これから新曲を作る人に捧げる!作曲のプロセスを3つにモデル化するアイデア

Johannes Vermeer 「ギターを弾く女」 (1670年頃)

Johannes Vermeer 「ギターを弾く女」 (1670年頃)

 
私の愛しいアップルパイへ
 
新しく曲を作る時に「さて、これからどう進めて行こうか?」とか悩んでませんか?
 
私は毎回悩みます。しかし毎回同じ所で悩むのは効率的にも品質的にも問題です。なので少し勉強して、作曲プロセスを類似のパターンでモデル化しておこうと考え始めました。
 
そこで今回は作曲のプロセスを以下の3つにモデル化してみます。
 

  1. ウォーターフォールモデル
  2. ウォーターフォール + プロトタイプモデル
  3. スパイラルモデル

 
実はこの話はシリーズ化されているので、始めての方はこちらもどうぞ

 

◇「何の為に必要か?」

 

新しく作る曲がこれからどんな手順を踏んで今どこまで作らないといけないのか。これがザックリでも決まって無いと、今悩まなくても良い問題に多くの時間を割いてしまったり、重要なポイントで安易な判断をしてしまいがちです。
 
特に私の場合は、今どこまで作らないといけないのかがある程度決まってないと、いきなり細かい所まで作りこもうとして失敗します。後続の展開を作ってみると明らかに場違いだったりするのです。しかも、一度細部まで作りこんだものを捨てるのは精神的に非常に難しく、ストレスになります。
 
しかし、今どこまで作るかを決めておかないと、この箇所を後で見直す保証はあるのか、今このパートの全てを作りこまないといけないのではないかと考えて、結果、効率的にも品質的にも失敗します。
 
もちろんあらゆる楽曲はユニークです。あるときはドラムのパターンから肉付けいったり。あるときはコード進行から4声の和声を考えたり。あるときは主題の音高線から考えたり、、とにかく多種多様です。その事は重々承知しております。
 
なので、楽曲のユニークさを損なわない柔軟性のある範囲でプロセスをモデル化していきましょう。

 

◇「先人に学ぶモデリング技術」

 

とは言えゼロベースで考えるのは難しいです。しかし、作曲プロセスをモデル化するなんで聞いた事ありません。
 
そこで私は“ソフトウェアの開発モデル”に目をつけました。これなら業種を問わず適用できそうだと。ただ基本は企業活動の教科書ですから、そのまま適用しても我々音楽家にとっては非効率です。なので、使えそうなものだけを適切な粒度で整理してみました。
 
ここでは作曲のプロセスを以下4つにフェーズ分けします。併せてそれぞれの作業イメージを対応づけします。
 

  1. 構想 … 思いついたアイデア。ドラムパターンでも鼻歌でもコード進行でも何でも良い。
  2. 設計 … アイデアをより詳細に定義する。速度や音程、音色など。最も望ましい形は楽譜化。
  3. 実装 … 設計を実際に聴ける状態にする。つまりレコーディング。
  4. 検査 … できた楽曲を聴いて、OK or NGを判断する。

 
次に、上記4フェーズをそれぞれどう進めていくかという観点でまとめたのが、冒頭に書いた3モデルです。
 

  1. ウォーターフォールモデル
  2. ウォーターフォール + プロトタイプモデル
  3. スパイラルモデル

 
一つ一つ見て行きましょう。
 
1.ウォーターフォールモデル
 
このモデルは構想~検査までを順番に1回だけ実行して1つの楽曲が制作できるというモデルです。一度フェーズを進んだら原則後戻りしない様にするのです。
 
構想の時点でその楽曲に取り込みたいアイデアを全て事細かに洗い出す必要がありますし、設計の段階では1曲を全て完璧に楽譜化する必要があります。実装段階では作成した楽譜をもとにひとつずつ入念にレコーディングしていきます。検査ではあらゆる観点から楽曲を評価します。とにかく一つ一つのフェーズをじっくり、完璧にこなして行くのです。
 
