暇つぶしではない!ゲームをとことんやりこんだほうがいい6つの科学的な理由

私の愛しいアップルパイへ

▼本記事の内容は以下の動画にまとめましたので、より詳しく知りたいときは、こちらをご覧ください。




いま人間界ではPokémon GOなるものが流行っているそうですよ。慈悲深いあなたならすでにご存知でしょうか?

え?ご自身でお試しなのですか?あなたのような御方が?飽くなき探究心。さすがでございます。

それにしても、人間というのはときに面白い反応を示す生物ですね。なんてったってゲームを暇つぶしだとか、気晴らしだとか、現実逃避だとかで片付けたがる人間が多いのだそうです。

もちろん、なかには賢い人間もいるようで、ジェイン・マクゴニガル氏の「スーパーベターになろう!──ゲームの科学で作る「強く勇敢な自分」」なる本ではゲームがいかに人生にポジティブでパワフルな効果を発揮するか科学的に解明しています。

え?興味がありますか?よろしい、それでは本書の概要をまとめてお話しましょう。

ゲームフルに生きれば人生をもっと強く、幸せに、勇敢になれる!

本書「スーパーベターになろう!」では、ゲームデザイナーであり科学者でもある著者が、ゲームが人間にいかにポジティブな効果をもたらしてくれるかを科学的に解明してくれています。スポーツやボード・ゲームなどもゲームの対象として含まれていますが、近年一気に発達したテレビ・ゲーム、ビデオ・ゲームの効果について特にフォーカスされています。

デジタルゲームにおいて、わたしたちは八〇パーセントの確率で失敗する。平均すると一時間に十二から二〇回失敗していることになる。この極端に高い失敗の確率と頻度のおかげで、プレイヤーはすぐにガッツと忍耐を養い、ミスから効率的に学習する能力を身につける。

第一部 どうしてゲームでスーパーベターになれるのか

ゲームをやったことがあるなら思い出してください。自分がゲームをプレイしているときの状態を。ゲームを楽しんでいるときはみんな現実世界より心が強く、失敗を恐れず、楽観的で、創造的で、勇気があって、協力的で、精神力が高まっています。これを実生活にも応用できたらどれほど効果的かは説明しなくても分かるでしょう。著者はこれを「ゲームフル」な状態と定義して、ゲームがいかに人生にポジティブでパワフルな効果を与えてくれるかと、ゲームを実生活に役立てる方法を教えてくれます

私の少年時代がそうだったのですが、テレビ・ゲームというものが出てきたばかりのころは新しいものを受け入れられない大人たちは右往左往し、狼狽え、挙句の果てにはゲームをやるとバカになるとか、ゲームするくらいなら勉強しろとか、ゲームなんて身にならないことをするなとか、時間の無駄だなんて根拠もなく罵られたものです。

そのため、いまでもゲームをすると罪悪感を覚えるという人は多いでしょう。でも、そんなことはなかったのです!ゲームはすでに単なる気晴らし以上の素晴らしい活動であるということが、数々の研究結果によって分かってきているのですから。

暇つぶしではない!ゲームをとことんやりこんだほうがいい6つの科学的な理由

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それでは、本書のポイントを解説しながら、ゲームをとことんやりこんだほうがいい6つの科学的な理由をまとめていきましょう。

1.特定の出来事から注意をそらせられる

ゲームをプレイすれば誰でも実感できるのは、注意力のコントールでしょう。人間の注意力はスポットライトのようなもので、ひとつの情報源に集中するとほかのものは遮断されます。ゲームはこの注意力を集中させるパワーが特に強いのです。スポットライトの対象をコントロールするのは難しいのですが、ゲームをやっているときに人はゲームに集中することで自然と注意のスポットライトをコントロールしています。この注意のスポットライトをコントロールできる機能は様々な場面で役に立ちます。

例えば、スノーワールドという氷の世界を歩きまわるゲームをプレイすると、火傷治療において三〇~五〇パーセントも痛みを軽減することが分かっています。これはモルヒネの投与より大きな効果だそうです。重度の火傷は人間が経験しうる最も激しく長い痛みとも言われているのですから、どれほどゲームが治療に役立っているかは想像に難くないでしょう。

スノーワールドに限らず、視覚処理回路を使うものであれば同様の効果を得られます。特に、テトリスやツムツムのようなパズルゲームは最適です。

あなたが火傷の治療をする必要がなかったとしても、傷口を消毒するときや、歯医者の待ち時間中に虫歯の痛みを忘れたいときにはパズルゲームをすれば同じ効果を得られます。

それ以外にもPTSDを引き起こすようなショッキングな出来事に遭遇した場合には、直後に10分間だけテトリスをプレイすることで、はやく立ち直れることが研究結果で分かっています。例えば、凄惨な事故現場に出くわしてしまったときには、すぐにテトリスをプレイすればトラウマを回避できるということです。

