jMatsuzakiの次なるチャレンジについて~(終)一万時間チャレンジ

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私の愛しいアップルパイへ

12月31 日生まれのアイスホッケー選手が、使命感と危機感を持ちながら自らの独自の分野を切り拓いていくために、一万時間を指標としながら限界的練習を日常に組み込んでいくことで超一流へと至る道を歩める。これが大方針として固まったのは以下でお話した通りです。

私はこのjMatsuzakiの次なるチャレンジを「一万時間チャレンジ」と名づけることにしました。一万時間ってのは1日3時間で10年かかる計算ですから(無論、せっかちで貪欲なる私はそんなに長い期間をかけるつもりはありませんが)、大変気合の入ったチャレンジです。

一万時間を鵜呑みにして限界的練習に取り組む中で、一万時間という数字がどれだけ有効に機能するのか、一万時間後に人はどうなっているのか、我が身をもって検証するつもりです。

「一万時間チャレンジ」への取り組み

この連載の締めとして、具体的な一万時間チャレンジのやり方について見ていきましょう。

一万時間チャレンジの面白いところというのは、自分に最適なカリキュラムを戦略的に構築し、それを実践しながらどんどん洗練させていくことにあります。

まさに12月31日生まれのアイスホッケー選手にぴったりの戦略なのです。

この取り組みについては2週間ほど前からテスト的に始めているので、その様子を見ていきましょう。

エキスパートから戦略的にカリキュラムを作る

アンダース・エリクソン教授の「限界的練習」が、決められた時間内で全力で取り組む練習と一線を画しているのは、エキスパートを分析して戦略的にカリキュラムを作るところにあります。

▼私はまず私が偉大と認めるアーティストを洗い出し、彼らを偉大なものにしたと思われる技能を想像しうる限り洗い出しました。また、いきなり全てに取り組むことはできませんので、優先度を決めていきます。

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▼続けて、最優先の技能ごとに訓練方法、フィードバックの受け取り方、ゴールや練習頻度などを決めます

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ここではアンダース・エリクソン教授の「限界的練習」の原則に沿って自分に今必要と思われるカリキュラムを固めていきます。

芸術活動など「誰が一流なのか?」が難しい分野ではまずもってここが難しいところですが、これは今まで培ってきた知識と感性を信じて判断することになるでしょう。逆に、競技性の高いものはスコアから客観的に誰が一流なのかを判別しやすいので、割とスムーズに進むかもしれません。

ここまででエキスパートの特定、技能の特定、それを習得する具体的な手段が固ったことになります。

次なる目標をアップデートしながら実験的に取り組む

技能ごとの限界的練習方法を定めたら、技能ごとに次なる目標としてマイルストーンを定め、目標に向かって訓練を積み重ねていきます。

▼私は以下のように技能ごとに次なる目標を定め、それに取り組んだ時間を日々管理することにしました。この合計が一万時間に達した時に「一万時間チャレンジ」が完遂するってわけです。

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▼このように技能の次なる目標ごと、日毎に取り組んだ時間を記録して振り返ります。結果、自分に必要と思われる新しい技能が発見されたらその度に追加することにしました。

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音楽家という分野においては「何が正解かはわからない」性格が強く、階段を一段登ってみてから次の段を作るといったやり方になるので、ここでは技能ごとに1年計画や5カ年計画のような中長期計画をたてることは避けました

次の目標の達成に取り組み中で必要と思われる技能のリストを随時アップデートしていくスタイルにすることで、実状にそった柔軟で的確なカリキュラムを作れるようにするためです。

一万時間の指標でかけがえのない1日を自覚できる

現在、このチャレンジを日常に組み込んでみて数週間経ちましたが、良い危機感を醸成することができています。

一万時間という指標に対して、1日の訓練時間の目標と実績を把握できるので、今日という日がかけがえのない1日であることが定量的に判断できるからです。

連載の第4回で話したような、人からの依頼を受けたり、背水の陣を敷いたり、人生には終わりがあると自分に言い聞かせたりするよりもずっと良い意味での危機感を生み出せています

▼イベントを入れすぎるとこのように限界的練習に手をつけられなくなり、そのしわ寄せを否応なく自覚できます。これは他人から「もっと働きなさい!」などと言われるよりずっと真っ当なフィードバックを受けられます。

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▼日々の記録から、このように1日の平均的なペースと目標との差分をダッシュボード的に表示しておくことで、より分かりやすいフィードバックを受けられます。

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これなら、今日手に付かないならば明日も同じく手に付かないであろうことが記録を振り返れば明確にわかります。そして日々着実に、目的に向かって前進できているという実感を与えてくれるのも大きなパワーを与えてくれます。

これらはシステムとしてまだまだアップデートの余地があることを自覚していますが、すでに自分を律する土台としてはうまく機能しはじめています。

変化・成長のプロセスが前向きな推進力になる

この取り組みによって私自身についてよく分かったのは、変化や成長というものが特段パワフルな推進力として機能するということです。

技能ごとに目標を達成していくことで、新しい知識と技術が身についていきます。自らの変化と成長を実感できるのは、とても大きな快感です。

アンダース・エリクソン教授の話にもありましたが、一流のプレイヤーというのは課題を克服する達成感や結果につながった喜びではなく、自分の技能を使うこと(そしてそれがアップデートされていくこと)自体に喜びを覚えるのだそうです。

こういった自身の変化や成長のプロセス自体が喜びに変わる時、生活に素晴らしいサイクルが生まれます。承認欲求に振り回されることなく、歯を食いしばって燃え尽きることなく、自然な形で訓練を推進してくれます。

この一連の取り組みは、はやくも限界的練習自体を快感に変えてくれています。私自身、とても大きな可能性を感じているところです。

私が真に偉大と認める存在へ現実的な方法で歩を進める覚悟が決まった!

かくしてレンガの壁を特定し、それを突破する方法が定まりました。あとはこの次なるチャレンジ「一万時間チャレンジ」をやるだけやって様子をみてみることにしましょう。

最後に一つ、こんなことを言うのは野暮ってものかもしれませんが、私は心配性なので言っておきましょう。決して勘違いしていただきたくないのは、この連載を通してお話してきたのは「将来が分からないから不安だ」とか、「自らの才能の無さに対する嘆き」などではないということです。

私がお話してきたのは徹頭徹尾、私が一切の妥協なく真に偉大と認めるアーティスト(例えば、先日亡くなったDavid Bowieのような!)と肩を並べる超一流の音楽家へと至るために、私はいま具体的に何を最優先すべきか?といった問題です。

好きなことに没頭すれば道は勝手に拓けるといった類の思考停止に陥らず、自らが偉大と認める存在へ歩を進める覚悟を決め、それを現実化する方法について真剣に考える過程を見てきたつもりです。

これらが、私と同じく道なき道を歩く夢みるリアリストの糧となれば飛び上がるほど嬉しいです。

この戦略が本当に正しいかどうか疑問ですって?ご安心ください。途中経過はこの愛すべきブログに来ればいつでも分かりますから。

すべてのダイハードな夢想家どもに、幸運を。

貴下の従順なる下僕 松崎より

著者画像

システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。