我が音楽の核にあるのは、いま生きることに熱狂すること

3_w600

私の愛しいアップルパイへ

私が常に考えているのは、音楽において理論的な音の並びの精巧さだとか、音のパターン化とカテゴリ分けだとか、外見的な華麗さというものは、多くの人が考えるより重要なことではないということです。その音楽の核になっているものが何かに比べれば。

大切なのはどんな音が鳴っているかより、どこから音が鳴っているか。表現されたそのものより、その表現の出発点になにがあるのか。この信念が第一の創造なのです。この第一の創造をおざなりにすると、音楽はアイドル化して一時的なものになって、芸術的価値が失われてしまうでしょう。

作曲において、つい作品の表面的な音の並びを組み立てるだけで満足して、その根底にある信念について無自覚だったりってのはありがちな罠です。

しかし、音色も旋律も副旋律も旋法も和音も和声もコード進行も楽器も演奏法も、二次的な創造に過ぎないのです。私は鼻が利くほうです。出発点となる信念に無自覚な数多くの音楽がいかに乾いて聴こえることか!

音楽の原動力となった我慢先行の性格

私が最初に音楽家になりたいという夢を持ったのは小学生高学年の頃でした。その原動力はそれまでに構築してきた性格によるものでした。

私は幼い頃から他人の顔色を伺うのが誰よりも得意でした。そして他人に合わせたり、他人の評価を良くしたり、他人に与える印象を良くしようと必死になりました。私はその場の空気や暗黙の了解や常識や文化や権威やマナーといったものを感じ取って、最も失敗のない無難な選択をするのが得意でした。

こんなエピソードがあります。あれは確か3歳か4歳くらいの頃です。ある日、私は両親とヒーローショーを観にいきました。私は大好きなヒーローを生で観れることを心底楽しみにしていました。そのヒーローショーでは、最初に怪人が出てきて舞台で暴れまわり、観客席の子供を3人ほどさらってくる(ステージまで連れてくる)という展開でした。

嫌な予感はしていました。私はみごとに怪人に連れ去られる子供に抜擢されたのです。そうなると私はもう我武者羅に泣きじゃくり、必死に母親にしがみつきました。数分後、私を連れ去ろうとしていた怪人はついに諦め、別の子供のところへと向かいました。そのとき私は九死に一生を得たように、心底ホッとしたことを覚えています。

なにがそんなに恐ろしかったのか?まわりの大人達は勘違いしていたようですが、決して怪人が恐かったわけではありません。私が本当に恐ろしかったのは、他のテーブルの子どもとその親たちの視線でした。私がステージに上って脚光を浴びることで、選ばれなかった子どもとその親に嫉妬されることが恐かったのです。「自分の子供を差し置いてステージに上がるなんてふてぇ野郎だ」って思われるのが恐かったのです。

私は舞台に上がることより、嫉妬されることの方が恐ろしかった。とても耐えられる気がしなかった。この性格は長いこと私の重要な行動指針になりました。それは我慢先行の人生です。いま自分が我慢して、慎ましく生きていれば、あとで良いことがあるって考え方です。

いま我慢して授業を受ければ、放課後は目一杯遊べる。いま我慢して受験勉強すれば、楽しい学生生活を送れる。いま我慢して就職活動すれば、安心と安定の仕事につける。いま我慢して働けば、セカンドライブを楽しめる。

我が音楽の核にあるのは、いま生きることに熱狂すること

いま自分が我慢すれば良いのだとする我慢先行の人生は概ね狙い通りに機能しました。私は小学校を卒業し、中学校を卒業し、高校を卒業し、無事に就職し、だいたい思った通りの安心と安定の生活を手に入れました。唯一欠点だったのは、私にとって人生というものがあまりに窮屈だったということです。

ですから、小学生の頃に音楽に出会って、訳も分からず引きこまれました。なぜなら、ひどく窮屈なはずの人生のなかで、私の愛した音楽家たちだけは解放的に見えたからです。音楽家たちだけは自分の衝動に従順で、自分の情熱に従順に見えたのです。いま我慢すべきなはずなのに、彼らだけはいま生きることに熱狂していました。

まっとうに考えればみっともなくて、恥ずかしいことをしているはずなのに。彼らはなぜかくも人の心をとらえるのか。かくも窮屈な人生のなかで、なぜ彼らだけはあんなにも生き生きとして自由で解放的なのか。私は魅了されました。そしていつしか、私も彼らのようになるんだという強い使命感を持つようになったのは、偶然ではなく必然だったのでしょう。

我慢して自分を殺すより、衝動と情熱を噴火させて、自分の人生をBurning!させること!これが私の愛する音楽家たちから受け取ったメッセージです。そして不遜にも、今度はそれを私からあなたに伝えようって魂胆です。フシシ :^]

▼そうだ、せっかくですから製作中のニューアルバム「EatShit」の中から、少しずつかたちになってきたソングを1つ、歌詞とともにお届けしましょう。

クソ不誠実で、クソ不道徳で、クソ不健全で、クソ不親切で、
クソ不健康で、クソ不寛容で、クソ不公正で、クソ不条理

ヘイ、マン!

クソ不誠実で、クソ不道徳で、クソ不健全で、クソ不親切で、
クソ不健康で、クソ不寛容で、クソ不公正で、クソ不条理
クソ不快で、クソ不穏で、クソ不潔で、クソ不真面目

ヘイ、マン!そいつが俺の呼び名だ!

(狼の如く) ハッハッハッハッ ベロベロベロベロ
(狼の如く) ハッハッハッハッ ベロベロベロベロ

クソ不吉で、クソ不埒で、クソ不当で、クソ不正で
クソ不誠実で、クソ不道徳で、クソ不健全で、クソ不親切で、
クソ不健康で、クソ不寛容で、クソ不公正で、クソ不条理
クソ不快で、クソ不穏で、クソ不潔で、クソ不真面目

ヘイ、マン!そいつが俺の呼び名だ!
ヘイ、マン!そいつが俺の呼び名だ!

貴下の従順なる下僕 松崎より

著者画像

システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。