クエンティン・タランティーノ監督の代表作ランキングと関連作品14作品を一挙紹介

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私の愛しいアップルパイへ

クエンティン・タランティーノ監督といえばグルメなことで知られるこの私が尊敬してやまない監督のうちの一人であることはご存知でしょう。ハニーバニー。

脚本家出身のタランティーノ監督ですが、本人が監督した作品は9つあります(2019年時点)。あなたもタランティーノ監督作品を観たいということですから、タランティーノ監督作品9つのランキングと、タランティーノ監督が携わった作品のおすすめ5作品をご紹介しましょう。

クエンティン・タランティーノ監督作品Best9

9位:キル・ビル Vol.1 & 2(2003-2004)

タランティーノ監督作品の4作目にあたるオタク趣味が爆発した作品が「キル・ビル」でしょう。タランティーノ監督作品として。ブルース・リーのコスチュームに身を包んだブロンド娘が日本刀を持って暴れまわるという、狙いすましたB級感が爽快な作品です。邦画ネタも豊富で日本人にとっては嬉しい作品でもあります。

本作はボリューム満点の二部作になっていて、Vol.1 & 2に分かれています。どちらもタランティーノ監督作品常連の俳優陣が多く出演していてファンには堪らない作品になっています。

そのB級感やマニアック過ぎて伝わらないネタも多く、初見では入り込みづらいのでランキング上はこの位置。

8位:デス・プルーフ in グラインドハウス(2007)

「デス・プルーフ」はタランティーノ監督作品5作目にあたる作品で、グラインドハウス映画へのオマージュとして捧げられた作品です。グラインドハウスとは、キワモノなB級映画を2~3本立て続けに放映するガラの悪いアメリカの映画館の俗称です。タランティーノ監督が好む古き良きB級映画を自分で作ろうという趣味全開の一作になっています。

とはいえ、主人公にカート・ラッセルを据えたり、凝りに凝ったゴア表現で魅せてくれたりと、映画としての魅力は十分にあります。

7位:ジャッキー・ブラウン(1997)

「ジャッキー・ブラウン」はタランティーノ監督作品3作目にあたる作品で、犯罪サスペンスものです。中年スチュワーデスのジャッキーが、一攫千金を目指してあるプランを実行に移すことで発生するドタバタを軸に物語が展開していきます。

ジャッキー・ブラウン役のパム・グリアをはじめ、サミュエル・L・ジャクソン、ロバート・デ・ニーロ、ブリジット・フォンダ、マイケル・キートン、クリス・タッカーなどの濃い役者陣が絡み合って上質の群集劇をみせてくれます。佳作!

6位:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019)

現在の最新作となるのが長編9作目となる「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」です。

タイトルは「むかしむかしハリウッドで…」ということで、古き良き60年代末のハリウッドを舞台に、ハリウッド黄金期の再現に徹底的にこだわった一作となっています。

かつて西部劇のテレビシリーズでスターだったリック・ダルトンが、スタントマンであるクリフ・ブースと共に再ブレイクを目指してハリウッドにやってきます。ヒッピーが闊歩する時代で、そのなかにはかの悪名高いチャールズ・マンソンも居ます。

二人の主人公を中心に、虚実を織り交ぜながらタランティーノ監督のありったけの映画愛を詰め込んだ胸の熱くなる一作です。

ただし、当時の時代背景や実在の人物に関する事前知識がなかったり、他のタランティーノ監督作品を観ていないといまいち本作の熱さが分からないと思うので、上級者向けということでランキングとしてはこの位置。

【ネタバレなし】ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドを観た感想。まさかタランティーノ監督作品で泣くとは…

5位:ジャンゴ 繋がれざる者(2012)

ここからがBest5ということになります。ここから先はどれも甲乙つけがたいです。ということでかなり迷いましたが、第5位は「ジャンゴ 繋がれざる者」!タランティーノ監督作品の7作目です。7作目となる本作はまさかの西部劇でした。

タイトルでピンとくるかもしれませんが、特に西部劇のなかでも奇をてらう設定が光る「マカロニ・ウェスタン」へのオマージュが多く含まれていて、タランティーノ監督の映画オタクっぷりが気持ち良い作品です。とはいえ、映画としてのクオリティは最高で、西部劇に馴染みがなくても楽しむことができますし、映画ファンでも楽しめます。

主人公のジェイミー・フォックス、クリストフ・ヴァルツをはじめ、サミュエル・L・ジャクソン、レオナルド・ディカプリオなどの濃い役者が織りなす物語、まったく先の読めない展開、映像美、セリフなど実に完成された逸品です。ブライアン・デ・パルマ監督の「スカーフェイス」やサム・ペキンパー監督の「ワイルドバンチ」を彷彿とさせるド派手な撃ち合いは必見!

