華やかな理想や長期の目標管理だけでは立ち行かなくなったときは、目の前の不安管理を始めてみると良い

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私の愛しいアップルパイへ

あなたは私のことを英雄ランスロットの生まれかわりだと思っていて、およそ誰もが感じるような人間的な不安とはまったく無縁だと思っているようですが、それは誤りです。

私は人生を賭して達成すべきミッションを掲げ、五年~十数年の個人的な計画を作っています。それを実現するための短期的な計画も作っていますし、進捗管理だって毎週のように行っています。

それでも時には、理想や目標だけではどうにもならなくなり、足取りが重くなることがあるのも事実です。そんなときには、無理に将来の不安や恐怖を拭い去ろうとせず、真正面から不安管理に取り組むと効果的です。

理想や目標だけでは立ち行かなくなったとき

初めてそう感じたのは去年の末、脱サラしてすぐの頃でした。もともと仕事や収入の具体的な計画もなく職を辞めたので、1ヶ月くらいかけて漠然とした不安にズブズブと埋もれ始めました。

そのとき私は目の前に転がっていた様々な活動に手当たり次第着手していました。やることは無数にありましたが、そのうち、今やっていることのほとんどは実はまったく成果につながらない仕事なのではないかという焦りが生じ始めました。そして、間違った方向に闇雲に時間を投じているのではないかという実体なき恐怖に囚われ始めました。

アイデアは無限にあるはずだと自分を奮い起こしながらも、かの非情なる現実が与えるプレッシャーに精神がすり減っていきました。

出口のない迷路をさまようような、窮屈で鬱屈とした毎日にうんざりし始めた頃、私が師と仰いでいる方から声がかかりました。「私は知っているぞ、若きjMatsuzakiよ。貴様の恐怖を、私は知っているぞ!答えが知りたくば会いに来い!」と。

何が不安なのか分からないことこそが問題

2人だけでじっくり話し合うのは初めてだったと記憶しています。他愛のない話を少ししてから、師は底の知れない黒々とした瞳を私に向けて、全てお見通しのように言いました。

「よろしい。若きjMatsuzakiよ、貴様がいま一番不安に思っていることを、そこの紙っ切れに10個書き出せ。今すぐにだ。

私は素直に従いました。咄嗟のことに動揺しながら、私はウンウンと唸りながらもどうにか3つか4つ書き出しました。その時の私の心境はと言えば、不安がいっぱいあるのは分かっているものの、自分でも不思議なことにそれが具体的に何なのかさっぱり分からない状態でした。悩む私を見た師がまた口を開きました。

「ほれ見たことか!若きjMatsuzakiよ、咄嗟に書けないということは真面目に考えていないということなのだ。貴様は不安を感じながらも、それに日常的に取り組んでいない!不安にどう対応するか考えるより前に、不安を真正面から捉え直さない限り、今後貴様の不安が掻き消えることはあるまい!

ごもっともの指摘に私は何一つ反論できませんでした。そして、こんな基礎的な部分でつまづいていた自分をひどく恥ずかしく感じたのを覚えています。それから、その場で師のサポートを受けながら、1つ1つ不安を書き足していきました。

▼そのときの実際のノート
10の不安

どうにか10個書き終えたのを見て師は言いました。

「それで良い。若きjMatsuzakiよ。いいか、よく覚えておけ。そこに汚い字で書かれた10の不安を突破することが、今の貴様にとってのゴールだ。10の不安が全て掻き消えたとき、新たなる道が見えるであろう。だから今はその10の不安から決して目を背けるな!

不安に真正面から取り組めば進むべき道ができる

その日、家に着く頃には、いつになく晴れやかな気分になっていました。ただ不安を書きだしただけで、それらはさほど大した問題ではないような気もしてきました。「ああ、やはり私の人生は喜劇に違いないんだ」という気分でした。

そしてこの晴れやかな気分を維持するためにも、最後に師に言われた通りこの10の不安から決して目を背けないと誓いました。私はこれからこの10の不安と寄り添って生活しようと。

そのために自分の中に以下3つのルールを課すことに決めました。

1.書きだした10の不安は、いつでもどこでも見れるようにすること
2.それぞれの不安に対しての対策を、毎月初めに検討すること
3.検討した対策の実績を、毎週末にチェックすること

私はすぐにExcelファイルに不安の内容を転記し、「突破すべき10の不安」というファイル名で保存しました。

▼そして、不安の内容の右側には「今月の対策」と「今週の実績」欄を設けました。以下が実際にその直後に作成したファイルです。
突破すべき10の不安

▼それから、毎月第一月曜日には先月分の実績を踏まえながら、次の一ヶ月間の対策を1つ1つ練っていく習慣を作ることにしました。あれからまもなく1年が経ちます。
「突破すべき10の不安」の履歴

▼以下は今月のファイルです。今では、10個中3つの不安は特別な対策を立てる必要がないくらいに小さな問題になりました。不安が消えたときの快感は格別です。
最新の「突破すべき10の不安」

夢や理想とは逆のアプローチから踏ん張る力を得る

夢や理想、長期の目標が発するパワーには驚くべきものがあります。ただ、ときにはそれらだけではどうにもならない時があるのも事実です。そんなときは逆のアプローチをするのが良いのかも知れません。目の前に転がる不安に真正面から取り組むアプローチです。

師の言うとおり、不安は真正面から取り組まない限り掻き消えることは無いのです。別のことで気を紛らわそうすればするほど、頭の端っこの方に根強く残ってしまうものです。そのうち、ブラックコーヒーに注いだミルクがいずれはコーヒー全体の色を変えてしまうように、不安と恐怖色に染まってしまうかもしれません。

私が書きだした「突破すべき10の不安」は夢・理想・目標と深く関連した内容になっていましたが、同時にそれらとはまったく違う、リアルで生々しい切り口で表現されたものになりました。夢や理想を思い描くだけでは思いつかないような、それでいて夢や理想に必要不可欠なような、そんな価値の高いものになりました。

10の不安をみごと突破したとき、師がどんな反応をするのか今から楽しみです :^D

貴下の従順なる下僕 松崎より

著者画像

システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。