SMAP解散騒動に学ぶ正しいWin-Winの考え方

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私の愛しいアップルパイへ

この文章を書いているのは2016年1月20日。我が祖国ではSMAPという国民的なアイドルグループの解散を巡って大騒ぎしております。人間関係のトラブルによって事務所から追い出されそうになりつつも、ファンのためにもどうにかグループ解散だけは回避したいと右往左往している様子です。

連日のように騒動がメディアを賑わし、インターネットでもテレビでもあちらこちらにSMAP解散の字が踊っております。先日は葬式のような異様な光景のなかSMAP自身が生放送で謝罪するという事態にもなりました。ファンはなにが真実が分からないまま胸を痛めているといった様子です。

まさに「あちらを立てればこちらが立たず」という感じで、当事者も、会社も、関係者も、彼らを応援している国民もみな疲れているようです。繊細な私としては胸が痛みます。

こういった状況を目の当たりにするたびに、本当のWin-Winのあり方について思いを馳せずにはいられません。

目先のWin-Winを目指して泥沼にはまる

Win-Winとは、かの有名な7つの習慣」によって定義された言葉で、私とあなた双方に利益のある関係を築きましょうという意味の言葉です。私も勝って、あなたも勝つ。故にWin-Winというわけです。分かりやすい!

賢いあなたにとっては当たり前の考え方のように思えるでしょう。なぜなら、ビジネスはWin-Winが実現できなければ成り立ちようがありませんから。

今回の騒動も一見すればWin-Winであるように見えます。

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しかし、大抵の場合このような表面的なWin-Winによって、本当のWin-Winのあり方が見過ごされてしまっているのが実情です。これは今回の例に限らず、日々いたるところで目にする光景です。

なにがいけないのか、説明しましょう。

Win-Winを取り巻く6種類の人間関係

そもそもWin-Win以外にどのような関係があるのかを説明する必要があるでしょう。先ほど紹介した7つ習慣によれば、それはWin-Winを含めて6つあるとされています。

Win-Win 自分も勝ち、相手も勝つ

Win-Lose 自分が勝ち、相手は負ける

Lose-Win 自分が負けて、相手が勝つ

Lose-Lose 自分も負けて、相手も負ける

Win 自分が勝つ

Win-Win or NoDeal 自分も勝ち相手も勝つ、それが無理なら取引しないことに合意する

「完訳 7つの習慣 人格主義の回復」 第4の習慣 Win-Winを考える

1つ1つ見ていきましょう。

1.Win-Win

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これは良いでしょう。先ほどお話したとおり、お互いの利益になる結果を見つけようとする関係です。お互い満足できる結果を目指すことです。

2.Win-Lose

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Win-Loseはよくある競争のことです。自分が勝って相手を負かす、自分が勝つためなら手段を選ばない、というように大抵の場合は権威主義的なアプローチになります。

「この条件さえ飲めば利益を与えてやろう」という条件つきの関係もWin-Loseの典型的な例です。

3.Lose-Win

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自分が負けて、相手を勝つ関係を望むなんて馬鹿げているし、ありえないと思うかもしれませんが、これは実はよくある光景です。つまり「いい人」ということです。

自分が悪者になることを恐れて、波風が立たないようにするべく表面的なテクニックでその場を取り繕うとすれば、真に良い人間関係は築けないでしょう。そして、Lose-Winに終始していれば、大抵はいずれ限界がきて爆発するのです。

4.Lose-Lose

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Win-Winとは逆にLose-Loseもありえます。これはWin-Loseを目指すもの同士がぶつかりあって、相手に勝たせるくらいだったらお互いが損するやり方で戦ってやるという考え方です。

復讐の連鎖はLose-Loseの関係から生まれます。

5.Win

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Win-Winではなく、ただひたすら自分が勝つことだけを考えるWinという考え方もあります。自分の欲しいものが手にはいるなら、誰が勝って誰が負けるかなんて興味ないという考え方です。

Win-Win or NoDeal

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意外かもしれませんが、実は最も良好な人間関係を築いてくれる関係はWin-Winではありません。

全力でWin-Winを目指した結果、お互い満足できる関係を築けないないのであれば、勇気をもってNo Deal(取引しない)とすること。これがWinWinのさらに一歩進んだ関係です。人間関係には思いやりだけでなく勇気も必要です。この選択肢を頭になければ、Win-Winを目指した結果、結局はどちらかが妥協してWin-LoseかLose-Winに陥ってしまうからです。

