私の愛しいアップルパイへ
音楽家に最も必要な能力とは何でしょうか?
芸術といえばゼロベースの新しいアイデアという視点が重要視されがちです。我々は優れた作品の根源には洗練されたアイデアがあって、その源泉は発想力であると考えがちです。
しかし本当にそうでしょうか。優れた作品とそうでない作品の差は制作過程におけるアイデアの差なのでしょうか。
考えて見て下さい。
Aさんは10の客観的に素晴らしいアイデアを思いつきました。
Bさんは5つの客観的に素晴らしいアイデアを思いつきました。
優れた音楽家はどちらでしょうか?
また、次の場合ではどうでしょう。
Aさんは20のアイデアの内、10の客観的に素晴らしいアイデアを思いつきました。
Bさんは8つのアイデアの内、5つの客観的に素晴らしいアイデアを思いつきました。
優れた音楽家はどちらでしょうか?
⇒答えは「”まだ”わからない」です。
上記の問題では、どちらが優れた音楽家かなど判断できません。なぜでしょうか。
それは、アイデアだけでは作品は作れないからです。
以前私は創造には4つのフェーズがあると言いました。それは「構想 ⇒ 設計 ⇒ 実装 ⇒ 検査」です。
作曲プロセスは4つのフェーズに分けられる
アイデアはこの中で最初の「構想」で使うものです。創造の出発点であるという点では重要ですが、その時点で作品の優劣は決まりません。
その後「設計 ⇒ 実装 ⇒ 検査」と続いて、やっと作品が出来上がるのです。
そして、優れた作品を制作・発信するという観点に立つと、その鍵は「検査」にあるという事がわかるはずです。
「構想~実装」までにいかに欠陥があっても、発信する前に「検査」で欠陥を見つければ良いからです。
創造は無限のアイデアの積み重ねです。なので必ずそこにはムラが出ます。しかも発想の段階で質を上げるという努力は不可能に近いです。
よって、作品を構成するアイデアをどうふるいにかけるかという判断能力。これこそ音楽家が優れた作品を制作する為に必要な最も根本的に必要な能力ではないでしょうか。
具体的なポイントは2つだけです。
1.日々他人の作品に触れ、技術を磨き、ひたすら創り続ける中で、真に優れたアイデアだけを見抜く観点を磨く事
2.そしてもう一つ重要な能力は、優れていないと感じたアイデアを切り捨てる勇気を持つ事
貴下の従順なる下僕 松崎より