Win-Win(ウィンウィン)の関係の意味を多くの人が勘違いしている

私の愛しいアップルパイへ

「Win-Winの関係」(ウィンウィンの関係)という言葉の意味をご存知でしょうか。

私も勝って、あなたも勝つという意味ですが、世界的なベストセラーである「7つの習慣」で使われたことで広く知られるようになりました。

「Win-Winの関係」という言葉の使い方はシンプルで、ビジネスにおいては日常的に使われています。

「ヘ~イ、ジェイムス!また会ったな!さぁ、この新しいプロジェクトを通してWin-Winの関係を築いていこうじゃないか~!」というふうに使われます。

しかし、なんとも悲しいことに!多くの場合、この「Win-Winの関係」という用語が勘違いのもとに使われており、良質な人間関係の妨げになっていることを私は知っています。

「Win-Win(ウィンウィン)の関係」の言葉の意味

先ほどお話しした通り、Win-Winの関係は「私も勝って相手も勝つこと」です。

つまり人間関係において、私とあなたの双方に得のある良好な関係を築くことを示しています。

Win-Win(ウィンウィン)の同義語・類義語

Win-Winの同義語、類義語としては以下のものが考えられるでしょう。

  • 相互利益
  • 三方良し

相互利益は、自分と相手とのあいだで互いに利益を得られるハッピーな状態を指します。

三方良しは、三角関係においてすべての関係者が利益を得られるような状態です。

Win-Win(ウィンウィン)の対義語・反対語

ビジネスの話題において最もよく使われるのは「Win-Win」ですが、それ以外の関係を表す用語もあります。

他の用語も並べてみるとより意味が分かりやすいので、全て見てみましょう。

▼7つの習慣では以下の通り人間関係を6つに分けています。

Win-Win 自分も勝ち、相手も勝つ

Win-Lose 自分が勝ち、相手は負ける

Lose-Win 自分が負けて、相手が勝つ

Lose-Lose 自分も負けて、相手も負ける

Win 自分が勝つ

Win-Win or NoDeal 自分も勝ち相手も勝つ、それが無理なら取引しないことに合意する

完訳 7つの習慣 人格主義の回復」 第4の習慣 Win-Winを考える

「Win-Win(ウィンウィン)の関係」の例文

「Win-Win(ウィンウィン)の関係」はビジネスにおいてよく使われます。ここで実際の使われ方を見ていきましょう。

ここでは「マイケル」と「ジェイムス」という2人のカウボーイに登場してもらうのが良さそうですね。

……

ジェイムス:「やぁマイケル!今度セミナーを開催しようと思うんだが、顧客の管理をお願いできないかな?もちろん報酬はお支払いするよ」

マイケル:「やぁジェイムス。実はぼくもセミナー開催時の一連の流れを学びたいと思っていたところなんだ。その提案、ぜひ引き受けさせてもらうよ」

ジェイムス:「ありがとうマイケル!これでぼくは苦手な顧客の管理を任せて、セミナーに集中できるよ」

マイケル:「こちらこそ報酬をもらえるし、セミナーの流れを見させてもらえるのは助かるよ」

ジェイムス&マイケル:「ぼくたち、Win-Winの関係だね!」

「Win-Winの関係」の築き方

私たちは得てして、強いか弱いか、勝つか負けるかのような、二者択一の世界で考えてしまうことがあります。

Win-Winの関係を築くためには、「全員が満足できる方法は十分にあり得るだろう」という考え方が必要です。つまり第3の案の存在を信じることが大切なのです。

ただ、そう簡単に第3の案の存在を信じられるのであれば苦労はしません。

第3の案に到達するためには、自分の気持ちや信念を相手にハッキリ伝える”勇気”が必要です。“いい人”と思われたい気持ちを乗り越えて、相手に委縮せず、誠実に伝える勇気です。さもなくばLose-Winの関係になってしまうでしょう。

“勇気”が必要な一方で、自分より弱い立場にある人のことを”思いやる”強さも同時に求められます。たとえば「私のやり方を通す。君の意見は聞くまでもない」という態度を部下にしてしまったら、それはWin-Loseの関係となってしまうでしょう。

