私の愛しいアップルパイへ
ノートの分類や階層分けを極力排除することについては、Zettelkastenがネットワーク型のデータ構造を持っていることと、構造ノートによってノートを構造化することについて語ったとおりです。
では、特定の種別やカテゴリに関する情報の付与は一切しないかというと、実はタグだけは使用します。タグとは以下のように文頭に「#」がついたキーワードの羅列です。
今日はノートにつけるタグの使い方について整理していきましょう。
必要なノートを探すためにタグをつけておく
ノートは作成段階で分類が明確になるものではなく、作成した後に時間の経過とともに徐々に分類が浮かび上がってくるものです。
また、知識のアップデートとともに分類は変容していくものであり、分類によって構造を整理し、メンテナンスし続けるのは現実的ではない。「エントロピーの法則」の通りです。
作成や構造化にあたってノートを分類したり階層化したりしようとするのはナンセンスであり、ほとんど無駄な労力になりかねません。ですから、分類や階層に依存せずに整理することがZettelkastenの原則です。
そう考えると、タグを使うことはこの法則に反するような気がします。しかし、これはZettelkastenを第二の脳として活用する上で現実的に有効なのです。
何が有効かというと、タグはノートを整理したり分類したりするためではなく、”注文”のために使用します。
ダイハードなZettelkastenの実践者であるSasha氏によれば、ノート間のリンク以外にノートの関連づけ(階層分けや構造ノート、そしてタグ)をする目的は”注文”にあるといいます。1
Zettelkastenによる第二の脳において、ノートはインターネットのそれのように互いにリンクし合いつながり合うことで知識のネットワークを構築します。その欠点の一つとして、どこから読み始めるかが自明ではない点があげられます。ノートが数万を超えるほど膨大になってくると、(どこから読み始めてもいいのですが)どこから読み始めればいいか分からないという問題に直面するわけです。
その解決策の一つとなるのがタグです。タグにキーワードを設定しておけば、あとで特定のことについて考察したいときに読み始めるトリガーとなります。つまり注文を簡略化できるようになるのです。
▼私はノートを作成したら冒頭に必ず1つ以上のタグを付与するようにしています。大体はそのノートに関連するプロジェクト名、引用元の著者や書籍タイトルなどの固有名詞、分野の名称、ノートの種別(構造ノート、議事録、作業ノートなど)を思いつく限り入れておくことが多いです。(使用しているアプリはObsidian)
タグであれば追加や削除は簡単ですし、厳密に管理する必要もないので手軽なのです。
▼このようにタグでノートをフィルタリングすれば、特定のテーマに関するノートを読みたいときにエントリポイントを探す手間が省けます。
Zettelkastenはノートをただ作成するだけでなく、当然効率的に読み返せるのが理想です。そのときにフォルダよりも柔軟にノートにキーワードを設定できるタグが活きてきます。
ちなみに、少々込み入った話をしておきますと、Zettelkastenではノートに”注文”する別の手段として2通りの方法があります。ノートの順番(シーケンス)によってノートに構造を持たせようとするFolgezettelと特殊なノートとして構造ノートを外部に作るStructureZettelの2通りです。
Zettelkastenの考案者であるルーマンはこのどちらも使っていたのですが、Zettelkasten実践者の中ではノートにシーケンスを持たせることの有効性について疑問視する人が少なくありません。先ほど引用したSasha氏もその一人です。
これについてはまた別途お話しできればと思います。
貴下の従順なる下僕 松崎より