私の愛しいアップルパイへ
Greeeeeat!でCooooool!なすごい本に出会ってしまいました。この本は今年読んだ本ではベストです。
ユヴァル・ノア・ハラリ氏が書かれた「サピエンス全史」なる本があります。もともとサピエンス全史の一節ともリンクした以下のTEDトークも見ており興味を持っていました。
ユヴァル・ノア・ハラリ: 人類の台頭はいかにして起こったか?
サピエンス全史の続編とも言える以下の「ホモ・デウス」(日本語訳は2018年9月に発売予定)が気になっていたのですが、その前にサピエンス全史を読んでおこうと思って手に取りました。
Homo Deus: A Brief History of Tomorrow[Kindle版]
読んでみたところ予想以上に素晴らしい刺激に満ち溢れた本で、私は毎日のようにふんふんと鼻息を荒くしながら夢中で読んでしまいました。今日は本書のなかでも特に私の胸を打った箇所を紹介しながら、この興奮をあなたにお届けしましょう。
▼「サピエンス全史」はこちら。
発売以降、世界中でベストセラーとなったサピエンス全史
本書はホモ・サピエンスの歴史を中心に人類の進化と発展、そして未来を紐解いてくれる一冊です。
2011年にヘブライ語で出版されるやいなやイスラエル内で話題になり、2014年には英語版が出版され世界的なベストセラーとなったのが本書です。その後、日本語を含む50か国以上で翻訳され、 累計500万部を突破する世界的ベストセラーとなりました。
2015年にはFacebookのマーク・ザッカーバーグ氏が絶賛するなどして話題になり、その後ビル・ゲイツ氏やバラク・オバマ氏など名だたる人々が本書を絶賛しています。
私はかく前に逃げる虱のごとくいつも冷静で時に冷ややかな人間ですから、このような盛り上がりを見るとつい「この俗物どもが…」と一歩引いてしまう人間であることはあなたもご存知の通りです。
そういうわけで遅ればせながら本書を手にとってみたところ前評判通りの素晴らしい本、いえそれ以上の一冊でした。評判になってる本って本当に面白いものもあるのだなと反省した次第でございます。
歴史をマクロな視点で俯瞰して未来のまったく新しい可能性に目を向けられる
本書は単なる歴史本ではありません。歴史本というとつい「18xx年に某国が戦争を起こし、革命につながった」とか「16xx年に某国の政府がなんとかという条約を結んだ」とかセンター試験のために暗記させられたような客観的事実の羅列を想像しがちです。
しかし、本書のハラリ氏はマクロ・ヒストリーを専門とする方でして、1つ1つの個別の事象を扱うのではなく、それらを統合してさらに上のレベルで人類の行いを俯瞰し、歴史の法則性を見出そうと試みている方なのです。
それは単なる未来予測とも違っており、本書では過去250万年に及ぶ人類史を紐解きながら、私たちが抱える課題や、来るべき未来、そして新しい可能性について言及してくれているのです。歴史を学ぶことの意義について、ハラリ氏は本書の中でこう語っています。
それでは私たちはなぜ歴史を研究するのか?物理学や経済学とは違い、歴史は正確な予想をするための手段ではない。歴史を研究するのは、未来を知るためではなく、視野を拡げ、現在の私たちの状況は自然なものでも必然的なものでもなく、したがって私たちの前には、想像しているよりもずっと多くの可能性があることを理解するためなのだ。
ユヴァル・ノア・ハラリ 「サピエンス全史(下)」 Kindle 版 (Kindleの位置No.646-647) 河出書房新社
また、本書は歴史に明るくない人でもわかるような言葉で丁寧に解説してくれているので、歴史は苦手という方にもオススメできる一冊です。
農業革命という「詐欺」から学ぶ後戻りできない革命
誰もが知るホモ・サピエンス最大の革命の1つは農業革命でしょう。狩猟民族から農耕民族への以降はホモ・サピエンスの進歩を示す出来事として広く知られています。多くの場合、農業革命はポジティブな意味合いで語られるのですが、本書では驚くべきことに農業革命を「詐欺」とまで言っています。
というのも狩猟中心の生活と比べると農耕中心の生活の方が栄養バランスが崩れやすく、以前と比べて人類は不健康になったというのです。その上、農耕は天気や気候の影響を受けやすく不作の場合には致命的な飢餓が蔓延することになります。そのため、狩猟から農耕へのシフトは決して人々に幸福をもたらしてくれたわけではなかったのです。
農業革命の意義は個人の幸福が下がっても人類としての生存率が上がったことです。しかし、現代のような世界的にヒューマニズムが蔓延している時代においてはこの革命が本当に良いものだったのか悩ましいところです。
とはいえ、狩猟採取民族に戻れば良かったのではないかというと、そう簡単にもいきません。革命は1日で成るわけではありませんから。それこそ農業革命のような規模の革命は特に。ある日急に狩猟採集民族が農耕民族にシフトしたのではなく、その革命は誰も気がつかないくらいじわりじわりと少しずつ進んでいったと考えられています。
そして社会が農業中心の生活になって個人の生活がいよいよ苦しくなったときには、狩猟採集民族に戻るためのノウハウを持っている者は誰も居なくなっていたのでした。戻るに戻れない状況です。これが農業革命という名の詐欺だとハラリ氏は説きます。
本書では実に4章に渡って農業革命の意義やその内容について解説されています。これは農業革命がホモ・サピエンスにとって大きなターニングポイントだったためでもあるでしょうが、私にはもう1つ重要な理由があるように思えてなりません。
それは近代で農業革命と比較しても見劣りしないほど大きな革命であった15世紀以降の「科学革命」が、農業革命と同じ運命を辿りかねないことに対する警笛です。
おっと、良いところなのですが続きを書くにはスペースが足りないようですので、続きはまたの機会にしましょう。
▼ネクストッ!書評の後編はこちら。
貴下の従順なる下僕 松崎より