SMAP解散騒動に学ぶ正しいWin-Winの考え方

では今回のSMAP解散の騒動をもう一度Win-Winの観点から見てみましょう。

▼一見すれば以下のようにWin-Winを実現しているようにも見えます。

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しかし、ここで重要なポイントはWin-Winの本質とは関係者全員が満足できる関係を目指すことである点です。

▼この図をさらに詳細化してみたらこうなるかもしれません。これが本当にWin-Winに見えるでしょうか。

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▼もっと視野を広げれば、もっと多くの関係が見えてきます。こんな風にとらえることもできるかもしれません。

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▼もしくは、こういった関係になっているのかもしれません。

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こうしてみると分かるのは、主要な二者間の関係をWin-Winにしようとするがあまり、その土台がWin-Loseになってしまっているということです。

どんな問題も解決策は二者択一ではありません。断言できるのは、関係者全員がWin-Winになれる関係を目指したならば、いまは誰も想像できないような方法で、今よりもっと素晴らしい仕事ができるということです。

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Win-Winを実現する前提となる要素

では、なぜWin-Winを目指すのはこんなにも難しいのでしょうか。ビジネスの世界は厳しくて、Win-Winは理想論に過ぎないからでしょうか。私はそうは思いません。

Win-Winは誰もがすぐに目指せるというものではないのは確かです。今回の騒動を見るに、私は3つの要素が決定的に欠けていると感じています。

1.豊かさマインド

7つの習慣ではWin-Winの土台となる考え方として度々”豊かさマインド”という言葉が出てきます。これは、この世にはすべての人に行きわたるだけのものがたっぷりあるという考え方です。

逆の考え方は欠乏マインドという言葉で表されます。これは世界にパイはたった1つしかなくて、他の人が一口食べるとそれだけ自分の分が減ってしまうという考え方です。ゼロサム・ゲームとも呼ばれます。

欠乏マインドの持ち主は他人の成功を素直に喜べません。そして、手柄はすべて独り占めしようとします。結果、Win-LoseかWinに陥りやすいのです。本当のところ、大抵の場合パイは限られてはいないというのに、です。

欠乏マインドではなく、豊かさマインドを持ち合わせていなければ、本当の意味でWin-Winの関係を築くことはできないでしょう。

2.信頼残高

7つの習慣ではもう1つ特徴的な言葉として”信頼残高”という言葉が使われています。これは信頼を銀行口座に例えた用語です。

信頼は人に預け入れることもできれば、逆に引き出すこともできます。信頼を引き出しすぎると、信頼が赤字になってしまうこともあるのです。

特に毎日のように顔を合わせる関係では注意が必要です。最初にどれだけ信頼を預け入れたとしても、顔を合わせるたびに信頼が自動引き落とし状態になっていれば、いずれ信頼残高も赤字に転じてしまうからです。

そして、Win-Winの関係を目指すための資本となるのはお金ではなく信頼なのです。

3.相手を理解する

では、信頼残高に預け入れるためにはどうすればいいでしょうか。もちろんお金を払うわけではありません。

人間関係で信頼を得るための一番の行動は相手を理解することです。一方的に自分の意見を押しつけたり、一方的に利害関係の契約を結んだりするのではなく、相手の言い分をまず心から理解することです。

7つの習慣にも書かれているとおり、相手を理解もせずにWin-Winに乗り出そうとすることは、医者が診断もせずに処方箋を出す行為に等しいのです。

ここでいう理解とは、適当に相槌を打ったり、言葉を認識したりすることではありません。本当の理解というのは相手に共感して、相手の立場でものを見るようにすることです。特別なことをする必要はありません。なにか贈り物をする必要もありません。必要なのは、相手の主張を相手が納得するまで自分の言葉で説明することです。

理解は信頼関係の鍵です。理解こそ信頼を生む行為なのです。

正しいWin-Winに一歩一歩近づいていく

人間関係というのは一夜漬けでどうにかなるものではありません。小手先のテクニックに頼れば、すぐに二枚舌を見ぬかれてしまうでしょう。

人間関係に応急処置はありません。本当の意味でのWin-Winに向けて、泥臭くも着実に前進していくことが求められます。しかし、そうすればこそ、いずれは相乗効果を発揮できる関係に昇華できるのです。

そのための第一歩として、まずは本当のWin-Winについて知る必要があるでしょう。

▼今回取り上げた問題については以下の記事で一般的な問題としてまとめています。

Win-Win(ウィンウィン)の関係の意味を多くの人が勘違いしている

▼Win-Winの考え方は自体は「7つの習慣」で詳しく解説されています。

▼また、Win-Winをさらに掘り下げた「第3の案」という本もありますので、こちらもオススメです。

貴下の従順なる下僕 松崎より

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システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。