私の愛しいアップルパイへ
今回のお題は作曲に携わった事のある方なら一度は聞いた事があるんでは無いでしょうか。
それは「教会旋法」です。
“ドリア”だとか”ミクソリディア”だとか言うアレですね。
現在一般的に用いられている長調および短調に比べ、どうにもとっつきにくい印象があるこの旋法。
しかし、うまく使いこなせればその異国的な響きが楽曲に与えるスパイスはなんとも甘美で魅惑的。
今回から2回に渡って、そんな憎めない奴「教会旋法」の面白さを紹介します。
まずは「教会旋法とは何ぞ」編です。
教会旋法の苦手意識はどこから来るか
七面倒くさい説明を省いて簡単に旋法の歴史を説明します。
そもそも教会旋法なるものは、16世紀以前の、単一の声部だけを持った音楽に対して主に用いられた旋法です。
その後、16世紀-17世紀を境に多声部音楽が主流となるにつれて、教会旋法には改良が加えられます。
そして遂には「長調」「短調」の二強時代に突入し、今に至るわけです。
この経緯を見れば明らかなように、多声部音楽においては長調、短調の和声の響きが最も自然です。そして、単一声部音楽に最適化された教会旋法を、多声部音楽に適用するには注意が必要となるのです。
「多声部」教会旋法はありえるか?
それでは「多声部」教会旋法なるものはありえるのでしょうか。そりゃあ当然ありえます。むしろ音楽の歴史において、ある日突然「今日から「長調」「短調」が主流になります。教会旋法は禁止です。」なんて事が起こり得るはずがありません。
つまり「長調」「短調」への移行期間中に、「多声部」教会旋法というものが過去当たり前の様に作られていたはずです。
そして、この移行期間中に制作された音楽の規則を学ぶことによって、あの「多声部」教会旋法が持つ無骨な響きを会得できるのです。
教会旋法は柔軟だ
この歴史から分かるとおり、「多声部」教会旋法というのは言わば現代の「長調」「短調」音楽の創世記にあたるものになります。
そして創世記だからこそ、今よりも豊かで柔軟で自由で融通の利く規則が用いられていました。
これが私が「教会旋法は柔軟だ!」という理由です。次回は実際に当時用いられていた規則を説明します。
貴下の従順なる下僕 松崎より
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▼ご参考------------------------------------------
旋法論 楽理の探究 東川清一 春秋社 2010-04-22 by G-Tools |
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