アドラー心理学の普通であることの勇気とは何か?

▼アドラー心理学について書かれた「嫌われる勇気」を動画で解説したものもあります。アドラー心理学を詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。




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アドラー心理学をまとめた名著に「嫌われる勇気」とその続編「幸せになる勇気」があります。

私たちに数々の素晴らしいインスピレーションを与えてくれたこの二冊の本ですが、なかでも私の脳に粘りついたのが「普通であることの勇気」という言葉です。

特別な自分を追い求めれば他者に依存することになる

私たちは長らく頭ひとつ飛び抜けた特別な人間になるための努力についてばかり教えられてきた気がします。かけっこで一等賞をとること、写生会で金賞をとること、読書感想文コンクールで入賞すること、期末テストで10位以内に入ること、一流の大学に入学すること、大企業に就職することなどです。結果を出して人から褒められたり認められたりすることで自分の価値を自覚することができます。これは確かに快感でしょう。

先ほど紹介した二冊の本ではこのような、他者からの承認によって特別な自分に目覚める道を他者へ依存した不自由な生き方であるとバッサリ切り捨てます。

ですから、自分の価値を他者によってではなく、自分によって決定することが、真の自由と喜びへつながります。

「わたし」の価値を、他者に決めてもらうこと。それは依存です。一方、「わたし」の価値を、自らが決定すること。これを「自立」と呼びます。

幸せになる勇気 第三部 競争原理から協力原理へ

しかし、ここで大きな壁にぶつかります。いきなり自分の価値を自分で決めよといわれても、そもそも自分で自分の価値を決められないからこそ、他人による評価を必要としているのですから。これでは堂々巡りの議論になってしまいます。

そこで、この壁を突破する鍵となるのが「普通であることの勇気」です。自分で自分の価値を決められないから特別な人間に見られようとしてしまう。しかし、そこで「普通であることの勇気」を発揮して、特別ではないその他大勢としての、普通の人間としての自分の価値を受け入れるのです。

これは古い価値観を破壊する行為であり、間違いなく恐ろしいことです。いまの日本の社会的な仕組みともマッチしていません。「勇気」という言葉が入っているのは真実をついていると思います。

普通であることの勇気とはなにか?

では「普通であることの勇気」とはいったいなんなのか?「普通である」とは具体的にどういう状態なのか?という疑問が湧いてきます。私も二冊の本を読んで以来、普通であることの勇気とはなんなのか悩みました。

普通であるとは、無能であるということとどう違うのか?普通であるとは、いったいなにを認めることなのか?普通であるとは、みんな同じということなのか?ならばなにが同じなのか?

私が辿り着いた回答はこうです。

普通であることの勇気とは、例外なくすべての人間が生まれながらに唯一無二の存在であることを信じる勇気である。

自分が生まれながらに唯一無二の存在であるのと同じように、他人も生まれながらに唯一無二の存在であることを信じることです。誰もが唯一無二であるなら、誰もが普通であり平凡であるといえるでしょう。そして、誰もが唯一無二ならもはや競争する必要はなく、人から認めてもらう必要もないのです。

普通であることの勇気を身につけるにはどうすればいいのか?

では、自分も含めてすべての人間が生まれながらに唯一無二の普通かつ平凡な存在であることを信じる勇気を身につけ、発揮するにはどうすればいいのでしょうか?これもアドラー心理学のなかに答えがありました。それは尊敬です。

普通であることの勇気を身につけるためには、その第一歩として人間を「尊敬」する必要があります。アドラー心理学のいう尊敬とは、もちろん相手を褒めることではありません。

目の前の他者を、変えようとも操作しようともしない。なにかの条件をつけるのではなく、「ありのままのその人」を認める。これに勝る尊敬はありません。

幸せになる勇気 第一部 悪いあの人、かわいそうなわたし

簡単にいえばそれは他者に興味を持つということであり、人間を好きになるということです。人間を好きになれば、自分だけでなく誰もが唯一無二の普通の存在であることを実感するでしょう。そして、その実感が強まれば、「普通であることの勇気」が強まっていくはずです。

では、人を尊敬するためになにをすればいいのでしょうか。それは人の話を聞くことでしょう。かの7つの習慣」には第五の習慣として「理解してから理解される」という習慣について語られていますが、これはまさに「普通であることの勇気」を発揮するための習慣といえるでしょう。

人に興味を持ち、人の話に耳を傾け、相手に共感すること。これこそ普通であることの勇気を身につける方法であり、引いては他者への依存から脱却して自立するための方法なのではないでしょうか。

まだまだ私も普通であることの勇気を身につけ発揮できるよう訓練中ですが、少しずつ糸口が見えてきて喜んでいます。

▼「嫌われる勇気」と「幸せになる勇気」オススメです。

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システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。