4位:イングロリアス・バスターズ(2009)

第4位はタランティーノ監督作品の6作目となる「イングロリアス・バスターズ」!妥当ナチス・ドイツを目指す秘密部隊「バスターズ」とナチスとの戦いを描いた作品なのですが、歴史無視の歴史ものというタランティーノ監督らしいとても挑発的な作品です。

タランティーノ監督自身このイングロリアス・バスターズについて「映画を型にはめるつもりはない」と話しているとおり、第二次世界大戦を題材にしながらも物語は斬新で、型破りで、清々しい作品として完成された逸品に仕上がっています

ブラッド・ピット率いるバスターズ、ナチスを演じるクリストフ・ヴァルツ、ナチスを恨むメラニー・ロランなどタランティーノ監督作品らしくみんながみんな魅力的で大作ながらも飽きさせません。

3位:ヘイトフル・エイト(2015)

第3位は現時点での最新作であり、8作目となる「ヘイトフル・エイト」です。現代でも斬新だと思えるマカロニ・ウェスタンを蘇らせた映画愛に溢れる一本でもあります。

単に古き良き映画としてだけでなく、現代でも斬新だと思えるマカロニ・ウェスタンを蘇らせたところが素晴らしいのです。まず注目すべきは主人公が年老いた黒人である点。これはウェスタンとしてはとても斬新です。そして、舞台も牧歌的な雰囲気が漂う牧場や街でなく吹雪に囲まれた雪小屋という斬新な設定。

雪小屋という密室で繰り広げられる登場人物間の駆け引きに重きを置いた濃厚な映画です。登場人物はみんなオヤジか姉御ばかりのむさ苦しい8人というところも作品の重厚さに貢献しています。

マカロニ・ウェスタンにサスペンス要素をブレンドする実験的な試みによって、息をのむほどの緊張感を生み出すまったく新しい形のマカロニ・ウェスタンに仕上がっています。

配役も最高で、サミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、ティム・ロス、マイケル・マドセン、ウォルトン・ゴギンズ、ジェニファー・ジェイソン・リー、そしてジョン・ウェインを殺した男として有名なブルース・ダーン。誰が生き残るかさっぱり読めない最強といえる配役でしょう。

しかも劇中の音楽はまだ生きていて現役なことが不思議なマカロニ・ウェスタンの伝説の巨匠エンリオ・モリコーネ

「ヘイトフル・エイト」は古いのに新しい素晴らしき傑作です。これは映画好きなら観ないと損!

▼さらなる詳細は以下の記事をお読みください。

2位:レザボア・ドッグス(1992)

第2位はタランティーノ監督の長編デビュー作であり、代表作の1つでもある「レザボア・ドッグス」です。

宝石強盗のために集められた男たちですが、強盗は警察に察知されて大失敗。失敗の原因を探っていくうちに、強盗団のなかに1人警察の犬が混ざっていることに気づいて…!といったストーリー。それぞれの思惑が絡まり合い、話は緊張感を保ったまま二転三転していきます。ハラハラしながら画面にかぶりついてしまいます

いわゆるマフィア映画によくある男たちの絆といった要素は強くありませんが、ギャングが自らのプライドをかけてやる汗臭いやり取りが最高に痺れます。ギャング映画の金字塔といえる作品です。

豪華なセットなどなくても、物語、演技、対話だけでここまで面白い映画がつくれるのかという驚きに満ちた作品です。そういう意味では現代版「十二人の怒れる男」といってもいいかもしれません。

また、登場人物はスーツを身にまとったおっさんだけ。ブロンド美女を起用してドーパミンをドバドバ出そうとする小手先のテクニックは一切ありません。これも物語、演技、対話の3拍子がそろった本当に面白い映画でなければ成り立たないものです。これは同じく少ない場面でおっさん達だけで最高に面白い映画を撮ってしまったジョン・カーペンター監督の「遊星からの物体X」に通ずるものがあります。