Win-Winの関係を築くためには、勇気と思いやり、このバランスを取ることが必要不可欠です。

このバランスが取れるのは、個人として成熟した人です。これは7つの習慣の第1~第3の習慣をある程度マスターしている人とも言えるでしょう。

第1~第3の習慣についての詳しい内容は、以下の要約をご覧いただくことで素早くキャッチアップできるはずです。

今さら人に聞けない!7つの習慣が5分でわかる要約とまとめ

よくある「Win-Winの関係」の勘違い

さて、ここからは「Win-Winの関係」という言葉がどのように勘違いされているのかを見ていきましょう。勘違いのパターンは、大きく以下の2つに分けられます。

  • 「私」と「あなた」の二者間のWinしか考えられていないパターン
  • Win-Winの関係がベストだと思い込んでいるパターン

それぞれ詳しく解説していきます。

パターン1. 私とあなただけ「Win-Winの関係」という誤り

現在「Win-Win」(ウィンウィン)という言葉は、サービスの提供側とそれを受ける側の二者間で使われることが圧倒的に多いです。

もっともオーソドックスなかたちは、サービスを提供する代わりに、お金を得るというものです。

それぞれが金額とサービス内容に満足すれば「Win-Winの関係」というわけです。シンプル!

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でもこれはごく初歩的な状態です。

そもそも、この「Win-Winの関係」が成り立たなければ、長期的に持続できるまっとうなビジネスはできませんから。

視野を広げてみましょう。

私は勇気をもって告白しますが、この「Win-Winの関係」を支える土台が「Win-Loseの関係」になっているなんてことはよくあることです。

以下の図を見てください。本当に「Win-Winの関係」と言えるでしょうか。

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従業員だけでなく、他にも製造会社が別に居たりするでしょう。

顧客のその先にはさらに顧客が居るかもしれません。

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分かりやすいようにビジネスの世界で表現しましたが、これは家族でも学校でも全ての集団に当てはまります。

私とあなただけでなく、その環境を取り巻く全ての関係者の間で「Win-Winの関係」を作らなければ、真の相乗効果を発揮することはできないでしょう。

パターン2. No Dealが選択肢に入っていない誤り

もう一つ、軽々しく「Win-Winの関係」を築きましょうと肩を叩いてくる輩が勘違いしているのは、実は「Win-Win」はベスト選択ではないということです。

7つの習慣では冒頭で紹介した6つの人間関係のうち一番上にある「Win-Win」ではなく、一番下にある「Win-Win or NoDeal」こそがベストな選択であると明言されています。

つまり、Win-Winを目指して、それが無理ならば勇気を持って取引しないこと合意することがベストなのです。

闇雲に「Win-Winの関係」を目指そうとして結果的に「Win-Lose」「Lose-Win」になってしまうことはよくあることです。

そこで勇気を持って取引しないことに合意すること。そして、またいつかWin-Winを目指せるベストなタイミングを待つことを選ぶこと

「Win-Win」に「NoDeal」のオプションを追加した「Win-Win or NoDeal」こそが最も良好な人間関係なのです。

「Win-Win」でなく「Total Win or NoDeal」を目指す

「Win-Win」と聞くと、どうしても二者間という、ごく狭い範囲で捉えてしまいがちです。

また「Win-Winの関係」に固執すると、何としてでもお互いに利益を得られる方法を見つけなければならないと、ある種の強迫観念のようなものが生まれかねません。

「No Deal」を視野に入れず、お互いのWinを探すことに執着してしまうと、必ずどこかで「Win-Lose」か「Lose-Win」のしわ寄せが来ます。

まずもって大切なのは、限られた「Win-Win」を目指すのではなく、関係者全体の「Total Win」を目指すこと

それと同じくらい大切なのは、「Win-Win」だけでなく「NoDeal」のオプションを持っておくことです。

「7つの習慣」の著者であるスティーブン・R. コヴィー氏はこのように言っています。

あらゆる相互依存的関係において、Win-Winを考えることは、長期的な効果性を得るために欠かせないことである。これは「誰もが満足できるだけの量がある」という豊かさマインドの考え方と密接に関係している。この考え方によって、相手の勝利を自分のものと同じくらい切実に望む気持ちや、関係者全員の利益を模索しようとする姿勢が育まれる。

7つの習慣 原則中心のリーダーシップ by スティーブン・R・コヴィー

「Total Win or NoDeal」の実現は非常に難しいことではありますが、以下のプロセスを実行し続けることで状況を良くすることができるでしょう。

1.そのプロジェクトの全ての関係者を洗い出す
2.関係者それぞれにとってのWinを想像する
3.Winを実現するために自分ができるアクションを決める
4.実現できないものには勇気をもって「NoDeal」(取引しない)とする

▼Win-Winについてもっと知りたくば、原本である「7つの習慣」を読まれるといいでしょう。

▼さらにWin-Winに特化して書かれた一冊もあります。

貴下の従順なる下僕 松崎より

著者画像

システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。