18年前のギャルゲー「マブラヴ」を今さらプレイし始めた理由

私の愛しいアップルパイへ

2003年にâge(アージュ)からリリースされた成人向けゲーム(いわゆるエロゲー・ギャルゲーといわれるゲーム)に「マブラヴ」というゲームタイトルがあります。ヴィジュアルノベル形式のゲームです。

これを発売から18年ほど経った今プレイし始めてみたのであなたにご連絡しようと思った次第であります。

おっとお待ちください。まったく興味のない分野だからとカーソルを×ボタンに向かわせないでください! 実際、私自身もこの手のゲームはプレイしたことも、興味もありません。

私だって成人向けのエロティシズムに満ちた文章コンテンツといえば「隣の家の少女」くらいしか読んだことがないのですから。

どうやらこのゲーム、私たちにすばらしいインスピレーションを与えてくれる可能性を秘めているようです。

そういうわけで、今日は私が18年越しに「マブラヴ」なるゲームをプレイし始めることにした経緯についてまとめましょう。

ゲーマー界隈での異常に高い評価

2003年の発売当時、私はとあるPC版のFPSゲーム(Call of Dutyのような一人称のシューティングゲーム)で日本大会と世界大会の優勝に備えて日々チームメイトと鍛錬を積んでいました。

このころ、随分と長く時間をともにしてきたFPSゲーム仲間たちがこぞって絶賛していたのがこの「マブラヴ」でした。私も何人もの仲間たちに勧められたものです。

彼らが口をそろえて言うのは「エロゲー・ギャルゲーに興味がなくても絶対やった方がいい」というものでした。しかし、蛇のように賢い私はこの手のフレーズにはけっして騙されまいと幼少のころより心に誓って生きていたので、いつも一歩引いたところで話を聞いていました。

当時のFPSゲーマーというは私のような例外を除いてほとんどが大のゲーム好き・アニメ好きでしたから、その界隈のニュースはよく入ってきました。彼らからはFPSゲームに限らず多くのゲームやアニメなどサブカル系の情報を知りました。

そんな彼らの中でも「マブラヴ」に対する評価が異常に高かったのは傍から見ていてもよく分かりました。「そんな別のゲームの話などしていないで次の試合に向けて練習しろ!」などと感じることがあったくらいです。

「マブラヴ」に対する彼らの熱狂ぶりは今でも強く記憶に残っています。そのために、さほどその手の話に興味のない私が18年に渡ってタイトルを覚えていたくらいです。

しかし、私はゲームといえば今でもFPSくらいしかプレイしていませんし、いわゆるサブカル系のコンテンツにほとんど馴染みがないこともあって敬遠し続けていました。しかも内容が学園恋愛ものという一番毛嫌いしている類のもので、食指が動かなかったのです。

「進撃の巨人」作者が「マブラヴをパクった」と公言するほどの作品

18年も経つとカラーバス効果に近い現象が重なり、その後も「マブラヴ」の名を見聞きするたびに「また例のマブラヴか」と感じるようになっていました。

決定的であったのはこの4月に最終回を迎えた漫画「進撃の巨人」の作者である諫山創氏が「マブラヴ」に強く影響を受けたと公言していたことです1。ファンの間ではこの話は結構有名な話で、私も存じ上げていました。しかも、この漫画は私が毎月連載を追っていた数少ない作品であったため俄然興味が湧いてきたのです。

進撃の巨人への影響というのも想像以上に大きかったようで、作者である諫山創氏をして「マブラヴをパクった」といわしめるほどです。作り手がこのような発言をするのは相当な影響というか、その作品には敵わないとある種の諦めを感じるほどの気持ちがなければ出てこないものです。

(ちなみにやや無粋ながらも補足しておきますと、マブラヴの内容は進撃の巨人とは全く異なるので、最大級の賛辞として”パクった”と表現したのでしょう)

以下は諫山創氏が漫画版「マブラヴ オルタネイティヴ」の7巻の末尾に寄せた本人のコメント全文です。2

『進撃の巨人』は『マブラヴ オルタネイティヴ』を
パクって作ったことを白状しなければなりません。
本当にすいませんでした! ものすごく影響を受けてます!

人並みに漫画や映画を観ていましたが、
作品の作り手に殺されると思ったのは始めてです。
その悪意的姿勢に衝撃を受け、僕も自分が殺されたように、
世間に何か強い衝撃を投げつけてやりたい、
壊してやりたいといった衝動に駆られました。

その衝動が自分のやりたいことだと気付いたのです。

マブラヴ オルタネイティヴ(7)

※文中の「マブラヴ オルタネイティヴ」はマブラヴ本編を構成する3部作のうちの最終章にあたる作品です。

このコメントは2014年に開催された「進撃の巨人展」でも言及されています。

まったくすばらしくインパクトのあるコメントです。特に私は“作品の作り手に殺されると思った”という箇所を大層気に入りました。そこまで言うのであればと観念しました。

それに、進撃の巨人のような優れた作品に強いインスピレーションを与えたのであればさぞ衝撃的なのであろうと考え、願わくば私も音楽作品を作る身としてそのような衝撃的な体験をしてみたいと感じたのです。