映画オタクでなくても、一度観ればとにかく面白くてハマってしまう傑作です。

1位:パルプ・フィクション(1994)

堂々の第1位はタランティーノ監督の代表作品であり、最高傑作の呼び声高い「パルプ・フィクション」でしょう。タランティーノ監督作品としては2作目にあたります。この作品でタランティーノ監督を知った人も多いはずです。

「パルプ・フィクション」というのは、パルプ紙(紙の質の悪い低俗な雑誌のことを指す)に掲載されたフィクション小説のことをいいます。つまり、本作が大げさなメッセージ性を持たない俗物的なギャング映画であることを皮肉っぽくタイトルで言い表しているわけです。

では、メッセージ性を持たないパルプ・フィクションが描いているのは何でしょうか。それは、群集劇です。登場人物の1人1人が自在に行動することで生まれる上質な群集劇です。ベタな予定調和のない、本当に面白い群集劇です。登場人物全員がとにかく格好いい。そしてこれがタランティーノ監督作品の一番の特徴でもあります。

映画のなかには大上段にかまえて仰々しいメッセージをこれでもかと伝えようとしてくる作品があります。それが「深い」とか「すごい映画だ」なんていわれて高く評価されたりするわけです。しかし、映画というものの本質を考えればメッセージ性よりも人間の生々しい仕草や会話、人間同士のやりとり、人間関係のリアリティこそが映画を彩る最重要な要素でしょう。

人はもっと無駄な話をするし、的はずれな意見もいうし、関係ない噂話もするし、誰が良くて誰が悪いかは曖昧だし、結末らしい結末だって存在しないでしょう。パルプ・フィクションはそれを映画でみごとに表現した、ポピュラー映画に一石を投じる挑戦的な作品といえます。

そういう意味で、パルプ・フィクションはメッセージ性を徹底的に省いて「低俗でくだらない話」に終始することで、映画の本当の面白さを思い出させてくれる”ほんもの”の映画といえるでしょう。

▼さらなる詳細は以下の記事をお読みください。

タランティーノ脚本作品のおすすめ

タランティーノ監督は脚本家としても活躍しており、脚本として参加した作品にも多くの傑作があります。ここではタランティーノ監督が脚本に携わった作品のなかでも特にオススメの作品をご紹介しましょう。

ナチュラル・ボーン・キラーズ(1994)

「ナチュラル・ボーン・キラーズ」はタランティーノが脚本を務め、ウォール街」や「プラトーン」や「JFK」で知られるオリバー・ストーンが監督を務めた夢の共演といえる作品です。オリヴァー・ストーン監督が脚本を大幅に変更したことでタランティーノが激怒したという話もありますが、作品自体は大変面白いのでオススメです。タランティーノ監督ファンなら存分に楽しめるはずです。

ストーリーとしてはシリアルキラー化したカップルの逃避行で、「地獄の逃避行」に触発された作品になっています。主演のウディ・ハレルソンとジュリエット・ルイスが最高にセクシーで観てて飽きません。ロバート・ダウニー・Jr、トミー・リー・ジョーンズ、トム・サイズモアといった豪華俳優陣の共演も見逃せません。

レザボア・ドッグスで名前だけ出てくるキャラクター「スキャグネッティ」が登場するなど、タランティーノ監督ファンにとっては見逃せない設定もあったりします。

本作のテーマは個人的な暴力と国家的な暴力との対立で、たった二人のシリアルキラーが国家的な暴力を超えてしまうある種の革命を描いた胸がスカッとする爽快な作品です

トゥルー・ロマンス

トップガン」や「クリムゾン・タイド」、「デジャヴ」などで知られるいまは亡きトニー・スコット(リドリー・スコット監督の弟です)が監督を務め、タランティーノが脚本を務めたのが「トゥルー・ロマンス」です。こちらも夢の共演!

