私の愛しいアップルパイへ
あなたは私が鋼の心を持った鉄人だと思っているかもしれませんが、そんなことはありません。このjMatsuzakiも感情を持った人間であることは間違いなく、時にはネガティブな思考がぐるぐると無限ループしてしまうような時だってあります。
なにげない一言で傷つくこともあれば、将来を悲観して頭を抱えることもあります。それを何度も思い出して、かの非情なる現実を呪ったりすることもあります。
そんなとき、プログラムなら”break”と一言記入すれば問題は解決するのですが、人間はそうもいかないので厄介です。
幸いなことに対処方法はあります。なかでもマーティン・セリグマン博士のポジティブ心理学、特にLearned Optimism(学習性楽観主義)はそのような事態に対する素晴らしいヒントを与えてくれます。
ネガティブな思考がぐるぐると無限ループしてしまうときの2つの対処方法
人は誰でも一時的にはネガティブな思い込みに苛むものです。この思い込みから早く立ち直る術を身につければ、無益のうちに時間を浪費するようなことがなくなります。それ以上に大切なのは、悲観主義によって人生を台無しにしなくても済むようになるのです。
そして、マーティン・セリグマン博士が証明したように悲観主義は生まれつきの資質でもなければ遺伝でもなく、適切な知識によって確実に修正できる思考の癖に過ぎません。
マーティン・セリグマン博士は「Learned Optimism」のなかでネガティブな思い込みに対処する2つの方法を挙げています。1
- 気をそらすこと
- 反論すること
マーティン・セリグマン博士は2つ対処方法についてこう説きます。
自分が悲観的な思い込みをしていることに気づいたら、対処の仕方は大きく分けて二つある。その第一は、このような考え方をしそうになったら、気をそらすことー何か別のことを考えることだ。第二はその考え方に反論することだ。自分の考え方をうまく否定することができれば、同じような状況が再び起こっても、このような思い込みにとらわれることが少ない。だから長い目で見れば第二の方法のほうが有効だと言える。
オプティミストはなぜ成功するか p.289
気をそらすことは、一時的な効果しか発揮しないかもしれませんが、すぐにでも悲観的な思い込みを消したいとき(例えば本番中や、人と対話しているときなど、思い込みが非可逆的な結果を招く場合)には有効です。
反論することは、ABCDEモデルをはじめとした習慣的な演習が必要であり時間がかかるものですが、時間と共に確実に悲観主義から抜け出せる上、永続的な効果が見込めます。
それぞれの対処方法についてみていきましょう。
気をそらすこと
悲観的な説明スタイルはいかにして人の行動を規定するか?にあるような悲観主義を引き起こす出来事が起こった場合には、反芻を止める必要があります。
つまり気をそらす必要があるわけですが、このとき大抵の場合は皮肉過程理論(シロクマ問題)に直面します。考えないようにしようとすればするほど、考えてしまうのです。
そこで、マーティン・セリグマン博士は肉体的手法と関心の移転という2つの方法を使って気をそらす方法を提案します。
手首にゴムバンドを巻いておいて、反芻が起きそうになったときはパチンとはじくといい、という人もいる。
これらの肉体的手法を関心の移転という方法と併用すると、効果はもっと長く続く。ゴムバンドをはじくなどして反芻を一時的に中断したあと、また否定的思考に戻ってしまうのを防ぐためには、関心を別のところに移すのがよい。俳優は急に気分を変える必要があるとき、この方法を用いる。例えば、何か小さなものを取り上げて数秒間一心に観察する。握りしめ、口の中に入れて味をみて、においをかぎ、音がするかどうかたたいてみる。このようにある一つのものに神経を集中すると、関心を移行させることができる。
オプティミストはなぜ成功するか p.293
私のお気に入りの方法は、耳元で指をパチンと鳴らした後に近くにある物を手にとってじっと観察する方法です。
反論すること
悲観主義から永続的に移行するためには悲観的な説明スタイルに反論できるようになる必要があります。
自分の習慣的な考え方から気をそらしたり、ごまかしたりするのは応急措置としては役に立つが、もっと根本的な解決法はそれに反論することだ。困難に出会ったときに反射的に頭に浮かぶ考え方に反論することによって、いつもの落胆とあきらめの反応をエネルギッシュな行動へと変えることができる。
オプティミストはなぜ成功するか p.291
これを実行するためには練習が必要です。というのも、人は自分に反論するのが得てして苦手なものだからです。自分が言っているのだから本当のことに違いないと思い込みがちなのです。
いちばん大切なのは、自分の信念は思い込みであって、事実ではないかもしれないと気づくことだ。
(中略)
私たちは他人からのいわれのない非難には、比較的楽に距離をおいて立ち向かうことができる。しかし、自分が日常自分自身に対してする非難についてはそうはいかない。自分がそう思うのだから、そうに違いないと思うせいだろう。
オプティミストはなぜ成功するか p.292
人は自分に対してまったく根拠もなく、事実をねじ曲げて、自分に説明することがよくあります。思い込みは自分の意見だと思えるため、簡単に信じ込んでしまうのです。
私自身、ほとんど毎日自分の思い込みに反論する練習をしていますが、自分がいかに事実を歪曲して、論理を飛躍して、でたらめな説明をしているか痛感しています。
自分の思い込みに反論するときには、マーティン・セリグマン博士も推奨しているABCDEモデルを活用すると良いでしょう。これについては別の記事で解説します。
ネガティブな思考にうまく対処できるようになると生活はずっと楽になる
気をそらすことと反論することを日々実践する中で強く感じるのは、ネガティブな思考にうまく対処できるようになればなるほど、生活がずっと楽になるということです。これは仕事や家庭生活、友人などあらゆる土台として機能します。
そのような技術を一度しっかり身につけておけば、あらゆる場面で使えます。人生の土台となる知恵になります。繰り返しになりますが、ネガティブな思考がループしてしまうことや、日常的にネガティブな思考に浸ってしまうような状況は、決して資質や人間性や遺伝の問題ではなく、矯正可能な”癖”に過ぎません。
もしネガティブな思考がボトルネックになっていると感じるのなら取り組んでみる価値は十分にあります。
その第一歩として以下の書籍を読むのはオススメです。
貴下の従順なる下僕 松崎より