jMatsuzakiの次なるチャレンジについて~(4)使命感と危機感

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私の愛しいアップルパイへ

▼私の目の前に立ちふさがるレンガの壁について語ったのはあなたもご存知のとおりです。

今日から12月31日生まれのアイスホッケー選手の戦略について、少しずつ見ていこうと思います。まずは、このレンガの壁を突破するために必要不可欠となる2つの要素について考えていきます。

使命感と危機感

このレンガの壁を突破する方法について考えを巡らすなかで、私は遅咲きの夢想家が自分独自の道を切り拓くときに必要不可欠となる2つの要素を見出しました。それは使命感と危機感です。

使命感を身につける

まずもって必要なのは使命感です。何かを目指すときに「なぜそれをやるのか?」を深く考え、そこに強い使命感を見出すことは夢を現実化する鍵でもあります。「なぜそれをやるのか?」。私であれば「なぜ音楽家を目指すのか?」という質問を何度も自分にぶつけ、明確な回答を明らかにすることです。

使命感があれば、行動に一貫性を保ちやすくなります。私たちの生活をとりまく動物的な欲望や浅ましい欲望や怠惰な欲望をはねのけ、一貫性を保った行動を可能にしてくれます。

そのうえ、使命感と呼べるほど高いレベルで「なぜ?」を考えていれば、具体的な手段を選ぶときに自由さと柔軟さを得られます。例えば、「金メダルを取って注目される」より、「挑戦を通して人を勇気づける」という使命感を持っていたほうが、より自由で柔軟で幅広い選択肢のなかから自分の道を選べるでしょう。

「選択の科学」には自己の一貫性と柔軟性を同時に保つための現実的で、持続可能な方法として同様の提案をしています。

不一致を解消するもう一つの方法、長い目で見てより現実的で、持続可能な方法は、たとえば真実、道徳律、何かの理想の追求と行った、より高次のレベルでの一貫性を図ることだ。

(中略)

大切なのは、昔からずっと同じ自分でなくても、自分であることには変わりないという認識を持つことだ。

選択の科学 「第3講 「強制」された選択」

また、使命感は自分にとって優先順位の高いことを優先する後押しをしてくれます。日本人は特に「No」というのが苦手という話がありますが、これを解決するために図々しい性格になるよりは、自分だけの強い使命感を持つことでスマートに解決できます。

7つの習慣にもあるとおり、使命感はより大きな「イエス」のために、小さなことに「ノー」という勇気を与えてくれるのです。

ためらわずに「ノー」と言うためには、それよりも強い「イエス」、もっと大事なことが、あなたの内面で燃えていなくてはならない。多くの場合、「最良」の敵は「良い」である。

完訳 7つの習慣 人格主義の回復 「第3の習慣 最優先事項を優先する」

そして、使命感があればここぞというときに底力を発揮できます。夢を諦めそうになったとき、辛く苦しいとき、強い使命感はもうひと踏ん張りするパワーを与えてくれるでしょう。

危機感を身につける

もう一つの忘れがちな要素が危機感です。

私たちが私たち自身についてよく知っているとおり、いかに使命感があろうとも、いかに欲求が強くとも、いかに気分がよくなろうとも、自らの掲げる使命のために自分自身をうまく使うのは大変難しいことです。結果や報酬を得るのに数年を要する場合は特にです。

人間というのは必ずしも正しいと思っていることや好きなこと、必要なことを行動に移せる存在ではありません。ときには、いえおそらくは日常的に、不当なことも、嫌いなことも、不要なことも習慣化されているものです。

それらは人からの依頼ごとかもしれませんし、頭のなかでエンドレス リピートされている自己否定の声かもしれませんし、身近なコミュニティに流れている諦めの空気感に無意識のうちに影響されているからかもしれません。

原因がなんであれ、使命と行動を一致させるのは努力を要することです。そして、成長してから人生を再選択しようと決めた12月31日生まれのアイスホッケー選手が特に苦手とするのもこの領域になるでしょう。

親や周囲の期待を受けやすく、幼いころから「それをやって当たり前」の環境で活躍しやすい1月1日生まれアイスホッケー選手にとっては「自分は今こんなことをやっていていいのだろうか?」なんて悩みは生まれづらいものです。

しかし、12月31日生まれのアイスホッケー選手は逆です。親や周囲の支援が受けづらいので自立した生活をしなければならず、しかも孤独です。「まずはこれを片付けてしまおう」「あれを済ませてからにしよう」となりがちですし、「本当は他のことをすべきじゃないか?」といった疑念がいつも頭のなかに渦巻いています。「今は駄目でも、明日になれば…来年になれば…」といった甘い囁きも聴こえてきます。