こちらも「地獄の逃避行」の影響がみられるカップルの犯罪ものですが、こちらはカップル vs マフィアという構図のなかで話が展開するので、また違った趣があります。「ナチュラル・ボーン・キラーズ」よりも”遊び”が多い感じで味わい深い作品に仕上がっています。

こちらも豪華俳優陣でかためられていて、クリスチャン・スレーター、デニス・ホッパー、ブラッド・ピット、クリストファー・ウォーケン、ゲイリー・オールドマン、サミュエル・L・ジャクソン、トム・サイズモア、クリス・ペン、ヴァル・キルマーなどが出演しています。個人的にはクリスチャン・スレーター vs ゲイリー・オールドマンや、デニス・ホッパー vs クリストファー・ウォーケンなど胸が熱くなるシーンが盛り沢山です。

ちなみにコミック・ショップに務める主人公はタランティーノ監督自身を投影していたりと、こちらもタランティーノ監督ファンには嬉しい設定が散りばめられています。

クリムゾン・タイド

トニー・スコット監督が「トゥルー・ロマンス」の次に手掛けたのがこの「クリムゾン・タイド」です。タランティーノも脚本に名を連ねます。

冷戦後の世界を舞台に、弾道ミサイル原子力潜水艦という密室で発生するドラマが軸となるテーマです。レーダー越しにしか敵の観えない深海での戦闘や、黒人差別の問題、潜水艦内での複雑な規律とミサイル発射までの複雑な手順などが複雑に絡み合って、息を呑む展開が続きます。

権威の象徴である役のジーン・ハックマンと、叩き上げの象徴である役のデンゼル・ワシントンとの対決の描写はみごとの一言。完成度のものすごく高い映画です。

フロム・ダスク・ティル・ドーン

互いにブラザーと呼び合う仲のロバート・ロドリゲスが監督をし、タランティーノが脚本を書いたのがこの「フロム・ダスク・ティル・ドーン」です。

完全に趣味で作ったかのようなB級ゾンビ映画という奇をてらった一作です。ハロウィンの時期にはもってこいの作品に仕上がっています。

主演はジョージ・クルーニーで、その弟役をクエンティン・タランティーノ自身が務めます。共演はハーヴェイ・カイテル、ジュリエット・ルイス、サルマ・ハエック、ダニー・トレホと、B級ゾンビ映画ながらも配役は豪華。タランティーノの世界観とゾンビ映画が好きながら見て損はありません。

シン・シティ

ロバート・ロドリゲスとコミックライターで知られるフランク・ミラーが監督を務めたのが「シン・シティ」です。クエンティン・タランティーノは特別ゲストとして一部のシーンだけ監督しています。

作品としてはフランク・ミラー監督の原作を映画化したものですが、アメコミが映画とセンスよくブレンドされていて、よくある子供向けのアメコミ映画とは一線を画した作品になっています。

タランティーノ監督はほんの一部だけを担当したようですが、その担当箇所はサム・ペキンパー監督の「ガルシアの首」をオマージュしたもので、タランティーノ監督らしい渋い出来に仕上がっています。ちなみに、アナログ主義のタランティーノ監督がバリバリCGを駆使した作品の監督をしたという点にといて、タランティーノ監督ファンとしては興味深い一作でもあります。

作品全体としては、タランティーノ監督やロバート・ロドリゲス監督が好きであればおそらくかなり好きなはずです。例えるなら、アメコミ版「パルプ・フィクション」といった作風で見ごたえがあります。

(追記)新作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」日本公開は2019年8月30日!

さらに現在はタランティーノ監督の長編9作目となる新作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」(原題:Once Upon a Time in Hollywood)が公開予定となっています。

しかも本作はタランティーノ監督本人へのインタビューで今までで一番「パルプフィクション」に近い作品と謳っていることもあり、期待が高まります。

今回も映画ファン歓喜の骨太な一本になりそうですので楽しみです。

▼以下の記事に映画が公開されたら100%楽しめるよう事前知識をまとめましたのでご覧ください。

タランティーノ監督の新作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を100倍楽しめる事前知識を整理!現在映画館で上映中!

上質な群集劇に酔いしれろ!

人間性を引き立てて予測不可能な群集劇を描かせたらクエンティン・タランティーノ監督の右に出る者はいないでしょう。徹底的に人にフォーカスしたタランティーノ監督作品は何回観ても楽しめます。

特にBest5以内で観たことのない作品があったならぜひ鑑賞してみてください。オススメ!

▼最後にもう一度ランキングを貼っておきます。

▼脚本作品集はこちら。

貴下の従順なる下僕 松崎より

著者画像

システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。