私の愛しいアップルパイへ
時おり、習慣化について語られるとき、アスリートが試合中だけでなく試合前後の行動も完全にルーティンとして、一挙手一投足たがわぬ行動をとっていることが取り上げられます。
その度に私は「Lächerlich!」(お笑いだわ!)と叫ばずにはいられなくなります。
私はずっと不思議に思っていました。それが理にかなっている、有効である、効果的であると知っているのに、何故ほとんどの人はそれをやらないのだろうか?と。
朝起きてからバッターボックスに立つまで完全にルーティン化することは、努力は必要でしょうが、決して我々にできないことではないというのに。
私はバッターボックスに立つことはないし、ましてや野球選手ですらなく、アスリートでもないのにそこまで徹底する必要はないですって?
オーマイゴッシュ!
我々はアスリートに劣らないほどハードな働き方を毎日している
まず持ってお伝えしておくべきは我々はアスリートと言っても過言ではないくらいハードな仕事を日々行なっているということです。ある面ではアスリートよりも過酷かもしれません。
長年プロのアスリート達のトレーニングに携わってきた心理学者のジム・レーヤー氏は、我々のような現代の職業人を指して「コーポレート・アスリート」と表現しました。
ビジネス界のクライアントが増えるにつれ、私たちにはまったく予期しなかった発見があった。ビジネスマンはプロスポーツ選手たちより、ずっと過酷な戦いを強いられている、ということだ。
どうしてだろうか。
よく考えれば、これは当たり前の話だ。プロのスポーツ選手は、全体の一〇%の時間にすぐれたパフォーマンスをするために、残りの九〇%の時間をトレーニングに費やしている。「限られた勝負の時間に必要なエネルギーを注ぎ込む」──これを目標に生活のすべてを組み立てている。
(中略)
ところが、ビジネスマンはこうした訓練をほとんどしないままに、一日8〜10時間、ときには12時間も勝負しつづけることを求められているのである。
成功と幸せのための4つのエネルギー管理術―メンタル・タフネス 第1章 フル・エンゲージメントとは何か
確かに考えてみれば、私たちの通常の働き方というのはアスリートと言ってもいいほど十分にハードです。週に5日、朝から晩まで頭を使い倒し(場合によっては早朝から終電まで!)、その上プロのスポーツ選手ならば当たり前に存在するオフシーズンすら無いのです。
その上、仕事は日々複雑化し、求められる能力も年々高まっています。まさにコーポレート・アスリート!
朝起きてバッターボックスに立つまで完璧にルーティン化することを何故みんなやらないのか?
にも関わらず、野球選手が朝起きてからバッターボックスに立つまで完全にルーティン化する話を聞いて、ほほうと老いたロバみたいに首を縦に振って感心するだけで多くの人は終わらせてしまいます。
野球選手に限らず、プロのスポーツ選手達のほとんどが独自のルーティンを作っていることはよく知られていることです。
そのようなことは努力すれば間違いなく誰でもできることです。毎日ハードに働いている私たちが同じようなことをしない理由などあるでしょうか?(否、無い!)
私たちにとってバッターボックスは仕事を始めた時です。私なら愛用のパソコンの前に立った時がバッターボックスです。朝起きてから仕事場に行き、仕事道具を手に持った瞬間までのルーティンにもっと徹底的にこだわることは、もっと広まってもいいのではないでしょうか。
▼私はTaskChute Cloudを使って、朝起きてからバッターボックスに立つまでを完全にルーティン化しています。これはバッターボックスに立つまでの昨日のログです。
順序を最適化したり、細かい動作を入れ替えたりとチューニングすることはありますが、この数年は起きて仕事を始めるまで(実際にはそのあと数時間も含め)、ほとんどずっと同じ手順を毎日のように繰り返しています。今日も昨日も一昨日もその前も、完全に同じ内容を同じ手順で行って、仕事を開始しています。
幸い、現代であればこのくらいのことであればツールを使えば特別なコーチを必要とせずとも簡単に独力で実行できます。
儀式化すればより複雑で創造的な仕事に没頭できるようになる
一連の行動を儀式化して習慣化すれば、それらに使う労力が最小限に抑えられ、より複雑で創造的な仕事のためにリソースを温存できます。
それだけでなく、決まった儀式は仕事を始める前に心身を適切に整えてくれます。いざ仕事を始める段階になって、ハイパフォーマンスを発揮する土台ができている状態になるのです。
このような儀式を持っていなければ、いざ仕事場に行っても頭が冴えずにダラダラとメールを見たりニュースをチェックしたりして、朝一番の最も頭が冴え渡ってエネルギッシュな時間帯を無駄に浪費することになります。これほどの不幸が他にあるでしょうか?(否、無い!)
先ほど紹介した本「メンタル・タフネス」には、ポジティブな儀式を作り込むことの効能が端的にまとめられています。
負荷をかけては回復をはかるというパターンで筋肉を鍛えることができるように、自己管理の「筋肉」も計画的に強化することが可能だ。トレーニング方法は同じ。自制心や共感能力、忍耐力を通常の限界を超えて使い、そのあとで回復の時間をもてばだんだんと強くなってくる。だがもっと確実なのは、意識的に意志や自制心の強化をはかるよりも、ポジティブな儀式を作り上げることで、やらなくてはならない行動を自然に、より少ない労力で、できるだけすばやくできるようにもっていくことだ。
成功と幸せのための4つのエネルギー管理術―メンタル・タフネス 第10章 ステップ3 − 行動を起こす
アスリートに劣らないほどハードな仕事を日々こなしている私たちが、実際のアスリートを見習って徹底的に儀式化に取り組めば、今よりずっと複雑で創造的な仕事に没頭できるようになるのです。
貴下の従順なる下僕 松崎より