私の愛しいアップルパイへ
▼ありがたいことに以下のSweeeeeetなTweeeeeetに大変な反響があったので、補足したいと思います。
物づくりや成果物を作り上げるうえでは、いかに期限内に質の高いものを作り上げられるかは、私たちのような夢見るリアリストにとって永遠の課題ではないでしょうか。無論、たとえ明確な期限のないものであったとしても、自ら期限を決めて出来るだけ多くの作品を仕上げることで卓越した技術を磨きたいというケースもあるでしょう。
かような状況で問題になるのは、調査に時間ばかりかけてなかなか実際の物づくりに手がつかず、期限ギリギリになってやっつけ仕事をしてしまい、納得のいかないものを作ってしまうことではないでしょうか。このような不幸をあなたには味わって欲しくないため、ヒントとなるスケジューリング法を提示したのが上記のツイートで図示したものです。
工程ごとの理路整然としたスケジュールがうまく機能しない理由と対策
▼そういった人の多くは以下のようなスケジュールを思い描いて仕事を進めています。
このようなスケジュールは何といっても分かりやすく、説明しやすく、管理もしやすいように思えるので現実的に有効に機能するかどうかは別として、人気のスケジュールです。
しかし、残念ながらこのような理路整然としたスケジュールは得てして機能しないものです。なぜなら、複雑で創造性の高い仕事(つまりあなたが手掛けるような頭を使うほとんどの仕事)は、手をつけてみて初めて分かることが多く、成果物は有機的に成長していくものだからです。
成果物が植物のように有機的に成長していくというのがポイントで、建築物のように明確で厳密な設計を元に進められるような物でないことがほとんどなのです。
▼ですから、少々直感に反するにせよ、実際にはこのようなスケジュールの方がずっとうまくいきます。
後者のスケジュールをうまく機能させるためのコツ
とはいえ、後者のようなすべての工程を同時並行的に進めるやり方は一定の混乱を生むのも事実です。そこで、後者のようなスケジュールをうまく機能させるコツについていくつか紹介しておきましょう。
ネクストアクションを管理する
後者ではすべての工程を同時並行するため、同時に考えなくてはいけない範囲が増えます。そのためタスクを整理する重要性が上がります。
前者のスケジュール法では、将来の見通しが求められます。いつまでに何をどこまで作るかを重視します。
後者のスケジュール法に求められるのは逆で、それぞれの工程ごとにネクストアクション(次にやること)を具体化して、ネクストアクションだけに集中して確実に進めることです。見通しより、目の前の課題に集中すること。このような態度で進めることがまずもって重要です。
詰め込み過ぎず毎日ちょっとずつ進める
このようなスケジュールは最初の一歩が一番ハードルが高くなりがちですから、すべての工程を一気に押し進めようとするのではなく、一日でどこまで進めるかの制限を設けてすべてを毎日少しずつ進めると良いです。
ネクストアクションを見極めたらそれを5分でも10分でも毎日少しずつ進める形です。気合を入れてすべての工程をできる限り最速で進めようとしていたら、簡単にパンクしてしまいます。
1日の早い段階で着手する
後者のやり方が求められる仕事は複雑で創造性が高い仕事と考えられます。ですから、このような仕事に着手するのは最も頭が冴えている午前中、できれば一日の最初の仕事として取り組んでしまうのがベストです。
やりかけを恐れない
後者のスケジュールでは、すべての工程を同時並行で進めるため、成果物を少しずつ中途半端に作っていく必要があります。
そのため、中途半端に進める気持ち悪さに慣れておく必要があります。丁寧で完璧主義な人ほどこれに耐えられず、前者のように1つ1つきっちり丁寧に進めてしまうのです。それではペース配分を誤りスケジュールギリギリになってやっつけ仕事となってしまいます。
すべての工程を同時にシングルタスクで進める
後者のスケジュールについて多く意見をいただいたのは、マルチタスクが苦手な人にとっては難しいというものでした。
ここにはマルチタスクに対する根本的な誤りがあると思います。マルチタスクとは、電話しながら料理する、映画を観ながらレポートを書くという様に、ある瞬間に同時に複数のことをこなそうとすることです。
このスケジュールのように、複数の工程を同時並行で進めるのは必ずしもマルチタスクにはなりません。大抵の人は仕事をしながら引っ越しの準備をしたことがあると思いますが、それと同じようなものです。引っ越しの準備をしている時期に本業の仕事をすることはマルチタスクとはいいません。それがマルチタスクなら私たちの生活はすべてが常にマルチタスクになってしまうからです。
後者のスケジュールをどのように進めるかというとネクストアクションを洗い出して、1つ1つシングルタスクでこなしていくと混乱せずに進められるでしょう。考慮しなければいけない工程が増える分、むしろシングルタスクに集中する重要性は上がります。
あくまでその瞬間に集中するのは特定の工程のうちの具体的なネクストアクションについてだけです。
ウォーターフォール型とアジャイル型との対比ではない
同じくらい多くの意見があったのはウォーターフォール型とアジャイル型との比較だという意見でした。ウォーターフォール型とアジャイル型というのはシステム開発プロセスのモデルのことです。
確かに先の図はウォーターフォール型とアジャイル型との差異にインスピレーションを受けたところはあります。私自身、働き始めて最初の6年半はウォーターフォール型のシステム開発現場で働き、それ以降から現在に至るまでの8年間はアジャイル型のシステム開発現場で働いています。この計15年間ほどの経験に影響されて生まれた考えであることは疑いようがありません。
ただし、今回の私の主張はシステム開発や、それに類する組織的なプロジェクトを意識したものでないことは留意いただきたいところです。あくまで個人が物づくりをしたり成果物を作りあげる上でのスケジューリングを強く意識したものとして考えました。
というのも、組織のシステムやプロダクト制作に関わる開発プロセスというのは十分に高度な考察とモデル化が進んでおり、ウォーターフォール型とアジャイル型はそのうちの代表的なモデルの一部に過ぎません。これらについて、あらためて私が簡略した図式をもって取り上げる必要性はないと考えています。
それよりも、ウォーターフォール型とアジャイル型のような組織レベルで考案された高度なモデルを分解して、マイルドにして、個人レベルでも応用できるように簡略化して、図式化したという方が相応しいでしょう。そういうわけですから、2つの図はどちらもウォーターフォール型でもなければアジャイル型でもないということです。
すべての工程を少しずつ進めるために習慣を活用する
残りのスペースも少なくなってきたことですし最後にお伝えしておきたいのは、期限内に高品質な物を作れる人のスケジュールとした進め方を実行する上で一番の武器になるのは「習慣」だということです。
後者のスケジュールではすべての工程になるべく早く手をつけて、ネクストアクションを1つ1つ取り出しては毎日少しずつ進めるやり方が求められます。これは言うは易しですが、実際にやってみるとそう簡単な物ではありません。
このような複雑で創造性の高い仕事の進め方をするためには習慣化してしまい、頭を使わなくても体が動くようにしておくことが求められます。
私自身はTaskChute Cloudを使ってこのようなプロジェクトを進める習慣を育成しています。一度体が慣れてしまえば、気づいた時には驚くほど仕事が進んでおり、しかも期限ギリギリで焦ったり完成後に燃え尽きたりしないことにビックリするはずです。
貴下の従順なる下僕 松崎より