ほかにも、悪癖を断つときにもこのゲームの機能は役立つでしょう。例えば、禁煙中にタバコが吸いたくて吸いたくて仕方なくなったときは10分間テトリスをプレイするルールにすれば、注意のスポットライトをコントロールして、禁断症状を緩和できるはずです。

もしくは、強烈な不安やストレスのせいで行動力が著しく低下しているときに、テトリスのようなパズルゲームが力になってくれるでしょう。ゲームは注意のサイクルを破壊してくれるからです。

2.瞑想と同じフロー状態になれる

ゲームは単に注意をそらす以上のパワーを発揮することができます。それはフロー状態と呼ばれる状態を意図的に作り出せることです。”フロー”とは、ある活動に認知能力が完全に奪われている状態のことをいいます。

時間を忘れてなにかに没頭した経験が1度くらいはあるでしょう。この目の前にあるチャレンジに我を忘れて没頭している最高にエネルギッシュな状態がフロー状態です。

このフロー状態を意図的に引き出せれば、最高のパフォーマンスを発揮できるでしょう。例えば、仕事で意図的にフロー状態を発揮できれば、あなたの成功は確約されたも同然です。

ゲームの素晴らしい点は、簡単にこのフロー状態になれることです。ちなみに、気晴らしとされているほかの娯楽、例えばテレビや映画、音楽鑑賞、読書でこうしたフロー状態を誘発することはほとんどありません。なぜなら、ゲームほどチャレンジングでインタラクティブではないからです。

ゲームをプレイすればより効率的に自分をフロー状態に持っていけます。そしてフロー状態は苦痛や不安といったネガティブな情報を遮断し、心と体の健康を改善してくれます。そして、ゲームを通してフロー状態になった自分をよく観察すれば、日常生活や仕事においてフロー状態を作りだす方法を見つけることも可能でしょう。

フロー状態かどうかは、脳波と心拍変動によって確認できるそうです。この変化の状態は瞑想中の人と同様の反応であり、ゲームをプレイすれば瞑想とほとんど同じ効果を得られることが分かっています。瞑想はいかにもストイックで続かないなら、ゲームをプレイすればはるかに簡単に瞑想の効果を得られるのです。

3.人間関係を改善できる

大抵のゲームは人と対戦したり、協力したりできます。そして、対戦でも協力でも人間関係を強化したり、他者とより多くの共通点を見つけたりする方法を学べるのです。

ゲームを一緒にプレイするとシンクロ現象というものが引き起こされます。表情、心拍数、呼吸、神経活動がシンクロして、共感度や社会的な絆が強化されるのです。誰かとシンクロすればするほど、相手に好感を持ったり、将来その人を助けたりする可能性が高くなります。

シンクロ自体はゲーム特有のものではありません。人はゲーム中に限らず、つねに他人を無意識に模倣し、真似しあっています。相手が笑顔になれば笑顔で返す、一緒に歩いていると自然と横並びになる、という具合に。これは社会的な交流を成功させて、生存し続けるための人間に備わる能力だそうです。

しかし、ゲームはほかの活動よりもはるかに高い強度のシンクロ現象を引き起こしてくれます。ゲームのプレイには通常の社会的交流よりもずっと複雑で強力なシンクロが必要になるからです。

ゲーム中は一緒に歩いたり会話したりするよりも予測不能で、つねに決断を迫られています。そのため、緊密なシンクロ状態が形成されます。この緊密なシンクロ状態が、人と仲良くなって絆を深めるためにパワフルな効果を発揮してくれます。

例えば、一緒にビデオ・ゲームをプレイすれば親子の連帯感は向上します。自閉症の子でも活発なコミュニケーションができるようになるのです。

4.差別や偏見を減らすことができる

先ほどお話したのはシンクロ現象によって特定の人との人間関係を改善するパワーについてでした。ゲームはさらに広い範囲でパワフルな効果を発揮できます。世界中の人をもっと好きになることができるのです。

研究結果によると、Wiiスポーツのボウリングゲームを見知らぬ人とプレイすると、相手を好きになるだけでなく、その人と似ていると感じる世界中のあらゆる人のことをもっと好きになるそうです。

一緒にテレビを観たり、芸術や工作に取り組んだりすることでお互いのことをもっと好きになることはできます。しかし、相手だけでなく世代も国境も越えて世界中の人を好きになるのはゲームをプレイしたときにしか起きなかったのです。

その理由は、先ほどご説明した緊密なシンクロ状態によるものです。ゲームをプレイするとき、私たちは同じ条件で、同じ土俵に立ち、同じルールに従い、同じ目標を目指し、お互いがフェアであることに合意します。

