無理にポジティブになろうとすると逆に不幸になってしまう

私の愛しいアップルパイへ

私は私の人生が喜劇であると信じて疑いませんが、私がポジティブな人間であるかというと、必ずしもそうであるとは言いかねると慎重に否定するでしょう。

というのも、私は無理にポジティブになろうとすることには違和感というか、ちょっとした危機感のようなものを感じているからです。

無論、ポジティブな心持ちが与える良い影響を否定するつもりは毛頭ありませんが、同時にネガティブな心持ちにも相応の意義があると思っています。ですから、私の中に眠るネガティブな部分に関しても、無理にかき消すようなことはせず、優しく優しく愛でるように付き合うことにしています。

人間なら誰もが抱えているであろう不安や葛藤や恐怖に対して、安易かつ一方的に「もっと前向きになろう」「後ろ向きに考えるのはよそう」「落ち込んでばかりいると幸せが逃げるぞ」「テンションあげていこうぜ」「大丈夫大丈夫」などと説くアドバイスを見聞きするたびに、モヤモヤとした違和感が疼くのを感じていました。

先日、友人のカウボーイに教えてもらった以下のTED講演を観たところ、このモヤモヤが見事に整理され、代弁されていたので、私はそのとき座っていたアーロンチェアの上に立ち上がり「ジーザスクライストッ!」と叫んでしまったくらいです。

Brené Brown: ブレネー・ブラウン:傷つく心の力

無理にポジティブになろうとすると幸福を見失う

講演は全体を通して素晴らしいものですが、最もポイントとなる部分を抜粋しましょう。

私たちは心のもろさに溢れる世界に生きているのです。また心のもろさを扱う一つの方法は その感覚を麻痺させることです。

その証拠に、このことだけが原因ではありませんが、これが大きな原因である事象が存在します。私たちはアメリカ史上もっとも借金漬けで、太っていて、依存症が多く、薬物治療に頼る集団です。実は研究から知ったのですが、人間は選択的に感情を麻痺させることができません。というのも「これが悪の元凶」、これが心のもろさ、悲しみ、恥、恐れ、失望などと特定できないからです。

(中略)

感情を麻痺させることなしにこうしたつらい気持ちを麻痺させられません。選択的には麻痺させられないのです。だからそうした気持ちを麻痺させるとき、同時に喜びや感謝の意や幸福も同時に麻痺させてしまうのです。それでは惨めです。

ブレネー・ブラウン:傷つく心の力

人間は選択的に感情を麻痺させることはできない

OMG!実にパワフルなフレーズです!

言葉の上では、喜びや怒りや哀しみや楽しみは明確に分かれているものの、実際の感情として明確に「ここまでが哀しみで、ここまでが喜び」というようには別れていないのです。

ですから、心のもろさを否定し、ネガティブな感情を無理やりにかき消そうとすれば、同時に喜びや感謝といった幸福感の基礎となる感情も麻痺させることになります

これは無理にポジティブになろうとすることの大きな弊害となるでしょう。心の弱さから目を背け、傷つかないように生きることを優先しようとすれば、幸福感すらも失うということですから。

この講演者であるブレネー・ブラウン氏は同じテーマで著書も出版されているようです。翻訳もされているようですので、これから読んでみようと思います。

貴下の従順なる下僕 松崎より

著者画像

システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。