250点もの作品が並ぶ10年ぶりのダリ展は本当によかった!12月12日まで開催されてるよ!

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私の愛しいアップルパイへ

私がいつもマンションの片隅で蛹みたいになっていると思ったら大間違いです!この前ダリ展に行ってきました。以前から画家のなかではフランシス・ベーコンに次いでサルバドール・ダリが好きで、画集を買ったりインターネットで画像を集めたりしたものです。

前回上野で開催されたダリ回顧展以来、10年ぶりとなる本格的なダリの回顧展が2016年12月12日まで乃木坂・六本木にある国立新美術館で開催されているということで、馬を走らせてきました。

シュルレアリスムを代表する画家、サルバドール・ダリ

サルバドール・ダリといえば誰でも名前くらいは聞いたことがあるくらい有名な画家です。チュッパチャップスのロゴを描いた人物でもありますので、そういう意味ではほとんどすべての日本人がダリの作品を観たことがあるでしょう。

サルバドール・ダリはシュルレアリスムを代表する画家として知られています。シュルレアリスムは1924年にアンドレ・ブルトンによって提唱されたもので、詩人を中心に広まった芸術運動でした。この運動は絵画にも大きな影響を及ぼし、サルバドール・ダリをはじめ、マックス・エルンストやルネ・マグリットなど多くの有名画家が属していました。

シュルレアリスムは日本語では「超現実主義」と訳されますが、その語から浮かんでくる「神秘」「幻想」「現実離れ」「異世界」といったイメージとは少々異なります。シュルレアリスムは人間の無意識のうちに存在する世界を描くことを目指しており、そういう意味では「神秘」「幻想」の世界よりずっと人間的で現実的といえるでしょう。

目の前に広がる物質的な現実世界を超えて存在する無意識の世界を描いているため「超現実主義」ということになります。

ダリの多岐にわたる表現活動を一通り堪能できる企画展だった

今回のダリ展は250展ものダリの作品が展示されており、ダリが残した多岐にわたる表現活動を一通り堪能できる満足度の高い企画展でした。

ダリは多作で知られ、絵画にとどまらず多岐にわたる表現技法に挑戦した画家でした。当時発明されたばかりだった映画を使った表現、舞台演出、衣装、ジュエリー、インテリア、アニメーション、立体、空間演出など様々な表現技法を試しています。

それらすべての作品を一箇所で観られるということはまずないのですが、今回のダリ展ではそのなかのかなりの種類の作品を鑑賞することができました。

まず展示のはじめにはダリが10代の頃に描いた初期の作品を閲覧できます。この頃の作品はダリを知るには欠かせない時期の作品です。というのも、ダリは初期の頃に数多く過去の他人の作品を模倣していたことがわかるからです。

シュルレアリスムが生まれる前に起きたキュビズムやフォーヴィスムをはじめ、印象派のような作風やバロック様式など、幅広い作風を模倣しながら吸収していたことがわかります。シュルレアリスムの代表的な画家として、ダリが独自性の高い作品を職人的な技術で描いた背景には、こういった修練の積み重ねがあったことがわかります。

続けてシュルレアリスム時代の作品に入っていくわけですが、ここでは数々の代表作が展示されていてダリ好きには堪らない空間になっています。「奇妙なものたち」をはじめ、ダリの画風が炸裂した作品を堪能できます。

また、ダリの名を一気に轟かせることになるルイス・ブニュエルと共同で制作した映画作品「アンダルシアの犬」の放送もされていました。

1940年、ダリは第二次世界大戦の戦火を逃れるためにアメリカに亡命しますが、この頃から作風と表現形式がさらに拡張されていきます。宝飾品や舞台芸術、映画作品やアニメ作品の制作に参加しはじめます。

今回の回顧展ではこの頃に創られた作品の上映や、デッサンなども充実しており、ダリの作品を一通り堪能できる満足度の高い企画展でした。

実験と一貫性で人を魅了する奇才

絵画にあまり興味がないという人でもダリという画家に魅了されてしまうことはよくあることのようです。ダリの表現活動というのはそれだけ刺激的で、普遍的な魅力があるのだと感じます。

ダリの大きな魅力の1つはその実験的な精神でしょう。古典的な絵画の技法を身につけつつも絵画という幅にとどまらず、当時最先端の技術であった映画やアニメーションといった分野、芸術家があまり足を踏み入れない宝飾品やインテリアといった分野にも積極的に手をかけました。

ダリの尽きることのないクリエイティビティとチャレンジ精神には大いに刺激を受けます。

そしてもう1つの大きな魅力は、作品の一貫性です。先述した通りダリは多岐にわたる表現手法を駆使しましたが、その根底には常に一貫したメッセージがあったように思います。それは、目の前に広がる世界以上に、自分の中に無限の世界が広がっているのだというメッセージです。

おそらく時代的にも「アンチテクノロジー」や「アンチアカデミズム」の思惑があったことでしょう。ダリの絵画を観ると、日常ではつい忘れがちな自分の内側に広がる無限の世界を思い出させてくれます。ダリという画家は徹頭徹尾、物質的で表層的な世界を超えて存在する”理外の理”の表現を追求した画家だったといえましょう。

ダリ展は2016年12月12日まで!お見逃しなく!

今回のダリ回顧展は前回から10年ぶりの開催です。次回はいつになるかわかりませんので、ぜひこの機会に観にいってみてください。

▼東京での展示は2016年12月12日(月)までです。

貴下の従順なる下僕 松崎より

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システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。