前回までのjMatsuzaki
松崎少年は「世界の要求に1つ1つ全力で応えているうちに、いつのまにか人生がつまらなくなった」と看破したjMatsuzaki。
なぜ世界からの要求に応えると人生がつまらなくなるのか。jMatsuzakiは見透かしたように、ゆっくりと口を開いた…
第一の問題→決められた世界の窮屈さ
ずばり言うぜ。あんたの選んだ道には3つの問題があった。あんたはちょっとした違和感に気づいてたのに、見過ごしてたのさ。でも確実に感じてはいたんだ。ただ、大した問題だと思ってなかった。いや、思わないことにした。それが運の尽きだった。1つ1つ話してやろう。
第一の問題は、世界は窮屈だってことだ。思い出してみろ。あんたも高校に入った頃には違和感に気づいてたはずだ。
明るいタイプでもないあんたが幼稚園に行って、みんなと仲良くできるようになった。3年後には幼稚園を卒園して、今度は小学校に入った。6年間、毎日毎日ストイックに学校に行ったろ?努力したよなぁ。学校以外にも習い事にも通った。世界の要求に応えるために挑戦したんだ。すごいことだぜ。
やっと6年が終わったら今度は中学校だ。ここではじめて「おや?」って思っただろ?歯を食いしばって6年間、小学校って山を登った直後だもんなぁ。要求は多かった。生活リズムもそう、勉強もそう、コミュニケーションもそう。
それでも6年間の辛抱だって思って耐えた。それで、どうにかこうにか6年間の山を登りきった。先生も家族も喜んでくれた。友達とも喜び合った。あんたは自信を持っただろう。
それもつかの間、次は中学校が始まった。次の新しい山の始まりだ。景色は変わったが、大した変化は無かった。要求のレベルは上がったがな。
それでも3年間の山をウンウン言いながら登った。そしたら次はどうだ?今度はまた高校と言う名の新しい3年間の始まりだぁ!
あんたは世界に要求することを要求した。「さぁ、要求があればなんでも言ってくれ!みごとに応えてみせよう!」ってな。そして実際その要求にどんどん応えていった。しかし、世界の要求は尽きない。あんたはそれを15年くらい続けたら膿んできたんだ。似たような要求が次から次へと来て、化膿してきたんだ。
山を登り切っても新しい山が出てくるだけ
あんたは世界の要求に答え続ければ、いつか理想の素晴らしい生活にたどり着けると期待してた。やるべきことをやっていれば、幸福が訪れると信じてたし、実際そう習ったはずだった。山頂で優雅な生活を送れると思ってた。でも違った。山を登りきったら次の山が待ってるだけだった。
それでも見ないふりをした。いまさら疑うことも、下山することもできなかった。随分高いところまで登ったからな。だから、片目を瞑って生きることにしたのさ。世界の要求に応える自分に誇りを感じてたからだ。それが自分の価値だとも思ってた。だから時折ゲームをやったりテレビを観たり、友達とバカみたいにくっちゃべったりして、どうにか感覚を麻痺させてた。
あんたはいつも世界に窮屈さを感じていたんだ。いつしか、次の要求がだいたい想像できるようになっちまった。しかも、要求には終わりがないことにも気づいちまった。やってることは正しいんだからなぁ、余計に辛いだろうよ。
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