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私の愛しいアップルパイへ
今日はどうしてもあなたに紹介したい本があるのです。実に素晴らしい本に出会ったのです。
ここ最近になって私が強い課題意識を感じていたのは、歳をとるとともに数字的なことや理にかなっていることばかりを優先的に考えるようになり、発想が縮こまったり惰性的な行動で満足してしまっていることについてです。こういった思考が日々の生活に下向きの螺旋を作ってしまうのは太陽の光によって明らかです。作曲をする私としては特に危機を感じる問題でした。
もっと直感的で感情的で創造的な部分を活かして、様々な実験を繰り返しながら溌剌とした生活を送りたいじゃありませんか!
そんな私の課題に答えを教えてくれたのが本書「クリエイティブ・マインドセット」です。まったく実にエキサイティングな本でしたよ。
創造性をとり戻して行動力を高める6つのポイント
あなたは自分は創造的なんてタイプじゃないと思い込んでいるかもしれません。ご安心ください。本書では冒頭でそれを痛快に否定してくれます。
幼稚園のころは誰もがクリエイティブだった。恐怖や恥ずかしさなんて感じずに、遊びや、おかしなことを試していた。そんなことをしちゃいけないという分別などなかった。何かやらかせば社会的に拒絶されるという恐怖は、歳を取るにつれて身に付けたものだ。
(本文より引用)
そして豊富な事例をあげて創造性を取り戻すことがいかに生活の質を向上させ、様々な難題に突破口を開いてくれるかを紐解きながら、常識的で頭コチコチな大人が創造性を取り戻す方法を教えてくれます。
今日はその中でも特に私が胸を打たれた箇所を6つご紹介します。
- 1.他人へ共感する力が創造性の源である
- 2.創造性は自分が創造的であると信じるところから生まれる
- 3.創造性は実験の量によって培われる
- 4.とにかくプロトタイプを作ってみる
- 5.創造性を発揮できるチームを持つ
- 6.創造性をスムーズに発揮できるメソッドを使う
1.他人へ共感する力が創造性の源である
人間中心の考え方は、イノベーション・プロセスの基本だ。人々に深く共感することで、観察を強力なインスピレーション源にすることができる。
(本文より引用)
あなたは創造性を高めるには頭の柔軟さと知識の量が必要と考えるかもしれません。というより、私はそう思っていました。しかし、違ったのです。
本書によると、革命的で斬新な発想の根源にあるのは人々への共感だと説きます。これは衝撃をうけました。なぜならアイデア発想といえば知識を武器に、会議室にこもって一人もしくは数人の関係者でウンウンと捻り出すようなことばかりしてきたからです。本書ではそれとほとんど逆の方法を提示してくれます。
つまり、外に出てエンドユーザーのところに入り込んで、ひたすらユーザーの動きを観察するのです。そして自分自身がユーザーになりきって、ユーザーが考えていることや感じていることに真に共感できたときにクリエイティブなアイデアが生まれるというわけなのです。
2.創造性は自分が創造的であると信じるところから生まれる
しなやかなマインドセットの持ち主は、人間の真の潜在能力は未知(しかも不可知)であり、何年も努力、苦労、練習を積めば、予測も付かないようなことを成し遂げられると信じているという。
(本文より引用)
本書では、先天的な理由によって創造的な人間とそうでない人間が分かれるのではないと断言しています。人が創造的であるために最も重要な要素は「自分で自分のことを創造的だと信じられるかどうか」なのです。本書ではこれを「創造性に対する自信(クリエイティブ・コンフィデンス)」と呼んでいます。
もしクリエイティブ・コンフィデンスを持とうとせず、自分はクリエイティブではないと心のどこかで思っていると、それが一番の足枷になるということです。その場合、創造的なことを試そうとする恐怖心を自覚して弱めることがまずもって大切です。
3.創造性は実験の量によって培われる