「スタンフォードの自分を変える教室」には、人間の「明日はもっとできる」と考える習性についてこんな風に書かれています。

私たちは先のことを考えるとき、きっといまと同じように雑用に追われて忙しいだろうとは思いません。そのため、今日はやりたくないことでも、あとになればきっと時間も余力もあってできるはずだと思ってしまいます。そんなわけで当然のように後回しにして、遅れた分はあとで十分取り戻せるだろう、とのんきに構えてしまうのです。

スタンフォードの自分を変える教室 「第4章 罪のライセンス」

12月31日生まれのアイスホッケー選手は周囲のプレッシャーがない分、自由な選択肢を選びやすいメリットはありますが、使命感に沿った仕事を「今これをやって当たり前」な状態にするには苦労するでしょう。

「明日以降でいっか?」を許してしまう危機感の薄さ

結論をいえば、いまの私に圧倒的に欠けていると感じたのは「危機感」でした。

この5年間、時間の使い方を見直し、習慣を再構築し、夢とヴィジョンを明確にし、働き方を変えるなかで、想像していた以上に強い使命感を発掘することができました。

一方で、そのなかでも夢の中核となる音楽にいまひとつ没頭しきれない状態に頭を抱えていました。「良いアイデアが浮かばないから」といった言い訳をはじめ、「他に忙しい重要な仕事があるから」とか、「明日はガッツリ時間を取るから」といったもっともらしい言い訳に流されていました。その影ではゲーム時間が大量に増加していたのですから、自分の尻尾を追い回している犬のように滑稽なことです。

私は少しずつ自由な選択肢を手に入れながらも、いつも「明日から禁煙しよう」と嘯いているヘビースモーカーのような状態に陥っていました。「今日やらなければ、明日もやらないだろ!」ということを頭だけでなく身体で理解するのはなかなか難しいことです。「今日だけは特別」と考えるほうがずっと楽なのですから。

1月1日生まれのアイスホッケー選手が自然と休日返上で練習し続けてしまうような、良い原動力として機能する危機感が薄かったことを自覚しました。

良い原動力となる危機感を身につけるには?

では、良い原動力として機能する危機感とはどのようなものでしょうか。すぐに思いつくのは三種類あります。

第一に、人と約束することです。親や教師からの期待を受ける。同じ志を持った友人と熱い約束を交わす。もっと現実的なのは対価をもらうこと。社会に受け入れられ、認められることは誰もが持っている強いニーズですから、人との約束は強い原動力になります。これは1月1日生まれのアイスホッケー選手が最初に使うセオリーでもあります。

第二に、背水の陣を敷くことです。とても返済できないほどの借金を抱えたり、余命僅かな病気にかかったり、結果を出すまで出られない環境に身を置いたりすることです。ときにどん底の人が超人的な巻き返しによって驚くほどの結果を残すことがあるのは、背水の陣による常人には持ち得ない危機感が得られるからでしょう。

第三に、かけがえのない今日であることを頭に刷り込むことです。私たちの時間は間違いなく有限です。言うまでもなく刻一刻と死に向かっていますし、明日死んだってまったく不思議ではありません。今日がいつ終わるかも知れない有限なる時間におけるかけがえのない一日であることを実感できれば、間違いなく行動に影響を与えられるでしょう。

しかし、あなたもお分かりでしょうが、そのどちらも根本的な解決策としてはいまひとつスマートさに欠けます

第一の案は、そもそも守らないといけない約束ができる人間関係を作るには一定の努力が必要なので、ジレンマに陥ります。また、人に依存することで自由さを損なうという危険性も蔵しているので一長一短ですし、自由を愛する遅咲きの夢想家とは相性が悪いのです。

第二の案は、そもそも背水の陣を敷くことを狙って行うのは難しいことです。あえてハイリスクな環境に飛び込むのは映画化にはもってこいかもしれませんが、スマートとはあまりいえません。

第三の案は、以下でも書いたとおり、意識や思考を変えるのは行動を変えるよりもずっと難しいのです。それよりも行動を変えた結果として意識や思考を変えるほうがずっと確実で効率的なのですが、そもそも行動できないことが問題なのでこれでは堂々巡りになってしまいます。

孤独に独自の道を切り拓くことが強く求められる12月31日生まれのアイスホッケー選手にとっては、うまく機能する危機感を醸成することが大きな課題になるでしょう。そこで第四の案が必要なのですが、そろそろ良い時間ですので続きは明日にしましょう。込み入った話になりますので、今日はぐっすりと眠ってください。

貴下の従順なる下僕 松崎より

▼ネクストッ!

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システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。