脱サラして半年で貯金が0円になったときの話(3)~ガラとの出会い~

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photo credit: . SantiMB . via photopin cc

私の愛しいアップルパイへ

世界は慈愛に満ち…いえ、違います。素晴らしいことが起こっ…いえ、違います。

話は脱サラする1ヶ月ほど前に戻るんですが、恋をしました。水面に写った「自分」と、そして「あなた」に次いで、人に惚れたのは3人目です。

一般的に言えば、初恋というものになるでしょう。仮に彼女の名前を「ガラ」とします。

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脱サラして半年で貯金が0円になったときの話
脱サラして半年で貯金が0円になったときの話(2)~実家に帰る苦渋の決断をした日~
脱サラして半年で貯金が0円になったときの話(3)~ガラとの出会い~ ← Just Now!
脱サラして半年で貯金が0円になったときの話(4)~実家に戻って再起を図る~ ←Next!!
脱サラして半年で貯金が0円になったときの話(終)~さらに半年後の今の生活~

ガラとの出会い。ガラとの生活。ガラとの別れ。

最初に断って起きますが、私は「恋愛」なるものを信じていません。恋愛は…端的に言えば虚妄です。

ほとんど全ての人にとって恋愛は妥協の産物に過ぎないではありませんか。「運命の出会い」ほど醜い安逸を私は知りません。

畜群が「恋愛」に浅ましくすがっている様子には目を背けたくなります。そして、ナンセンスな似非芸術家どもは「恋愛」に最後の安逸を見出したのです!

ですから、恋愛はいつだって凡庸で使い物にならないと思っています。恋愛だなんて、燃えるような恋だなんて、運命の出会いだなんて、ちゃんちゃら可笑しいわってあなたもそう思うでしょう。

ただ、私とガラだけは違いました。控えめに言っても運命の出会い。数少ない奇跡。この世の神秘。

私がジャン・リュック・ゴダールだったらガラを主役に「カルメン」を撮ったに違いありません。

生まれた日は違いましたが、死ぬときは一緒でしょう。

ガラは笑顔がSweeeeeetな女性でした。それから、幼げな外見とは裏腹に、軸のしっかりとした思考を持てる女性でした。そして何より、大きな夢を持つ女性でした。自分の夢に忠実なガラが、当時の私には眩しく映りました。

孤独で惨めな生活の中ではガラだけが唯一の癒やしでした。会社に行く必要もなく家でひとり黙々と仕事をこなし、のっぺりとした毎日と減っていく貯金、そして肥大化していく焦燥感の中で、ガラとの時間が私にとってどれほどの救いだったか、あなたなら分かるでしょう。

貯金が無かったので、よく二人で料理を作って食べました。我が家にはろくな調理用具も食器も無く、二人で座れるテーブルも無かったので、ひどく食べづらかったのが笑えました。二人で一緒に食べる料理は格別でした。あんなに嫌いだった自炊が大好きになりました。

この私が人並みにも、この一瞬が永遠に続けばなと思いました。その頃は、次にガラと会える日だけを原動力に働いていたのです。

ですから、実家に帰る苦渋の決断をしなければならなくなったときに苦悩しました。みっともないだけでなく、実家に帰ればガラと会える頻度はずっと下がるでしょう。きっと当面は二人で料理も作れやしない。ジーザス!

ガラに実家に帰ることを伝えるのは実に気が重かったです。「貯金が無くなったから実家に帰る」とだけ伝えるのはみっともなかったので、「次に家を出るときには二人で一緒に住もう」と付け加えました。私らしい発想だったと思います。

あの時、たかだか二人で住むなどという細やかな願いすら実現できない自分の無力さを恨みました。その度に、前の職場に戻れたらどんなに良いかと思いました。

実家へ帰る日、電車に乗る直前にガラが手紙をくれました。中には「変化の激しい時期で色々と不安もあるだろうけど頑張れ。応援してる。」といった内容が、可愛らしくデコレーションされて書かれていました。Sweeeeeet、、、

帰りの電車、人目もはばからずに悔し泣きしたあの日のことを私は一生忘れないでしょう。

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貴下の従順なる下僕 松崎より

著者画像

システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。