アイデア出しが得意になると毎日がちょっと楽しくなる~書評:「企画のプロが教える「アイデア講義」の実況中継」by加藤昌治~

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私の愛しいアップルパイへ

これから真実を言いますからよく聞いてください。新しいアイデアを発想し、それを実行に移していくことこそ、人生に豊穣をもたらす根本的な能力です。日常に前向きな変化をもたらし、あらゆる物事を好転させるパワーがあります。

実際、新商品の開発、会議の進行、今日のランチ、飲み会での会話、旅行の行き先、結婚式のスピーチなど、仕事に限らずあらゆる所で新しいアイデアが求められているのです。

にも関わらず、アイデアの出し方や実行に移す方法などを習う機会はほとんどありません。大抵の場合、自分の経験則に頼っている状況です。実際にはもっとうまく行く体系的な方法がありそうなのにです。

そこでお薦めの一冊があります。アイデア本のベストセラー「考具 ―考えるための道具、持っていますか?」の著者である加藤昌治氏の新著「企画のプロが教える「アイデア講義」の実況中継」です。

アイデアを出して実行に移すためのコツと注意点

どのような分野でも、アイデアを出してそれを実行に移していくには共通のコツがあります。本書を読み解きながらポイントを見ていきましょう。

1.「考える」のルールは選択肢を出して選ぶこと
2.「換骨奪胎」を駆使してアイデアを他のことに転用する
3.アイデアは公私混同で考える
4.「わがまま→思いやり」の公式を守る
5.アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ
6.前代未聞のアイデアは必要ない

1.「考える」のルールは選択肢を出して選ぶこと

「考える」のルールは何なのか?それはずばり、「選ぶこと」です。そして、選ぶためには何が必要かと言うと、「選択肢」。つまり「考える」とは、「選択肢を出して、その中から選ぶ」。この2ステップが超基本のルールです。

P.29

優れたアイデアを出すためのステップはたった2つだけです。選択肢を出して、選ぶことです。そこで重要になってくるのが、とにかく選択肢を多く出すことです。選択肢の数が少ないと、イマイチな選択肢の中から選ぶしか無くなってしまいます。

ですから、いきなり優れたアイデア、突飛なアイデアを出そうなんて考えず、凡庸でも選択肢を出そうとする意識が必要です。選択肢は質より量なのです。

また、選択肢を出しながら選んでもいけません。思いついた選択肢が良いか悪いかをその都度判断していると、なかなか選択肢が増えなくなってしまいます。まずは出して、それから選ぶという2ステップを守ることが大切です。

2.「換骨奪胎」を駆使してアイデアを他のことに転用する

本書で換骨奪胎と呼ばれているテクニックがあります。

換骨奪胎とは、事例の抽象度を一段上げ(手口化)、事例の中にある「再び使える何か」を発見すること。

P.35

優れた前例からその本質の部分だけを抜き出して、自分のプロジェクトに適用するテクニックを身につけると、アイデアに困らなくなります。

3.アイデアは公私混同で考える

「考える」スポーツでは「公私混同」しろってことなんです。これ、みなさん割と苦手ですね。あるいは意識的に分けてる人がすごく多いみたいですね。もったいないと思います。

P.36

先ほど紹介した「換骨奪胎」を効率よく行うためのコツは、アイデアの元ネタを公私混同で考えるようにすることです。

常にアンテナを張っておき、プライベートで見つけた気づきを仕事のアイデアに転用できるようになると、アイデアの幅を一気に広げることができます。そのためには、自分のアンテナに引っかかったものをすぐにメモしておき、後から取り出せるようにする環境が必要です。

4.「わがまま→思いやり」の公式を守る

少々過激に定義づけすると、アイデアというのはまだ選択肢にしかすぎないのだから、わがまま放題で構いません。アイデアを出すというのは、個人のわがままを公の場に出すことなのです。

P.48

本書では、アイデアを実行に移す上での公式として「わがまま→思いやり」という公式が紹介されています。アイデアを出す段階では様々な条件付けを外し、何もかもうまくいくとしたら何をしたいかを考えるべきなのです。

アイデアを出す段階で予算の上限や納期などを思いやりはじめると、面白みに欠ける企画になってしまいます。まずは尖ったわがままを出し、少しずつ現実的な企画として整えていけばいいのです。

5.アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ

本書ではアイデアの定義として、ジェームス W.ヤングの「アイデアのつくり方」を引用しています。

先週読んでもらった『アイデアのつくり方』からの引用です。「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」。つまり、アイデアはゼロから生まれるのではないということ。「既存の要素」の組み合わせだと行っています。そこで問題になるのが、この「既存の要素」って何かということですが、私は「体験」だと定義しています。

P.58

外部の情報をいくら探しにいっても、なかなか優れたアイデアにはたどり着けません。アイデアの元ネタとなる既存の要素は「体験」だからです。ですから、闇雲に知識を増やそうとするのではなく、自らの体験を増やしていくことが、アイデアパーソンに求められることなのです。

6.前代未聞のアイデアは必要ない

アイデアの新しさ、とは何でしょうか?多くの人が抱くハードルが高すぎると感じています。アイデアパーソンが顧客に提案すべき新しさとは「自分の顧客にとっての新しさ」です。でも、なぜか前代未聞の誰も見たことのないようなアイデアでなければいけないと思い込んでいる人が多い。

P.91

いざアイデアを出そうとすると「見てろ!他に誰もやってないようなことを考えてやろう!!」と変に意気込んでしまうことがあります。そして1時間か2時間経ってから「ジーザス、、、まったく良いアイデアが出てこなかった」と意気消沈するのです。

大抵の場合そこまでのアイデアは求められていません。世界レベルのアイデアを出そうとするのではなく、今の自分を取り巻く状況において新しいアイデアで良いのです。

アイデアパーソンの入門書に相応しい一冊!

本書でも度々述べられているのですが、いくら発想法の種類を多く知っていてもあまり役にはたちません。発想法はツールに過ぎないからです。

本書は、発想法を駆使しようとするより前に、まずもって大切な心構えや考え方が学べるアイデアパーソンの入門書と言える一冊です。

初心者向けに分かりやすく書かれているので、アイデア出しとその実行方法についての基礎を学びたい方にお薦めです。

貴下の従順なる下僕 松崎より

著者画像

システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。