かくして、進撃の巨人が完結したタイミングで18年越しに「例のマブラヴ」をプレイし始めてみることにしました。

ゲーム配信プラットフォームSteamでの異常に高い評価

権利の問題から「マブラヴ」を購入できるゲーム販売プラットフォームはこの18年でいくつか変遷があったようですが、現在はゲーム販売プラットフォームの世界最大手であるSteamから購入できます。

購入にあたってSteamの評価を見たのですが、398件のレビューのうち95%が「好評」のレビューをつけているなど、その評価の高さが分かります(2021年4月現在)。

Steamの購入ページにも引用されているイギリスのゲームレビューメディア「DualSHOCKERS」は、本作に10点満点中9点をつけた上でこのように評しています。3

Muv-Luv and Alternative will gradually push you to the ropes with an innocent smile, and then repeatedly punch you in the heart with unprecedented savagery.

(『マブラヴ オルタネイティヴ』は、無邪気な笑顔で徐々に我々を追い詰め、今までにない残虐さで心臓を何度も殴りつけてくる作品だ)

Muv-Luv + Muv-Luv Alternative Review — Emotional Roller Coaster Between Hope and Despair | DualSHOCKERS

なんともSweeeeeet!なコメントじゃありませんか。

偶然のも諫山創氏のコメントにある“作品の作り手に殺されると思った”とよく似たコメントになっているのが興味深いところです。購入直前にこのコメントを読んで、私も作品に殺されかけたいと胸が高鳴りました。

第一部を少しだけプレイした感想

そのような訳で18年越しにマブラヴをプレイし始めて少し経ちました。その感想はというと、正直なところ少し困惑しています

というのも、(第一部は学園恋愛ものとは聞いていたものの)同じ学校に通う幼馴染の女性が、主人公の名前を呼びながら朝ベッドの上で馬乗りになって起こしにくるところから始まるのです。

そして翌日、目を覚ましたらその自分のベッドに見知らぬ美少女が寝ています。驚いたのもつかの間、学校に登校したらなんとというかやはりというか、彼女が転校生として同じ学校に入学し、席は隣なのです。とにかくジョン・ウェインの西部劇より陳腐なのです。

とはいえ、これも壮大なフリにすぎないことは風の噂に聞いています。ここからどんなどんでん返しが待っているのか今から楽しみにしつつ学園恋愛ドラマをどうにか乗り越えようと思っている次第です。

マブラヴの購入方法

最後に、せっかくならあなたも私と同じタイミングでマブラヴをプレイしたいと思っているでしょうから、購入方法をお知らせしてこの記事の締めくくりとしましょう。

※ちなみに、マブラヴには一部エログロ表現が含まれていますので、その手の表現が苦手であればご注意ください

マブラヴ PC版(ダウンロード版)を公式に購入する方法は現在Steamを使う方法に限定されます。

マブラヴ本編は「EXTRA」「UNLIMITED」「ALTERNATIVE」の三部作からなり、ゲームタイトルとしては2本に分けられています。

「マブラヴ」には最初の2つが収録されており、「マブラヴ オルタネイティヴ」には最後の1つが収録されています。そのため、本編すべてをプレイするには次の2つのタイトルを購入する必要があります。

なお、Steamで購入できる「マブラヴ」の中身は、2003年当初に発売されたパッケージ版のエログロ表現を控えめに修正した全年齢対象版として再販売されたものとほぼ同じ内容になっているようです。(Steam版はエロ表現のみ修正して、グロ表現は緩和されているとの噂もあります)

注意点として、Steam版はWindows PCでしか動作せず、macOSなどではプレイできません。ちなみに私はMacユーザーなので、マブラヴ用にAWS WorkSpaces上でWindows 10の仮想マシンを立ち上げてプレイしています。

リリース当初のオリジナルのマブラヴをプレイしたい場合にはAmazonなどでパッケージ版を購入する必要があります。

なお、全年齢対象版はXbox360、PS3、PS Vitaなどのコンシューマ機でもプレイできるようです。

また、同じシリーズの漫画版小説版も存在します。そしてなんと2021年にはテレビアニメ版の放送も予定されているそうです。

そういうわけで、ご興味が湧いてきたようであれば、ぜひ一緒にプレイしましょう。最後まで読んでいただき、そなたに心よりの感謝を!

貴下の従順なる下僕 松崎よ

参考文献

  1. 「進撃の巨人」諫山創インタビュー – 勝手に読書伝説 創刊号, ひかりTVブック, Jun. 01, 2013.
  2. 蒔島 梓 and アージュ, マブラヴ オルタネイティヴ(7). 電撃コミックス, 2016,
  3. Nelva Giuseppe, Muv-Luv + Muv-Luv Alternative Review — Emotional Roller Coaster Between Hope and Despair, DualSHOCKERS, 2018.
著者画像

システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。