彼が仕事をするビジネスパーソンの約25パーセントは、マーカーさえ手にしたがらないのだという(彼はそういう人々を「赤ペン」タイプと呼んでいる)。また、50パーセントの人々(「黄色ペン」タイプ)は、せいぜい他人の絵にハイライトを入れたり、細かな点を付け加えたりするくらいしかしたがらない
(本文より引用)
これを読んだときにドキリとしました。確かにホワイトボードやコピー用紙に図を書いて説明するほうが手っ取り早いのに、図を書くことに抵抗を感じるという経験が私にもあったからです。そして、そういった躊躇が創造性を発揮する実験の数を減らし、結果的に創造性を育む機会を失っているのです。
創造性を発揮したり、訓練したり、それを活かすために一番必要なのはアイデアの質ではなく量です。以下の文章はそれを端的に説明しています。
「問題を解決するたったひとつの名案をずばっと思いつくのが創造性ではありません。何百回と試行錯誤を繰り返した末に最良の解決策にたどり着くのが創造性なんです
(本文より引用)
4.とにかくプロトタイプを作ってみる
プロトタイピングは、イノベーションの道具としても文化的な価値としても強力である。 「すべてはプロトタイプです。ですから、私は全員に〝これはプロトタイプですから〟と言いました。これにはふたつの意味合いがあります。ひとつは、失敗が許されるということ。もうひとつは、うまくいっていないところがあればフィードバックをくださいということです」とクラウディアは話す
(本文より引用)
創造性を育むために実験の数を増やすってのはプロトタイプを作ることです。論理的な解釈や数値的な分析にもとづいて高評価の得られそうな作品を作ろうとするよりも先に、アイデアのプロトタイプをいくつも作ってみることです。
ものによってはプロトタイプを作るのが困難なこともあるかもしれません。そういった場合でも、紙にイメージを描いてみるですとか、1/100スケールで作ってみるですとか、製品の広告を先に作ってみるですとかして、最小限の労力でプロトタイプを作れないか考えてみましょう。
5.創造性を発揮できるチームを持つ
新しい場所や予想外の場所に到達するためには、アイデアのキャッチ・ボールが欠かせないの
(本文より引用)
創造的なことに取り組むのは1人でもできますが、チームで取り組むとさらに効果的です。それぞれのアイデアを持ち寄ればとても1人では思いつかないようなアイデアが生まれるはずです。私のアイデアより、あなたのアイデアより、私たちのアイデアを作りましょう。
その際にはチームで創造性を発揮しやすくなる空気作りをするように注意しましょう。役職名を使わないですとか、相手の意見を否定しないといったルールを事前に決めて、アイデアを出しやすい空気を作ると良いでしょう。
6.創造性をスムーズに発揮できるメソッドを使う
内に秘めた想像力を解き放つのは、ほかの色々な物事と何ら変わらない。そう、練習すればするほど上達していくのだ。
(本文より引用)
本書では創造性を発揮するためのメソッドやツールを紹介してくれます。適切なメソッドやツールを使うことで、より練習や実験がしやすくなります。
例えば、いま考えていることから思考を徐々に広げていってくれる「マインドマップ」を使ったり、ユーザーの観察結果をまとめるための「共感マップ」を使ったり、アイデアを広げるためのフィードバックをもらうための「I like/I wish」などのメソッドを使えば、創造性を発揮する抵抗が薄れて練習しやすくなるはずです。
クリエイティブ・コンフィデンスを育てて世界を広げろ!
本書の冒頭ではこんな興味深いアンケート結果が紹介されています。
世界5カ国の5000人を対象とした最近の調査によると、日本以外の国の回答者たちは、日本が世界でいちばんクリエイティブな国だと答えました。ところが、日本がもっともクリエイティブだと回答した人の割合は、なんと日本人がいちばん低かったのです。
(本文より引用)
本書を読んで「創造性に対する自信(クリエイティブ・コンフィデンス)」を培えば選択肢が大きく広がるでしょう。新しい仕事の進め方や問題解決の手法を得ることができるはずです。
貴下の従順なる下僕 松崎より