スタンフォード監獄実験の最高責任者フィリップ・ジンバルド氏によるTED講演がよかった!人はいかにして怪物や英雄になるのか?

Philip Zimbardo: フィリップ・ジンバルド:普通の人が どうやって怪物や英雄に変貌するか

私の愛しいアップルパイへ

友人のカウボーイに教えてもらったTEDの講演動画が大変よかったのであなたにもお知らせします。なんとこの講演は、映画化もされて有名となったかの「スタンフォード監獄実験」の最高責任者である心理学者フィリップ・ジンバルド氏によるものなのです。

▼スタンフォード監獄実験を映画化した「es」は有名ですよね。

この講演内容も「スタンフォード監獄実験」のテーマと同じく、人はいかにして怪物になるのか?もしくは英雄になるのか?です。

善人が一瞬にして悪人に変わる「ルシファー効果」

フィリップ・ジンバルド氏は善良なる一般人が怪物にも英雄にもなれることを実験を通して調査し、証明してきた方です。彼はシステムや状況によって善人が一瞬にして悪人に豹変することを「ルシファー効果」と呼びます(ルシファーは最も有名な堕天使の名前ですね)。

▼「ルシファー効果」についてはフィリップ・ジンバルド氏が著書を出版されています。

「ミルグラム実験」や「スタンフォード監獄実験」はルシファー効果を裏付ける最も有名な実験でしょう。ルシファー効果は人工的な実験に限らず、現実世界でも日常的に起きています

普段は穏やかな人が役職を得たと同時に鬼上司になったり、普段は優しい人が平気で生徒を殴る鬼教師になったり、穏便だった母親が平気で子供を虐待したり、といった具合です。

世界的なニュースになったものとしては、イラク戦争でアメリカ兵が捕虜に過激な拷問をしていたことで世を騒がせた「アブグレイブ事件」や、900名以上の信者を集団自殺に追い込んだ人民寺院のジム・ジョーンズなどが有名です。

ルシファー効果が発生する条件

では、ルシファー効果はいつ起きるのでしょうか。多くの人はそれが1つの”腐ったリンゴ”によってもたらされると考えています。しかし、フィリップ・ジンバルド氏はこれにNOを突きつけます。

フィリップ・ジンバルド氏によれば「ルシファー効果」をもたらすのは1つの腐ったリンゴではなく、システムが個人が堕落する状況を作るのです。システムとは、法や政治、経済や文化的背景のことであり、そのシステムの中で権力が暴走したときに”腐った樽”を作りだします。つまり、ひとたび腐った樽ができてしまえば、誰もがルシファーになりかねないということです。

講演の中でジンバルド氏が言っていている通り「人は正と負の性格が複雑に混じり合った合成物質で、状況にしたがってどっちかが出てくる」ってわけです。

もし人を変えたいなら状況を変えることです。特にシステム上に監視のされていない権力が存在していないかが重要なポイントです。監視されていない権力が容易に腐った樽を作ってしまうからです。

普通の人が どうやって怪物や英雄に変貌するか?

このTED講演のなかで特に注目したいのは、フィリップ・ジンバルド氏自身の主張によれば人は状況によって怪物になることがあるだけでなく、英雄になることもあるという希望についても熱く語っている点です。

システムと状況によって怪物が生まれるのであれば、それによって英雄もまた生まれる可能性があるということです。

ジンバルド氏によれば、英雄的資質とは英雄的な行為をする普通の人々です。つまり、英雄とは英雄的な資質を持った特別で例外的な人間なのではなく、驚くべき社会活動ができる一般人なのです。ジンバルド氏は私たちは誰でも”待機中の英雄”だといいます。なんと素晴らしい希望でしょうか。では、何が英雄と怪物を分けるのか?必要なのは英雄になるための準備です。

フィリップ・ジンバルド氏によればそれは2つあります。

  1. 他の人が受身なときに自分から行動を起こす
  2. 自分中心でなく社会中心に行動する

▼講演動画の全編は以下より観られます。実に示唆に富む講演なので、ぜひご覧ください。

Philip Zimbardo: フィリップ・ジンバルド:普通の人が どうやって怪物や英雄に変貌するか

貴下の従順なる下僕 松崎より

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システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。