映画オタクも納得できる本当に面白い海外ドラマBest3

私の愛しいアップルパイへ

私はあなたもご存知の通りに映画オタクで、小学校に上がる前にアーノルド・シュワルツェネッガー主演のアクション映画を観て以来、我が人生は映画とともにありました。

学校にウンザリして全てを投げ出したくなったときはゴダールの「気狂いピエロ」に慰められたものですし、もっと良い育ちだったら俺の人生も変わっていただろうと肩をすくめたときにはルキノ・ヴィスコンティの「山猫」に慰められたものですし、ええい俺だって何か1つやってのけてやらぁと立ち上がった時はサム・ペキンパーの「戦場のはらわた」に慰められたものです。

そんな私もたまには気分転換に海外ドラマを観たりもするのですが、その出来の悪さには昔からウンザリしています。

24だのプリズン・ブレイクだのロストだのウォーキング・デッドだのとそれら諸々のコピー品たちによる、長々と型にはまったやりとりと予定調和を繰り返してただ好奇心をくすぐろうとするような浅ましいやり方は、タルコフスキーの長回しよりずっと退屈です。

しかもそれが2時間ではなく、シリーズ通して十数時間も続くのですから、ハズレを引いたときのガッカリ感は映画の比ではありません。

映画も歴史が浅いですが、海外ドラマの形式はさらに歴史が浅く、まだまだ玉石混淆どころか石ばっかりというのが本音でしょう。

そこで聡明なあなたは「映画オタクでも唸ってしまう本当に面白い海外ドラマだけ教えてくれたらいいのに」と思うでしょう。今日ついに私は私という人間が存在する意味を理解しました。

映画オタクも納得できて本当に面白い海外ドラマBest3

デヴィッド・リンチのイカれた世界観が堪能できる「ツイン・ピークス」

まずもってご紹介したいのは、もはや伝説となりつつあるデヴィッド・リンチ監督の「ツイン・ピークス」でしょう。ドラマシリーズにもかかわらず、デヴィッド・リンチ監督らしいシュルレアリスムな表現は健在で、1990年の作品でも他の海外ドラマとは一線を画した作品となっています。

一癖も二癖もある人々と、いくつかの人間ではない人々と、現実と混沌が交差するそのやり方にはうっとりします。

ドラマ版ツイン・ピークスの謎を解き明かすとして公開された映画版の「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」も含めて、デヴィッド・リンチ監督らしいユーモアが最高のシリーズになっています。

最近では、劇中で登場人物によって語られる「25年後に会いましょう」の言葉通り、映画版の公開からちょうど25年後となる2017年に突如として「ツイン・ピークス The Return」をリリースしてダイハードなファンたちを驚かせました。

このあたりのデヴィッド・リンチ監督らしい狙いすましたような突拍子のなさが魅力の作品です。

自称海外ドラマ好きで「ツイン・ピークス」を観てない人はもうモグリ認定してしまって良いでしょう。

▼作品としては1990年のシーズン1、シーズン2。

▼それから1992年の悪名高い映画版。

▼そして、最近公開された2017年のThe Returnがあります。
ツイン・ピークス The Return|ドラマ|WOWOW

コーエン流ブラックユーモアが最高な「ファーゴ」

ファーゴといえば1996年のコーエン兄弟の映画作品が有名ですが、ここで紹介したいのはこの映画に着想を得て、まったく新しい物語に再編されたテレビドラマ版「ファーゴ」です。製作総指揮にはコーエン兄弟の名も並んでいます。

ロアルド・ダール劇場「予期せぬ出来事」を彷彿とさせるような、人々のエゴと愚鈍さが巻き起こす少々ブラックで時にバイオレンスなユーモアは格別です。

愚かで愛らしい登場人物が自らの愚かで愛らしい行為によって愚かで愛らしい事件が連鎖するその様は、腹を抱えて笑ってしまうほど可笑しくて、同時に理解しがたい現代社会をまざまざと描いているようで感服します。そのテーマはコーエン兄弟の代表作にある通り「No Country for Old Men」そのものです。

▼テレビドラマ版「ファーゴ」のシーズン1とシーズン2はAmazon Prime会員であれば誰でも視聴できます。シーズン3はアメリカではすでに公開されているので、近々日本でも公開されるでしょう。

▼元になった映画版のファーゴもご覧ください。こちらもコーエン兄弟らしさ全開で最高です。

▼本作とは特に関係はないですが、ロアルド・ダール劇場「予期せぬ出来事」もオススメなので是非こちらもご覧ください。

海外ドラマ史上最高傑作として名高い「ブレイキング・バッド」

よく海外ドラマの金字塔として紹介される「ブレイキング・バッド」は外せません。最初こそ、大味な表現と展開でお茶を濁そうとしている感があって先行き不安でしたが、少しずつ方針転換がなされて最高の作品に仕上がっていきました。まさに奇跡の一作といってもいいでしょう。

この作品の凄さというのは24やプリズン・ブレイク、ロストやウォーキング・デッドをはじめとして多くの海外ドラマが行なっているように、行き当たりばったりに物語に後付けの事件ばかり起こして、どうにか視聴者の関心をつなぎとめようとする惨めで浅ましく怠惰なやり方を選択しなかったことです。そして行き詰ったらキーパーソンが死ぬか死なないかで興味を繋ぎとめようとするあの退屈なメソッドを選択しなかったことです。

本作の凄さというのは、軽率に物語を展開することをやめて、登場人物の心境を細部に渡って追っていき、少しずつ少しずつ人間の本心を浮き彫りにしながら少しずつ少しずつ現実を壊していくことに専念したことです。

つまり、映画は2時間しかないのに、その何倍もの膨大な時間を扱うテレビドラマにはその増えた分で何が提供できるのか?に対する一つの真っ当な回答を示すことのできた数少ない作品なのです。

ブレイキング・バッドがテレビドラマとして、何時間も何時間もかけて一人の老いぼれの野心を引きずり出し、それによって視聴者も気がつかないほど少しずつ少しずつ作中の世界を狂わせることに成功したのです。

これは2時間という短い時間制限のある映画作品ではどうしても雑になってしまう部分であり、「ブレイキング・バッド」だけが成し遂げた偉大な功績でもあります。

この傾向はシーズン3あたりからはっきりと表れてくるので、最初で挫折せずにせめてシーズン3くらいまでは観てみてください。

今日紹介した他の2作は映画監督や映画作品に関連した作品なので、純粋な海外ドラマとしては少々反則感があります。ですから純粋な海外ドラマとしてはブレイキング・バッドこそ最高の作品といえるでしょう。これには私もスッカリやられてしまい、ラストには不覚ながらも画面に釘付けになってしまいました。

▼ブレイキング・バッドはシーズン6まであります。Amazon Primeをはじめとして各所のストリーミングサービスで閲覧できるので、是非ご覧ください。

▼ブレイキング・バッド終了後、作中の登場人物によるスピンオフとして「ベター・コール・ソウル」も制作されました。

本当に面白い海外ドラマに酔いしれよ!

グルメな私の体感上、海外ドラマは9割が駄作だと思っていますが、今日お話しした作品はどれも一級品といって間違いないものです。

あなたには時間を無駄にして欲しくないので、ぜひこの三作品は観ていただきたいものです。また良い作品を見つけたらお知らせしますね。

貴下の従順なる下僕 松崎より

著者画像

システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。