすことをいとわないことも大切です。第二の脳を作るのは簡単じゃありません。

読書や調査を効率化したりするものではありません。むしろ逆です。それらにもっと多くの時間がかかります。1冊7時間で読み終わっていたものが、第二の脳へと組み込むために1冊15時間かかる可能性もあります。

リンク集やハイライト集には知識としての価値はさほどありません。それらは買い物におけるカタログにすぎないのです。ただ読んだだけではさほど意味がありません。カタログを持っているからといってそれを所有しているかのように扱うのは狂人の振る舞いでしょう。

何かを手に入れようとカタログを開いたなら、金銭というコストを支払ってはじめて入手できます。コストを支払うことなしにカタログの商品を自分のものにはできません。

第二の脳もそれと同じです。リンク集やハイライト集を作ったら、それを自分のものにするためのコストをかける必要があります。ここで支払うのは金銭でなく時間と労力です。

新しいインプットやアイデアを自分の言葉で説明し直し、関連する過去の知識と接続する時間と労力というコストを支払うのです。

ある程度のコストがかかることを覚悟せずに第二の脳を作り出すことはできません。1冊の本、論文、記事を読むのに今までよりも時間がかかることになります。これは避けられません。

しかし、買い物と同じようにコストを払っただけの見返りは十分すぎるほどあるでしょう。

過去の知識を積極的に使い、更新する

第二の脳は新しい知識をキャプチャするだけのものではありません。新しい知識を積極的に過去の知識と接続し、必要に過去の知識も更新される必要があります。

このプロセスを経て、新しい知識が第二の脳に取り込まれると同時に古い知識も最新にアップデートされます。

既存の全知識を定期アップデートするのは不可能です。新しい知識がインプットされた時に関連する古い知識も同時にアップデートすることが最適解となります。

実際の脳も頻繁に利用する知識は長く記憶されて、使わなくなった知識はいつのまにか忘れ去られるものです。これと同じです。

我らの造物主が頭を捻って我々の脳をそうしたように、第二の脳も使われない知識は薄れていき、頻繁に使われる知識はアップデートされ続けて知識が深まっていくことになります。

その他、Zettelkastenを中心とした実践方法についてはZettelkastenカテゴリが詳しいので、こちらもご覧ください。

貴下の従順なる下僕 松崎より

参考文献

  1. ユヴァル・ノア・ハラリ and 柴田裕之, ホモ・デウス 上下 テクノロジーとサピエンスの未来, 河出書房新社, Sep. 06, 2018.
  2. Jason Frand Carol Hixon,“Personal Knowledge Management, 1999
  3. Jason Frand Carol Hixon,“Personal Knowledge Management, 1999
  4. Ismail Shahrinaz and Ahmad Sharifuddin, Emerging Personal Intelligence in Collective Goals: Data Analysis on the Bottom-Up Approach from PKM to OKM, Jul. 2012
  5. 野中郁次郎, 知識創造の経営―日本企業のエピステモロジー, 日本経済新聞出版, Dec. 14, 1990.
  6. 野中郁次郎, 知識創造の経営―日本企業のエピステモロジー, 日本経済新聞出版, Dec. 14, 1990.
  7. Ismail Shahrinaz and Ahmad Sharifuddin, Emerging Personal Intelligence in Collective Goals: Data Analysis on the Bottom-Up Approach from PKM to OKM, Jul. 2012
  8. Zhang Zuopeng(Justin), Personalising organisational knowledge and organisationalising personal knowledge, Online Inf. Rev., vol. 33, no. 2, pp. 237–256, Jan. 2009, doi: 10.1108/14684520910951195
  9. Razmerita L. ;.,Kirchner K. ;.,and Sudzina F., Personal Knowledge Management: The Role of Web 2.0 Tools for Managing Knowledge at Individual and Organisational Levels, Online Inf. Rev., vol. 33, no. 6, pp. 1021–1039, 2009, doi: 10.1108/14684520911010981
  10. Razmerita L. ;.,Kirchner K. ;.,and Sudzina F., Personal Knowledge Management: The Role of Web 2.0 Tools for Managing Knowledge at Individual and Organisational Levels, Online Inf. Rev., vol. 33, no. 6, pp. 1021–1039, 2009, doi: 10.1108/14684520911010981
  11. Hause Lin, Why Take Notes: 3 Mistakes, 3 Better Mindsets, The Startup, Oct. 05, 2020.
  12. Jason Frand Carol Hixon,“Personal Knowledge Management, 1999
  13. アンデシュ・ハンセン and 久山葉子, スマホ脳, 新潮新書, Nov. 18, 2020.
  14. リンダ・グラットン, ワーク・シフト ─孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>. 2012,
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