私の愛しいアップルパイへ
はじめてNotionを使い始めたときは「Evernoteよりもエディタがリッチ」くらいの感想しかなかったのですが、3ヵ月ほど前から改めて本格的に使い始めてようやくNotionのすごさが分かってきました。
身近のNotionを使い込んでいる方の話を聞いたり、メディアで活用事例を見ていくうちに、NotionはEvernoteとはまったく違う概念で情報を整理していけることに気がつきました。
それは、Evernoteよりもずっとパワフルな情報整理機能を備えていたのです。
プログラマーならきっと感動すら覚えるではないでしょうか。私自身、Notionのすごさがストンと腹落ちしたときには、ツツーと頬をつたう涙のような暖かさで体中が満たされました。
鍵は「データベース」です。Notionは単なるノートアプリケーションというより、直感的な操作に対応したデータベース管理システムなのです。
もう少し専門的にいえば、リレーショナルデータベース(RDB)をネットワーク構造で整理できるソフトウェアといえます。
現在、我が社jMatsuzaki株式会社では冒頭の画像のようにプロジェクト情報を整理し共有するメインの場としてNotionを活用しており、その使用感にも満足しています。
今日は私がようやく理解したNotion特有のすごさをまとめていきましょう。
さぁさぁ、これが目次です
データベース作成の簡単さ
最初にNotionの便利さに気付くのはデータベースを作る簡単さではないでしょうか。
データベースといっても複雑なものではなく、行と列からなる表形式のテーブルで情報を整理するもので、ExcelやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトでも作れるような2次元の表のことです。
少し専門的な用語を使うと、リレーショナルデータベース(RDB)と呼ばれるものになります。
ワンボタンで表形式のデータベースを作成できて、行や列の追加も直感的です。ExcelやGoogleスプレッドシートでは新しい表の作成にはシートやファイルを新しく作らないといけないので、Notionの方がずっとスマートです。
たとえば、打ち合わせ中に急にブレストが始まったとしましょう。アイデアを表にまとめて分類して優先度をつけるなど、その場でサクッとできるし共有も簡単です。
以前ならこのようなことはGoogle DriveとGoogleスプレッドシートでやっていたのですが、Notionに乗り換えてたいへん楽になりました。
会議中などでも会話と思考の流れに置いてかれずに、リアルタイムに情報を整理できるようになった感覚です。
ここまでのNotionのすごさまとめ
- 表ではなく「データベース」を簡単に作れる
他のデータベースを外部参照する
まだ序の口です。Notionなら他のデータベースを参照することも容易にできます。
たとえば、ミーティングの議事録をNotionで書いて整理したいとしましょう。その場合、議事録1つ1つと関連プロジェクトを紐づけることになる訳ですが、あらかじめプロジェクト一覧のデータベースが作成されていればそれを参照できます。
このプロジェクトのデータベースは社員一覧や役割分担表、タスクリストなど他のどのデータベースからも参照できます。
プロジェクト名などプロジェクトに関するデータを一元管理できるようになるので、後からプロジェクト名が変わったときなども一ヵ所変更すればよくなるのです。
専門的な用語を使って説明すると、テーブルを「正規化」できるわけです。
ExcelやGoogleスプレッドシートはこの手の外部参照があまり得意ではありません。どちらも表を作るためのソフトウェアであり、データベースを作るためのソフトウェアではないからです。
たしかに、入力規則などを使えば入力できる値を別シートを参照して制限したり、プルダウンで選択させたりもできます。
しかし、そこはやはり表計算ソフトですから、無理矢理感は否めません。特に、ファイルを跨ぐ場合には限界がありますし、すべてを同じファイルで管理しようとするのは無茶です。
