jMatsuzakiの次なるチャレンジについて~(6)限界的練習

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私の愛しいアップルパイへ

▼マルコム・グラッドウェル氏の一万時間の法則を鵜呑みにして、一万時間の法則が本当に正しいか自ら検証してみることにしたことは、以下でお話した通りです。

しかし、もちろんそれで終わりではありません。一万時間の法則は指標でしかなく、一万時間をどう捻出してどう使うのかといった問いが宙ぶらりんだからです。

今日は一万時間の中身をどう使っていくかについて見ていきましょう。

好きなことに没頭するとは、具体的に何をすることなのか?

この時期、私にとって特に重要な問いとなったのが「好きなことに没頭できる環境ができたとして、没頭するとは具体的に何をすることなのか?」といった問いでした。

思い返してみれば、確保できた限られた時間の中で全力を尽くすとか、自分の作品を作ることで経験を積んで成長するといった程度の考えしか持ち合わせていなかったのです。

実際、あるレベルまではこれでうまくいきました。しかし、半年か一年この戦略に基づいて行動して見た結果、少しずつ違和感を覚えるようになってきました。成長の頭打ちを感じたのです。

それにしても人間とは不思議なものです。自分の思考のなかに矛盾や極端な思い込みがあってもなかなか気づくことができず、都合よく解釈して放置してしまうのですから。

私は「好きなことに没頭していれば自ずと技能が成熟し、思いもしない結果に繋がるだろう」という、なんの根拠も戦略も信念もない妄想に、地球の美しさに魅了されて浮遊していたガガーリンのごとく囚われていたのです。

好きなことに没頭する時間と環境があるとして、その時間と環境を具体的に何に投入すれば最も理想的で効果的なのか?

私はこの問いに対する答えを持ち合わせていませんでした。そして、この連載の初めの頃、ただ漫然と時間を使うことに違和感を覚えた私の歩きは訳も分からないままに少しずつ鈍化していったわけです。

超一流への道を紐解くアンダース・エリクソン教授の「限界的練習」

素晴らしい幸運というものはまるで運命がそうさせたかのように、思いもしないところからベストなタイミングでベストな人を介して舞い込んでくるものです。

私が一万時間の法則に(今さら)反応したのも、一万時間の法則の根拠となった実験を行なったアンダース・エリクソン教授がついにその研究結果をわかりやすくまとめた本を出版したと聴いたからでした。

最初に話をしてくれたのは日常から生まれる的確なひらめきツイートが素晴らしいF太さんと、私がコーチングをお願いしているプロコーチである大下千恵さんでした。

アンテナ感度が高くてアイデアソースとして大変信頼している2人のカウボーイから、まったく別の話題のなかで、同時期にアンダース・エリクソン教授の名前を聴いたため私の脳に強く粘りつきました。

そして、その情報はまさに私にビンゴな情報でした。アンダース・エリクソン教授はバイオリニストやピアニスト、数学者といった超一流を育てることに一流の分野を研究し、それを他の分野にも応用するための法則を「限界的練習」としてテンプレート化しています。

アンダース・エリクソン教授は漫然と練習を続けても成長しないどころか腕は落ちていく一方であると説きます。そして、以下の条件にあった「限界的練習」を組み立てて日々取り組んでいくことが、あらゆる分野で超一流の技能を身につける方法であると説きます。

  • 知識(何を知っているか)ではなく、技能(何ができるか)を身につけることを主眼としていること
  • エキスパートの能力とその開発方法をもとに設計されたカリキュラムに基づいていること
  • 常に現在の能力をわずかに上回る課題に挑戦し続けること
  • 技能をいくつかの側面に分け、それぞれに明確に定義された具体的目標があること
  • 全神経を集中し、意識的に活動に取り組むこと
  • 定期的なフィードバックと、フィードバックに対応して取り組み方を修正すること

ただ好きなことに多くの時間を割くという漫然としたやり方に頭打ちを感じ、日常に膿んでいた私にとってまさに欲していた情報でした。

▼限界的練習については以下の記事で解説していますので、詳しくはこちらをお読みください。

限界的練習に基づいて道なき道を切り拓く

良き教師になるには?良き医者になるには?良き会社員になるには?良き上司になるには?良き職人になるには?良き技術者になるには?良き学者になるには?良き音楽家になるには?

このような抽象的で訓練方法がまったく確立されていない分野で一流を目指す人は、例外なく道なき道を歩くことになります。

そのなかで、自分だけの地図を作り、道なき道を切り拓いていくのは一筋縄ではいきません。私のように今歩いている道に猛烈な違和感を覚えつつも、軌道修正の方法が分からずに立ち尽くしてしまう人もいるでしょう。

アンダース・エリクソン教授の限界的練習は、道なき道の地図を作るベストプラクティスでしょう。

これで問題と対策が随分とクリアになりました。12月31 日生まれのアイスホッケー選手が、使命感と危機感を持ちながら自らの独自の分野を切り拓いていくには、一万時間を指標としながら限界的練習を日常に組み込んでいくことで超一流へと至る道を歩める

ここまでくれば次なるチャレンジが明確になったも同然です。あとは「やるだけやって様子を見てみるフェーズ」に入れます。

次回はこの連載の最後の記事として、次なるチャレンジをまとめた記事なるでしょう。

貴下の従順なる下僕 松崎より

▼ネクストッ!

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システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。