あなたが世界を変える「トライブ」を率いるには~書評:セス・ゴーディン「トライブ」~

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私の愛しいアップルパイへ

「世界を変える方法がある」

私がそんなことを言ったら「おお、パイドロスよ、、、麗しのパイドロスよ!はやく正気に戻るんだ!!」と言われてしまうかも知れません。

実は、そんな誰もが鼻で笑ってしまう方法について書かれた本があるんです。たった1人で動き始めて、集団を率いて、世界を変えてしまう方法です。

トライブ(部族)とは?

著者の言う「トライブ」とは、その名の通り「部族」を表します。それは単なる集団ではなく”同志”の集まりです。所属組織や住んでる場所は関係ありません。「契約」ではなく「興味」でつながる集団なのです。

自らのビジョンを掲げ、それに共鳴してくれる人々を率いて世界を変える。なんてロマンティックなんでしょう。これこそ情熱を注ぐに相応しい仕事です。私が思うに、恐らくこの世で最高の仕事です。

そして本書は、あなたこそがリーダーとなり、この強いつながりを持ったトライブを率いるべきだと強く説きます。

トライブを率いるには?

それでは、あなたがトライブを率いるには何をすれば良いか。キーとなるポイントを説明していきましょう。

誰もがリーダーになれる時代がやってきた!

「私はトライブを率いるような立場に居ないわ」

おめでとうございます。そんな時代はとうに過ぎ去りました。インターネットを通じで誰もがメディアを持てるようになり、また、テクノロジーの進化によって個人でも大きな仕事をこなせるようになったからです。

たった1人でも、無視できるほど小さなコストで”何かをはじめる”のに十分な環境が持てるようになりました。足りないのは、、、著者の言葉を借りましょう。

私はこれまで、素晴らしいアイデアを持つ、数えきれないほど多くの人たちと出会ってきた。数千人、いや数万人はいたかもしれない。まあまあ優れたアイデアもあれば、文句なしに素晴らしいアイデアもあった。ごく普通の人でも、かなり簡単に常識破りのアイデアを思いつくものだ。アイデアは足りている。足りてないのは、アイデアを実現する意志である。

P.70

トライブが作れない場所などない

人は常に何かしらに「興味」を持っているものですし、常に何かしらの「変化」を望んでいるものです。つまり、トライブはどこにでも作ることができるということです。企業という枠や地理的な制約に囚われる必要はありません。

もちろん、企業内でもトライブは作れます。いえ、企業こそトライブを求めているのかも知れません。トライブを率いるためにフリーエージェントになる必要はありません。CEOである必要も、マネージャーである必要もありません。いち従業員で十分です。大切なのは”組織で働くことではなく、組織に働きかけること”です。

著者は若かりし頃、ソフトウェア会社に勤めていた頃に、「社内報」を使って自分のプロジェクトに力を貸してくれるプログラマー達のトライブを作ったと言います。アイデアは無限です。

「グループ」を「トライブ」へ変える2つの要素

単なるグループがトライブに発展するためにはたった2つのシンプルな要素があれば十分です。

「共有する趣味」と「コミュニケーションの手段」

リーダーが信念によって「趣味」を「ビジョン」に変える。そして、トライブ間のコミュニケーションを促進する場を作る。トライブの発展に必要なのはこの2つだけなのです。

パーミッション・マーケティングを使いこなせ

著者はトライブへメッセージを届ける方法として「パーミッション・マーケティング」の考え方を紹介しています。

これは、メッセージを強制的に投げつけるのではなく、興味を持ってくれた人にメッセージを送って良いかのパーミッション(承認)を得てから、メッセージを送り届けるというものです。

TVやラジオなどの広告は注意を引き付けることに心血を注いでいます。人の興味の隙間に強制的にメッセージを流し込む、妨害型のマーケティングです。対して、メッセージを受け取るかの承認を必要とするTwitterの「フォロー」やFacebook Pageの「いいね」などは、パーミッション・マーケティングの考え方そのものです。

トライブの規模を無理やり大きくしようとして、無闇に広告を打つのはナンセンスです。興味を持ってくれた人に承認を貰い、それによって新メンバーが生まれます。そして、彼らと自然に情報交換をすることが、強力なトライブを作り上げる秘訣です。

リーダーの条件は「変化」に情熱を捧げること

あなたがトライブを率いるリーダーとなるための条件は1つ、「情熱」です。トライブを率いてあなたを取り巻くのっぴきならない現実に「変化」を起こすことに「情熱」を捧げられるかどうかです。

あなたがトライブのメンバーの行動を「変化」させ、トライブが世界を「変化」させる。この仕事に「情熱」を持って取り組めるなら、あなたこそリーダーに最適な人物です。

著者は狼のようにギラついた目つきでこう語ります。

「人生は短い」。この使い古された言葉には真実がある。不幸せで平凡な毎日に甘んじている暇はない。何の意味も無いし、そもそも苦痛だろう。次の休暇を待ちわびるより、逃げる必要のない人生を送るのが先ではないだろうか?

P.130

「あなた」が「今すぐに」やらなければ誰がやる?

この本には実に残念な点があります。それは、一度読んだら”行動に移さずにはいられなくなる”ことです。

本書は強く問いかけてきます。「あなたがやらなければ誰がやるのでしょうか?」「いったい何を待っているのでしょうか?」と。著者は”誰もがマーケター&リーダーの時代”と称して以下のように言っています。

さあ、絶好のチャンスがやってきた。あなたがトライブを率いるチャンスが到来したのだ。問題は「私にできるのか?」ではない。「私は率いるのか、やめておくのか?」である。

P.27

 

貴下の従順なる下僕 松崎より

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システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。