人はいかにして悲観主義(ペシミズム)に陥るのか?

私の愛しいアップルパイへ

世の中には三種類の人間がいます。楽観主義者(オプティミスト)、悲観主義者(ペシミスト)、そしてjMatsuzakiです。

「自分はなんてダメなやつなんだ…」「こんな人間が幸せになれるはずが無い…」「誰も自分のことなんて応援してくれて無いんだろう…」

そんな呪いのような言葉に苛んだことは誰しも1回は体験するのではないでしょうか?

20世紀後半から悲観主義(ペシミズム)が人生にもたらす不幸というのは研究が進んでおり、情緒面だけでなく健康面や社会面など多方面で害悪な影響を与えることが研究によって明らかになっています。楽観主義より悲観主義が悲劇をもたらす可能性のほうがずっと高いのです。

はたして、悲観主義はどこからやってくるのでしょうか?19世紀のとびきり悲観的な哲学者がばら撒いた細菌なのでしょうか?

これを明らかにした点でポジティブ心理学者の第一人者であるマーティン・セリグマンが1991年に著した「Learned Optimismはまったく革新的な一冊でした。

▼日本語翻訳版は「オプティミストはなぜ成功するか」という題で出版されています。

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本書にはこんな一節があります。

人はいかにして悲観主義に陥るのか?

誰もが一時的には失敗や逆境によって打ちのめされるにしても、すぐに立ち直る人もいれば、それを未来永劫抱えてしまう人も居ます。後者を悲観主義というわけですが、なぜ人は多くの損失があると薄々気づいているにも関わらず悲観主義に陥ってしまうのでしょうか?

幼い頃の消すことのできないトラウマが原因なのでしょうか?DNAによって先祖代々伝わってきたのでしょうか?

否、否、三たび否!

マーティン・セリグマンはこれを「学習性無力感」「説明スタイル」「反芻」という3つのキーワードで説明します。

学習性無力感

1965年、マーティン・セリグマンとスティーブ・マイヤーによって学習性無力感(英:Learned helplessness)が発見されました。

簡単にいうと、犬でもネズミでも、サルでも人間でも、一度”自分は無力だ”と学習してしまうと、ほんの少しの努力で今の状況から抜け出せる可能性があっても行動しなくなってしまう症状のことです。行動によって引き起こされる罰や報酬とは無関係に、「反応しても無駄であるという信念」が行動を規定してしまうのです。

ときに学習性無力感はうつ病を引き起こし、長く続くようなら悲観主義を形成します。悲観主義はうつ病を再発させるだけでなく、人間関係を悪化させ、成績を低下させ、健康状態を悪化させ、選挙に失敗する可能性すら高めます。

実験から、オプティミストのほうが学校でも職場でもスポーツの分野でも、良い成績を上げることも分かっている。オプティミストは適性検査でも常に予想よりも高い点を取るし、選挙に出ればペシミストよりも当選する可能性が高い。健康状態も良くて、上手に年を取り、生活習慣病にかかる率もかなり低い。平均よりも長生きするという推測さえも、ある程度の根拠がある。

第1章 人生には二通りの見方がある

説明スタイル

では、どのようにして人は学習性無力感を身につけるのでしょうか。その鍵は「説明スタイル」にあるとマーティン・セリグマンは説きます。

説明スタイルとは、何かに失敗したときや成功したときに自分に対してその事象をどう説明しているかの癖といえます。面接の出来が悪かったときに「この会社の面接官は今日イライラしていたみたいだ」と考えるか、「自分はいつも大事な時にヘマをする」と考えるかによって、どのくらい強い無力感に陥るかが決まるのです。

鍵は”事象”そのものではなく、その事象の”説明”にあるのです。もし何かが起きた時に毎回自分に対して悲観的な説明スタイルをとっている人は悲観主義者になるというわけです。

”説明スタイル”とは、なぜこのようなことになったのか、普段自分に説明するときの方法である。これは学習性無力感を大きく左右する要素だ。

楽観的な説明スタイルは無力感に陥るのを防ぐのに対して、悲観的な説明スタイルは無力感を拡大してしまう。日常の挫折や大きな敗北を経験したとき、自分に対してどんな説明スタイルを取るかによって、どれほど無力感に襲われるか、または自分を奮い立たせることができるかが決まる。説明スタイルとは〝自分の心の中の言葉〟を反映するものだと私は考えている。

第1章 人生には二通りの見方がある

では悲観的な説明スタイルとはどのようなものなのでしょうか?それは永続性、普遍性、個人度の三つを兼ね備えた時です。悪いことはいつまでも続き(永続性)、それはあらゆる分野にも適用でき(普遍性)、自分が悪い(個人度)と説明するスタイルは、人を悲観主義へと導きます。

この説明スタイルを反転させれば、人を楽観主義へと導けることにもなります。

反芻

最後の要素が反芻です。無力感を覚えた時に悲観的な説明スタイルで自分に言い聞かせていたとしても、それが極端な悲観主義やうつ病を直ちに引き起こすわけではありません。

問題は、反芻の癖がある場合です。反芻とは、もともと牛などの動物が半分消化した食べ物を口に戻してかみ直すことをさします。転じて、ここでは過去の出来事に対して何度も繰り返し思い出しては味わおうとするような行為を言います。

何年も前の不幸を折りに触れて思い出しては自分に説明し直したり、最近の出来事を無理やり過去の出来事に紐づけては自分に説明し直したり、といった反芻を繰り返すことで悲観主義が強まっていきます。

人が思いにふけっている姿にこの言葉を使うのはあまり魅力的とは言えないが、まさにぴったりの表現だと思う。この反芻に悲観的説明スタイルが加われば、重症のうつ病へのお膳立てが調(ととの)うことになる。

第5章 考え方、感じ方で人生が変わる

学習性楽観主義を身につける

学習性無力感、悲観的な説明スタイル、反芻の3つが揃うことで人は悲観主義に陥ります。これが数々の悲劇を引き起こすわけですが、ここに希望も眠っています。メカニズムが分かれば、それに対処することも可能だからです。

本書はこのような悲観主義から脱却して、後天的に学習して時と場合に応じて楽観主義を活用できるようになる「Learned Optimism」(学習性楽観主義)を推奨しています。学習性楽観主義もしくは選択的楽観主義といってもいいかもしれません。

本書では悲観主義者が意識的に楽観主義者へと変身する具体的な手法についても詳しく論じられておりますので、楽観主義への転身に興味があるようでしたら是非手にとってみてください。

近年読んだ中では屈指のエキサイティングな一冊でした。

▼ 日本語翻訳版は「オプティミストはなぜ成功するか」という題で出版されています。

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貴下の従順なる下僕 松崎より

著者画像

システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。