私の愛しいアップルパイへ
全てを自分一人でやる必要は無いですが、やってみる事はいつだって貴重で有益な体験です。
今やマスタリングも自宅で出来る時代。プロに任せる前に是非一度自分でマスタリングに挑戦してみましょう!
とは言ってみたものの、この分野でスタンダードかつ実用的な「ワザ」と「チエ」を学ぶのは思いのほか大変です。
そんな時、私はこの本を手に取りました。
これがまたスンゴイ面白い本だったのでご紹介しましょう。
こだわりのワークプロセス
私はというと、マスタリングなんぞいつも何のこだわりも無く「なんちゃってマスタリングでござい」てな具合に済ませていました。
完成した楽曲のStereo Outにコンプ、イコライザを適当にかけて、マスターフェーダーにインサートしたフリーのリミッターでガッツリ圧縮。そんな感じです。
このやり方もさほどズレていないんじゃ無いかな、などと思っていたのですが、本書に書かれていたやり方はまったく違いました。
それは、2mixを取り込み、エフェクトをかけ、2mixにエクスポートする過程の様々なポイントで、複数のコンプ、EQ、その他のエフェクトを少しずつ多段でかけて行くという方法論なのです。微量のエフェクトを複数かけ合わせて、少しずつ音圧を稼いでいくのです。
マスタリングは科学ではない
上で紹介したのは、本書に記載されている無数のノウハウの内のほんの一部に過ぎません。本書ではエンジニアたる著者が実際に使用している機材やそのパラメータがかなり詳細に記載されています。例えば以下の様な事です。
・最初の2mixでは何dbで出力するのか?
・コンプのスレッショルド、レシオの値は?
・EQの種類とブースとする帯域、Qの値は?
・リミッターのスレッショルドは?
・mp3に特化したマスタリングは?
本書ではそれぞれの値の根拠やエフェクトの結果を科学的に解析する事はありません。あくまでどう感じるかを音楽的に探検しています。
このそれぞれのコンプ、EQ、リミッターの、机上では説明できない特性、質感などの感覚的なものを自在に操って、探求して、最良の組み合わせを探っていく。そんな方法論が非常に楽しそうなのです。
この本で、マスタリングに対する“いかにも科学めいたトキメキに欠ける作業”という認識が180度変わりました。
マスタリングは現代の”管弦楽法”
楽曲を制作する上で、音質や音場を左右する最後の仕上げとなるマスタリング。これをエンジニアに任せるという判断は賢明です。
しかし、その作業内でいったどんな事が行われているのかを知り、実践する事は、音楽家として大変貴重な体験でしょう。
エクトル・ベルリオーズかリヒャルト・シュトラウスが生きていたならば、その著書「管弦楽法」の中にマスタリングの項目を設けていたに違いありません!
マスタリングは現代の管弦楽法だと私は思うのです。
私もまだその扉を叩いた所に過ぎません。是非あなたも一緒に自宅マスタリングに挑戦しようではありませんか!
貴下の従順なる下僕 松崎より
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▼ご参考------------------------------------------
マスタリングの全知識 CDから配信まで(CD付き) 葛巻 善郎 リットーミュージック 2008-10-30 |
by G-Tools
エフェクターの全知識 (Players’ handbooks) 安斎 直宗 リットーミュージック 1998-10 |
by G-Tools
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