このゲームという平等と信頼が確約された共通の基盤によって形成される強度の高い緊密なシンクロ状態を使えば、その人を連想させるすべての人への共感が増すのです。

実際、イスラエル内のアラブ人とユダヤ人の児童のあいだに存在している偏見をなくすためにゲームが用いられている実績もあります。人種差別に限らず、若者と老人の間にある偏見や、教師と生徒の間にある偏見、上司と部下の間にある偏見、企業と消費者の間にある偏見にもパワフルな効果を発揮するでしょう。

いまの日本であれば、政治家と国民とで同じゲームをプレイすれば政治家に対する偏見をなくすために有効に機能するかもしれません。

5.難しい目標も達成できるようになる

研究によって、ゲームをプレイすると自己効力感が増すことが分かっています。自己効力感とは、自分自身が自分の人生に対してポジティブな影響を与えられるという確信のことです。自己効力感が増すと、目標達成に向けて挫折することなく行動し続けられるようになります。

なぜゲームで自己効力感が増すのでしょうか。それは、ゲームというもの自体が、何度も失敗を重ねることで少しずつ腕を上げ、腕が上がっていることをスコアなどのフィードバックで受け取り、ついには成功できるようにできているからです。たった一回のプレイですべてのステージをクリアできてしまうゲームがあったらどうでしょう?それはまさしくクソゲーというものです。

ゲームをプレイしていれば、練習と学習し続けて試行錯誤を繰り返せば、最後には必ず成功できるはずだという信念が身につきます。これは自己効力感を高める一般的なプロセスなのです。そしていったん自己効力感が増すと、それは別の活動においても持続することが分かっています。

特にゲームが特別なのは、個々のスキルに対する自信が増すのではなく、どんな問題にも活かせる全般的な自己効力感が増すことにあります。その鍵はドーパミンにあります。ゲームに没頭すると大量のドーパミンが放出されます。脳内のドーパミン濃度が高まることで集中力を持続し、モチベーションを保ち、成功するまで諦めなくなります。

過去の研究により、努力を必要とするタスクを成功させた人は、将来のタスクに対しても努力を継続できるようになることが分かっています。脳内のドーパミン濃度が高まることで、もっとがんばろうという気になれるからです。

最近の研究では、この繰り返しによって神経の再構築さえも起こることが分かっています。つまりは、ドーパミン濃度が上昇することで主観的な恍惚感を得られるだけでなく、注意力を高めたり学習効率を高めたりする思考パターンが脳に組み込まれ、脳が鍛えられるということです。

6.人を助けられるようになる

ゲームをプレイすることによる自己効力感の向上は、学習効率を上げたり、目標に対する行動力を上げたりするだけでなく、もうひとつ特別な能力を得られることが分かっています。それは、自分の能力を使って人を助けようとする利他的な精神が育まれることです。

研究結果によれば、救出ミッションのゲームをプレイした人は、他者を助けようとするモチベーションがはるかに高かったそうです。これは、小説や映画などを通してスーパーヒーローのストーリーを知るのとはわけが違います。

単にストーリーを聞いたのではなく、ゲームを通して自己効力感が高まった人だけが、その強さと能力を人のためにも使いたいと思うようになったのです。ゲームは英雄的な利他的精神を解放し、他者に模範をみせる強さを育んでくれるのです。

ゲームは熟練を要する、目的ある活動である

本書を読めば、ゲームは罪悪感を覚えるようなものではなく、むしろ積極的に取り入れて人生に上向きの螺旋を作りだすものだということが分かります。

デジタルゲームが発達し、ゲームにおける大きな革命のまっただ中に居るいま、罪悪感からゲームしたい衝動を抑圧したり、ゲームなんて時間の無駄だと一蹴したりせず、ゲームを人間的成長の糧としてポジティブな気持ちで取り組みたいものです。

▼今日紹介したポイントをおさらいしましょう。

  • 1.特定の出来事から注意をそらせられる
  • 2.瞑想と同じフロー状態になれる
  • 3.人間関係を改善できる
  • 4.差別や偏見を減らすことができる
  • 5.難しい目標も達成できるようになる
  • 6.人を助けられるようになる

また、この記事では紹介しきれませんでしたが、本書ではさらにゲームを実生活に応用してゲームフルに生きるための具体的な方法が紹介されています。

▼ゲームはどうも毛嫌いしていたとか、ゲームのテクニックが実生活に生きたらなと思っているならぜひ本書を手にとってみてください。

ちなみに、著者の名前に違和感を覚えたならあなたは鋭いです。そう、著者のジェイン マクゴニガル氏の双子の姉はというと、あの「スタンフォードの自分を変える教室」を著したケリー・マクゴニガル氏なのです。すごい姉妹!

>> 我が書評はこちら「スタンフォードの自分を変える教室の要約と感想」

貴下の従順なる下僕 松崎より

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システム系の専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生のころからの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。