私の愛しいアップルパイへ
先日無料配信を始めた我が新曲、我が処女作の「Ernest」ですが、
ここらで一度「Ernest」でこだわった所、取り入れたアイデアなどを整理してみましょう。
どんな楽曲にも作曲者による「新しい角度」からの発想が含まれており、
そこには作曲者の使命に対する固有の洞察力が含まれているのです。
これが芸術において、かけがえの無い価値創造に繋がるわけですから、
今日はその一端に切り込んで、整理・分析・共有してみます。
尚、標題にある通り、料理の一品一品に創意工夫を重ねる”シェフ”を演じながら
面白おかしく紹介しようとおもったのですが、そもそも料理にあまり関心が無く、
技量不足だと思い至ったので、ごく普通に紹介します。
◇「どう認識されたかだけでなく、どう作られたかも重要」
音楽は主観の操作であり、“認識されるもの”です。
音楽が表現であり客観化活動である以上、確かにどう認識されたかが一番重要です。
しかし、それと同じくらい“どう作られたか”も重要なのです。
それは、音楽とは価値の創出であり使命の追求である訳ですから、
結果を生じるまでのプロセスに目を向ける事は必要不可欠といっても過言では無いでしょう。
作曲者が「発想」を直感により「選択」し、「実践」を「検査」した後に「分析」する。
このワーキングプロセスに踏み込む事で新たな発想に繋がるのです。
だからこそ私は臆面も無くここに我が発想と実践を紹介します。
◇「シェフがこだわる3つのポイント」
それではさっそくこだわりポイントを見てみます。今回は3つ用意してきました。
1.無限旋律、循環動機
お気づきかも知れませんが、この楽曲は実にシンプルで強固は骨組みを持っているのです。
それはたった二小節からなる以下の動機が、音色や音高をわずかに変えながらも
最初から最後までの間に54回も途切れる事無く鳴り続けているのです。
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これは「無限旋律」「循環動機」などと言われる技法の最も原始的な形態ですが、それを偏執狂的に徹頭徹尾やり遂げているのです。
2.旋法
旋法というとちょっと専門的でとっつきにくいかもしれません。簡単に説明すると、
現在の楽曲では、少なくともポピュラーミュージックであれば”ド”~”シ”までの12個の音を使用します。
しかし、一曲だけで見ると12個の音を全て均等に使うのはまれで、
12の楽音から一定の法則で7つ程度の楽音をピックアップします。それが旋法です。
この7つの音の組み合わせで最も有名なのが「長調」と「短調」というやつですね。
ちなみに十二音技法という「逆に12個全ての楽音を全て均等に使ってやろう」という捻くれた旋法もあるのですが、それはまた別の機会に。
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鍵盤をなぞってみるとさらに面白い事がわかります。それは鍵盤の内、白鍵をまったく使っておらず、5つの黒鍵だけで構成されているということです。
ダンサンブルでノイジーで軽快なドラムの上にこの旋法が乗っかることで、
“道路のど真ん中をドシンドシンと恥ずかしげも無く歩く、よそ者で粗野な中年男性の様な印象”を与えているのです。
3.題名
音楽家にとって重要なポリシーは、音楽家にとって考えなくて良い事を考えない様にする事です。
ご参考としてハンスリックの「音楽美論」をご紹介しておきましょう。
音楽美論 (名著/古典籍文庫―岩波文庫復刻版) ハンスリック 田村 寛貞 一穂社 2006-03by G-Tools |
私にとって曲名は考えなくて良い事の内の一つです。とは言え単に連番を振るだけだと何かと不便です。
その為、システム屋が開発ネーム、コードネームなどとして良く使うように無作為に選んだ単語群から一つを割り当てています。
私の場合それは人名であり、パッと閃いた名前が「Ernest」(アーネスト)だったのです。
◇「もう一度聴きなおしてみよう!」
そこにはきっと新たな発見があり、その先に新たな発想がある事でしょう。
もちろん私も今一度聴き直しております。
貴下の従順なる下僕 松崎より