データベース間を参照し合うことでデータの重複を避け、データの整合性を保つという面ではNotionの方がずっと優れています。
ここまでのNotionのすごさまとめ
- 表ではなく「データベース」を簡単に作れる
- 他のデータベースを参照することでデータを一元管理できる
データベースの多彩なビューに対応
Notionのすごさはまだまだ止まりません。データベースごとに多彩なビューを設定できます。
データベースに登録したデータをマスタとして箇条書のようなリスト表示にしたり、カンバン方式のようなカード表示にしたり、ガントチャートのようなタイムライン表示にしたりすることが極めて簡単にできます。
データは同じで見せ方だけを変更できるわけです。各ビューは保存できるので、そのとき見たいデータに合わせてワンボタンで切り替えることができます。これはデータを整理するためだけでなく、人へ説明するためにデータを共有するためにも大きな助けになります。
Googleスプレッドシートでこれをやろうとすると、フィルタやピボットテーブル、別のソフトウェアであるGoogle データポータルなどを駆使する必要があります。
ノーコードで非プログラマーでも簡単な画面操作でここまでできるのですからすごいことです。しかも操作は直感的で、いちいち新しいファイルやシートを作る操作やデータベース接続のための厄介なダイアログなども出てきません。
ここまでのNotionのすごさまとめ
- 表ではなく「データベース」を簡単に作れる
- 他のデータベースを参照することでデータを一元管理できる
- 多彩なビューを切り替えてデータの見せ方を切り替えられる
データベースとページを統合してネットワークにできる
ここからが本番です。そのうえNotionには「ページ」の概念が組み込まれています。ここでマジックが起きるのです。
Notionではデータベースとノートの概念がスマートに統合されています。いうなれば、WordとExcel(もしくはAccess)が1つのソフトウェアに統合されたような感じです。これによって情報の表現の幅が無限大になります。
具体的にはデータベースとノートの関係において以下2つのことが実現できます。
- すべてのデータベースはノートに埋め込める
- データベースのレコードはすべてノートにできる
要するに、ノートはデータベースの親にもなれるし子にもなれるということです。
まず1点目ですが、データベースはどのノート内にも埋め込めます。ですから、データベースの前後に文章で補足を書き込んだ上でデータベースを組み込めます。当たり前のようでいて、これをExcelやGoogleスプレッドシートで行うのは難しいです。
では、Notionでこのような情報をまとめるとどうなるでしょうか。
圧倒的に見やすいですよね。
上述したとおり、データベースをページに埋め込む際にはお好みのビューを指定できます。あるデータベースを、あるノートではカード表示で埋め込み、別のノートではタイムライン表示で埋め込むことができます。
たとえばプロジェクト一覧のデータベースを、役割分担ノートの中ではカードで表示し、事業計画ノートの中ではガントチャートで表示するなんてこともできるのです。ウ〜ラ〜ラ〜〜〜!!!
データは一ヵ所で管理されているので、それぞれのノートでデータを操作すればマスタとなるデータベースが変更され、そのデータベースを埋め込んでいるすべてのノートのビューも更新されます。
ノート部分は記述しやすいMarkdown記法に対応していますし、ノート部分に画像やチェックリストを埋め込んだりするのも分かりやすいナビゲーションを利用できます。
さらに2点目として、データベースのレコードとなる1行1行はノートとして扱えます。この中にはレコードとしては表現できなかったメモ書きや、詳細な解説を文章でしたためることもできます。
もっといえば、このノートの中に別のデータベースのビューを埋め込むことも、データベースの新規作成もできます。
こうすることで、リレーショナルデータベース(2次元の表)にとらわれない柔軟な表現が可能になるのです。ヴンダバー!
