作業時間にバッファを持たせるとスケジュールが破綻するという説[問題編]

キヤノンカレンダー2011
キヤノンカレンダー2011 / yto

私の愛しいアップルパイへ 

「タイムマネジメント」 「作業計画」 「スケジューリング」 「時間の見積もり」。まるで甘美な竪琴の様に心地良く耳に響く言葉である。

そう思いませんか?

そんな偏執狂めいたあなたを私は心から応援します。松崎です。

さて、最近その作業時間の見積もりに関する面白い手法を見つけました。

主に複数人のチームでプロジェクトを遂行する際に用いられる手法ですが、個人でのタスク処理にも流用できる面白い考え方なので紹介します。

我々は常に計画を立てている

我々は日々たくさんのタスクを処理しています。そしてタスクを処理する際には、大小の差はあれ、必ず計画を立てています。

それが”昼食”だろうが”顧客への提案”だろうが”海外出張”だろうが”銀行強盗”だろうが、必ず作業時間を見積もり、いつ着手していつ完了するのか計画を立てます

この中で作業時間の見積もりは特に重要です。この見積もりをもとに計画をたて、行動を決定するからです。

従来の作業時間見積もり方

さて、とあるタスクにおける作業時間を見積もる時、あなたはどうやって見積もっていますか?

例えば、「ノートを買いに行く」というタスクを計画する場合を考えて見ましょう。

家から5分の距離にコンビニがあるとします。ノートであればおそらくコンビニで買えます。

行き帰りの往復で10分。買う行為に必要な時間は普通に考えれば5分くらいでしょうか。

ここまでくれば作業時間の見積もりは簡単ですね。15分です。

おっとちょっと待つんだアップルパイ。よく考えろ、最寄のコンビニにノートは確実に売っているのかい?売っていたとしても在庫は確実にあるのかい?在庫があったとしてもそのノートが気に入る確証は?

時間帯が昼ならレジが込んでいる可能性もあるな、あそこはビジネス街だ。それに途中には魔の踏切がある。おいつに捕まったらおしまいだ。とても15分じゃあ帰れない。

そうだ!さらに5分行った所にもう一軒コンビニがあるぞ。もしもの場合に備えてもう一軒のコンビニも回れる時間を見積もっておこう。

行き帰りで20分。買う行為は2件回るから10分だな。つまり「ノートを買いに行く」というタスクは30分かかる事になる。

わかりましたか。我々は意外にもほとんどの場合この様に作業時間を見積もっている事に気がつきます。

つまりリスク(=不確実性)を見込んで、物事が予定通り進まなかった場合の予備時間(=バッファ)を各作業の見積もり時間に上乗せしているのです。

15分で出来るであろう買い物は30分に。30分で出来るであろう新製品の調査は1時間に。1時間で仕上がるであろう論文は2時間に。という具合です。

バッファがスケジュールを破綻させる2つの理由

作業時間にバッファを持たせる事は悪い事でしょうか。スケジュールを遅延させない為、リスクに対応する為にバッファを取っているのにスケジュールはなぜ破綻するのでしょうか。

それは主に以下2つの理由によって起こります。

1.学生症候群

スケジュールに余裕があれば余裕がある分だけ安心してしまい、期限ギリギリになるまで作業に着手しなくなる事です。

とある作業の為に確保した時間の内、前半のほとんどをインターネット巡回に使ってしまい、結局作業予定を超過したなんて事はありませんか。

記憶にあるでしょう。あの夏休みの宿題を。学生症候群とはよく言ったものです。

これは全体で見ると大変非効率な時間の使い方になります。また、そもそもリスクに対応する為に確保した時間を食いつぶしている訳ですから、実際にリスクが顕在化した場合にスケジュールの遅延を抑制できなくなります。

2.パーキンソンの法則

学生症候群が作業の開始時間に着目した問題であったのに対し、これは終了時間に着目した問題です。

作業が遅延した場合であれば、我々がとるべき行動は概ね明快です。つまり、スケジュールをキャッチアップする為にパフォーマンスを上げるか、後続のタスクを諦めれば良いのです。

逆に作業が早期終了した場合はどうでしょう。この場合、次のタスクに前倒しで着手するという選択は思いのほかなされません。それは作業が遅延した場合と比較して、早期終了した場合に痛手を負う事が無いからです。

結局のところ早期終了した分だけ時間は無駄に浪費されます。

これらの問題を解決するにはどうしたら良いか?それは次回「解決編」をお楽しみに。

貴下の従順なる下僕 松崎より

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システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。