それはまるで滝が上から下に落ちるが如く。ウォーターフォールとはよく言ったものです。
 

ウォーターフォールモデル

ウォーターフォールモデル

 
2.ウォーターフォール + プロトタイプモデル
 
このモデルはウォーターフォールに柔軟性を与える方法です。名前の通り一度プロトタイプ(試作品)を制作してみて、聴いてから修正をかけたり今後の展開を考えようというモデルです。
 
手順としては、構想から設計を進めるにあたって平行してプロトタイプの楽曲(試作品)を制作していきます。設計が終わった頃には楽曲の特徴がわかる程度まで一度完成させます。1コーラスできてれば及第点でしょう。
 
その後、プロトタイプに対して一度検査を行い、この楽曲の改善点や今後の展開について検討します。それを新たな構想として設計に反映させ、今度は完成に向けて実装を進めていきます。
 

ウォーターフォール+プロトタイプモデル

ウォーターフォール+プロトタイプモデル

 
3.スパイラルモデル
 
このモデルは最も柔軟性が高いです。構想から検査までの4フェーズをスパイラル(渦巻き)状に何度も繰り返していきます。小さい単位で、それは1小節でも4楽節でもかまいませんが、とにかくできた所からレコーディングしていって、少しずつ肉付けして行こうという考え方です。
 
このスパイラルを満足するまで無限に繰り返して、一曲を創り上げていきます。
 

スパイラルモデル

スパイラルモデル

 

◇「モデルごとの特徴」

 

さて、どうでしょう。他にもソフトウェア開発モデルにはアジャイルモデルやRADモデルなどがありますが、作曲に適用するにはいまいちピンと来なかったので採用しませんでした。
 
簡単にそれぞれの特徴をまとめてみます。
 
1.ウォーターフォールモデル
 
とにかく時間がかかります。厳密にこのモデルにのっとったやり方は私もやった事がありません。3~6分程度のポピュラーミュージックを作るのには相性が悪いと思います。逆に、壮大な構想のもとで、何百時間、何千時間と途方にくれる程の時間をかけて一曲を作り上げるような、人生をかける大作を作る場合にはこのモデルを採用しても良いと思います。それはこのモデルが前のフェーズを信用して後戻りをしないという考え方なので、結果的に最初の構想を最も重視するモデルとなるからです。一度は厳密にこのモデルに沿ったやり方で一曲仕上げてみたいと思っています。
 
2.ウォーターフォール + プロトタイプモデル
 
これも音楽を作るという観点で見ると以外と負担はかかると思います。あんまり短い曲で採用すると非効率になるので注意です。最初の構想を重視する楽曲である場合には有りかと思います。
プロトタイプを検査する段階では自分一人だけでやるのでは無く、信用できるパートナーや限定されたコミュニティと一緒にやると面白い効果が出ると思います。
 
3.スパイラルモデル
 
このモデルはとにかく小回りが利くので便利です。普通に作ったらこのモデルになると思います。しかし、作りながら徐々に全体像が見えてくるので、最初に思い描いていたものとは乖離するリスクはあります。まぁそれもまた面白い点なのですが。
 
 
さて、ひとまず3つのモデルを整理してみましたが、上記は飽くまで例だと考えて、是非自分が一番やりやすい新しい最適なモデルを考えてみて下さい。
 
ちなみに私の場合はやはりスパイラルモデルが一番多いと思います。しかしあえて馴れてない他のモデルを採用するだけで今までとは違った作品ができるので、一つのアイデア発想法だと思って使ってみると中々面白いもんです。
 

貴下の従順なる下僕 松崎より


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▼ご参考------------------------------------------

4820744690 新版 P2Mプロジェクト&プログラムマネジメント標準ガイドブック
日本プロジェクトマネジメント協会
日本能率協会マネジメントセンター 2007-11-30by G-Tools
 

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システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。