ここまでのNotionのすごさまとめ
- 表ではなく「データベース」を簡単に作れる
- 他のデータベースを参照することでデータを一元管理できる
- 多彩なビューを切り替えてデータの見せ方を切り替えられる
- データベースはノートに埋め込める
- データベースの1行1行はノートにできる
データベースをネットワーク構造で整理できるNotionのすごさ
このデータ構造は、私にとって衝撃的でした。データベースとページというのはその性質上、真逆の特徴を持っているために対立しやすく、ここまでスマートにハイブリッドな形で統合されているのはうっとりするものがあります。
少し専門用語を使うと、リレーショナルデータベースをNoSQLのドキュメント指向データベース(Document-Oriented Database)でラップしたようなイメージです。1
Notionを使っていて気付いたのは、私がノートアプリケーションに強く欲していたのは、構造化されたデータの整理とともに構造化しがたい不定形のデータも同じように同じ場所で扱えることでした。Notionはこれを驚くほど気持ちよく実現してくれました。
例えば、名簿はデータベースに向いてますが、名簿の使い方を説明したり自己紹介の情報を埋め込んだり、ビューに特定の文脈を与えたりするのは不定形のデータです。そして、この2つが組み合わさってようやく理解しやすい文書になります。
2次元の表形式であるリレーショナルデータベースは、フォーマットを統一して高度な構造化を促進することでデータを漏れなくダブりなく整合性を保つことに長けています。
しかし、一方ですべてをそのような2次元の表形式となるリレーショナルデータベースで表現しようとするとテーブルを正規化する過程でデータが細分化されていき、テーブル構造が複雑になりやすいのです。
ことリレーショナルデータベースというのは不定形のデータを扱うのは苦手です。特定のレコードにだけ個別のデータを埋め込みたいとか、特定のレコードだけデータ形式を変えたいとかいったことはできません。
たとえできたとしても複雑すぎて人間がそのまま扱うには逆に利便性が下がってしまいます。
その点、Notionはノートとデータベースがシームレスに統合されていて、それらすべてをネットワークのように網目状に接続し合えることで、うまく双方の良さが引き出されています。
しかも、それがノーコードで非プログラマーでも直感的に使えるのだからすごいのです。
ExcelやGoogleスプレッドシートはデータ管理のために便利に使えます。しかし、不定形のデータを組み込むのは苦手です。Evernoteは不定形のデータを扱うのは便利ですが、表の作成などは壊滅的に貧弱です。
Notionはそのどちらにも対応できます。
ここまでのNotionのすごさまとめ
- 表ではなく「データベース」を簡単に作れる
- 他のデータベースを参照することでデータを一元管理できる
- 多彩なビューを切り替えてデータの見せ方を切り替えられる
- データベースはノートに埋め込める
- データベースの1行1行はノートにできる
- データベースとノートのいいとこ取りができる
データ整理にめっぽう強いNotion
まとめます。結論として、Notionのすごさデータベースなしには語れません。構造化に強いリレーショナルデータベースが、ノートというネットワーク構造とのハイブリッドになったことで、他のノートアプリケーションと一線を画す存在になっているのです。
データを多く扱うような情報は特にNotionに最適です。私の場合はプロジェクト管理ノートをNotionにまとめて、社内で共有しています。社内Wikiのような形です。
プロジェクト管理は関係者の一覧や成果物の一覧、議事録の一覧など何かとデータとして整理した方が都合のよい情報が多いのです。
また、プロジェクト関連のノートなどは他人と共有することが多いため、ノート形式で見やすくデータベースもビューで見た目が整えられるNotionは便利です。
まずは、進行中のプロジェクトに関する情報を整理する”Ba”としてNotionを使ってみるのはオススメです。2
ここまでのNotionのすごさまとめ
- 表ではなく「データベース」を簡単に作れる
- 他のデータベースを参照することでデータを一元管理できる
- 多彩なビューを切り替えてデータの見せ方を切り替えられる
- データベースはノートに埋め込める
- データベースの1行1行はノートにできる
- データベースとノートのいいとこ取りができる
- まずはプロジェクト管理ノートにオススメ!
ちなみに、プロジェクトノートと自分の知識を第二の脳として蓄積していくノートは完全に別のアプリケーションに分けています。
貴下の従順なる下僕 松崎より
参考文献
- Notion Labsの採用情報によるとサービスのアーキテクチャにはPostgresが使われているようなので、内部的にはRDBMSであるPostgresでBSONなどを用いてデータを保持していると思われる
- Fayard Pierre, The Concept of ‘Ba’ within the Japanese Way of Knowledge Creation, Wiley-ISTE, Jan. 2010. doi: 10.1002/9780470612132.ch9