私の愛しいアップルパイへ
かつて宮殿の浴槽でワイングラスに入れて飲んだ乙女の血のように、私の繊細かつデリケートな脳を満足させてくれる、何度も読み返したくなる本というものがあります。そのような本は、この慈愛に満ちた世界の本質を紐解く本であり、人生の教科書として折に触れて読み返したくなる本です。
ジェームズ・アレンの「原因」と「結果」の法則もそのうちの一冊です。本書は1902年に書かれたものですが、未だ色褪せません。デール・カーネギーやナポレオン・ヒル、アール・ナイチンゲールなどに影響を与えたとされ、自己啓発・成功哲学の原点と評されることもある本です。
本書の冒頭では「原因」と「結果」の法則について簡潔にこう表現されています。
「人間は思いの主人であり 、人格の制作者であり 、環境と運命の設計者である 」
「原因」と「結果」の法則 思いと人格
甘美!
環境が先か?思いが先か?
私たちが心を乱されるとき、それはある環境が心に作用したのでしょうか?それとも、心の中のある思いが環境を作り出したのでしょうか?
ヒエロニムス・ボッスの絵画のように不条理で不本意で苦痛に満ちている職場であなたが働いているとしましょう。当然心がかき乱され、落ち込んで、自暴自棄にもなるでしょう。
フランシス・ベーコンの絵画のように苦痛のあまり叫びだしたくなるような家庭であなたが過ごしているとしましょう。当然心は平常心を失い、暴走して、死を願いたくもなるでしょう。
しかし、こう考えることもできます。歪んだ心がその思いに相応しい環境を自ら生み出しているのではないか?と。
もしあなたが苦痛に満ちた環境に身を置いているとき、このような主張は到底受け入れられないかもしれません。しかし、そこで大理石像のごとく冷徹になってみることです。すると、どちらが「原因」でどちらが「結果」か分かるようになります。
あなたの思いが環境を作り出している
あなたは言うかもしれません。自分の外にあるものを変えることはできない。論理的に考えれば、環境と心が同調したのなら、環境に心が影響されたのだ、と。
これに力強く「NO!」を突きつけてくれるのが本書です。環境が自分に影響を与えているのではなく、他でもない自分の思いが環境を作り上げているのだと。あらゆる結果は、つまり喜びや楽しさという感情も、人格も、行いも、成功も、自らの体形も、身の回りの人間関係も、あらゆる結果に対する原因は自分の心にある思いなのです。
思いと人格はひとつです。そして、人格は環境を通じて、それ自身を表現しています。よって、私たちの環境は、私たちの内側の状態とつねに調和しています。
「原因」と「結果」の法則 思いと環境
思いが環境を生み出している!なんたる発想の転換!獣のような思いを持っていれば、獣に相応しい環境が訪れる。聖人のような思いをもっていれば、やはり聖人に相応しい環境が訪れるということです。
人によっては理にかなっていないと鼻で笑ってしまう内容かもしれません。しかし、理にかなっていることがどれほど重要だというのでしょうか?実際のところ、人間の考える論理で説明できることなんて、いったいどれほどあるというのでしょうか?
自分の心の思いを整えることにもっと時間を使っていい
あらゆる結果の原因は自らの思いである。これは誰もが頭のどこかでは感じていたこの世の原則ではないでしょうか。
そして、本書から得られる重要な教訓の1つは、もっと「原因」を養うことに時間を使っていいのではないか?ということです。稚拙な「原因」は稚拙な「結果」を生み出します。至高の「原因」は至高の「結果」を生み出します。
ダイエットについて考えてみましょう。ダイエットしたいと思う一方で、不健康なものを満腹になるまでバカ喰いしたいという思いが存在すれば、その矛盾に満ちた歪んだ思いが肥満という形で結果を生み出します。もし本気でダイエットしようと思ったなら糖質制限を始めるよりも前に「原因」と「結果」の法則についてよく知り、心を整え、ヴィジョンを描き、欲望のコントロールについて知ることです。
ですから、素晴らしい「原因」を養うための様々な取り組みをもっと生活に組み込んで然るべきなのです。多くの人は、職場や職業など環境を変えることに熱心ですが、「原因」を変えることには消極的です。ですから、結果(ここでは職場や職業や給料や待遇や組織)が変わらないのです。
「原因」を養うこと、それはカウンセリングやコーチングを受けることかもしれません。週に一回、自分の行動を振り返って内省的になることかもしれません。瞑想などマインドフルネスを実践することかもしれません。
いずれにせよ、心を整えること、つまり「原因」を整えることには一切の妥協も、時間やお金の出し惜しみもするなってことです。そして、これはいま本当に多くの場でまったく軽視されている原則の1つだと思います。
偶然の要素などありません。本書は力強く断言します。
私たち人間は、私たちを存在させている法則でもある「原因と結果の法則」にしたがい、つねにいるべき場所にいます。私たちが自分の人格のなかに組み込んできた思いの数々が、私たちをここに運んできたのです。よって、人生には、偶然という要素はまったく存在しません。私たちの人生を構成しているあらゆる要素が、けっして誤ることを知らない法則が正確に機能した結果なのです。環境に不満を感じていようと、満足していようと、同じことです。
「原因」と「結果」の法則 思いと環境
貴下の従順なる下僕 松崎より