私の愛しいアップルパイへ
先日、ブロガーズフェスティバル 2019の第一セッションで登壇するためにドイツから馬を走らせて来ました。
ここで私はいつものように甘美な竪琴のように響く講演を行ったのですが、ブロガーズフェスティバルでは多くの有益なセッションを聞くことができるので、自分の講演だけでなく他の方の講演が聞けるのも楽しみにしていました。
なかでも楽しみにしていたのは以前からのブロガー友達でもあり地域ブロガーとして突出した才能を発揮している「とよすと」の瀬長明日香さんと東京散歩ぽの中川マナブさんによる対談でした。
ベルリンの地域ブログの育て方に悩む
昨年ベルリンの様子をお届けするメディアとしてKeiKanriとともに「ベルリン暮らし」を開設したのはあなたもご存知の通りです。
地域に関するブログというのは初めてでなかなか勝手が分からず、記事を書くのも思いのほか大変で伸び悩んでいました。
ベルリンでの生活の様子をまとめたり、有名な店について書いたりしてきましたがなんとなく方向性にシックリ来ず悶々としていました。
そこで、今回地域ブロガーとして活躍するお二人が登壇すると聞いて、私の目前に立ちふさがるレンガの壁を突破するヒントをもらいに行ったのでした。
活躍する地域ブロガーの凄さは純粋な地元愛にあった
▼お二人の講演の中では、例えば地域ブログとして取り扱うオススメの内容について、以下のように極めて具体的にお話ししてくれました。
- 開店・閉店・イベント情報
- 食レポ・工場の情報
- 駐車場・駅のコインロッカー
- バス情報(乗り場や生き方)
- 街から空港への行き方
- TV番組で地元が放映された
▼また、ブログのマネタイズの方法についても触れてくれ、大いに参考になりました。
- 地域イベントのカメラマン
- 市役所の広報ライターに
- 地域企業からの純広告
講演の中では細部にわたって地域ブログの運営に関してお二人が日々行なっていることを語ってくださったのですが、講演を通してジワジワと込み上がってきたのは「そこまでやるのか…!」という気持ちの良い驚きでした。
質疑応答では「地域に関する問い合わせが日々寄せられると思うのですが、どこまで対応してますか?」といった質問が出ました。そこで「とよすと」を運営する瀬長明日香さんから飛び出したエピソードに驚嘆しました。ある日とよすと宛に豊洲のとある駐車場の料金について問い合わせがあったそうです。その料金を知らなかった明日香さんは、実際に現地まで行って料金を調べて質問者に回答したそうです。
私だったら駐車場の料金なんてどこでも大した額にならないのだし、直接現地に行ってから考えればいいじゃないかと感じて、問い合わせを無視してしまいそうな気がします。
なぜそこまで手厚い対応ができるのでしょうか。彼らがジェームズ・ボンドにも劣らない紳士だからでしょうか?
そもそも、地域ブログとして書く内容に関しても店の開店・閉店情報や駅のコインロッカーの情報、バス乗り場の説明や街から空港への行き方など、面倒な割にいまいち華の無いネタばかりなのです。そのような情報を日々書き連ねることについて二人は嬉々として語っていました。
最初はお二人が私には理解しがたい性癖を持ったど変態だからなのかな?と感じたのですが、40分の講演を聴いていく中で気づいたのは、お二人の一番根本にあるシンプルな行動指針は「自分が住んでる地元が好き」という純粋な気持ちなのだと分かりました。
地元の情報を発信して一発当ててやろうとか、情報収集しやすい地元のメディアを作って効率的にアクセスを集めようとか、そんなことはまったく眼中にない様子でした。
単に自分が住んでいる地元が好きで、地元のことをもっとよく知りたくて、こんなに素敵な地元を訪れた人が最大限心地よく過ごせるようにおもてなししたいし、願わくばこんな素敵な街を好きになって欲しいという純粋な気持ちに基づいて地域ブログを運用していることが、ある瞬間に頭でなく心で理解できたので、妙に講演の内容に納得できたのを覚えています。
だからこそ駅のコインロッカーの情報や、日々価格変動する駐車場の情報などを日々書き連ねられるわけです。だからこそ赤の他人に駐車場の料金について尋ねられると、「あ、まだ自分の知らない場所があった!」と現地まで調べに行けるわけです。
結果として、やろうとすれば誰にでも出来ることを、誰にもできないくらいやっているのがお二人でした。これならうまくいかない訳がありません。講演が終わった時には素晴らしい感動に包まれていました。
自分がカッコつけていたことがよく分かった
講演を聞いたあと、自分は地域ブログをやる上でカッコつけ過ぎていたのだと感じました。ベルリンに住んでみて感じた日本との違いや、ベルリンでのCoooooolな生活など、見栄えの良い記事ばかり書こうとしていた自分に気づかされました。
それ故に、駅のコインロッカーを調べようなんて発想には至らず、それを聞いても面倒くさそうだと感じるばかりでした。
そうではなく、ただ純粋にベルリンのことをもっと良く知りたいという気持ちを基に動けばよかったのでした。
実際のところ、私がベルリンに移住したのはベルリンに対する純粋な興味からだったのです。それをただメディアに反映すれば良いだけだったのです。
お二方の講演は地域ブログを運営する上で最も大切なことを肌で感じることのできた素晴らしい時間となったのでした。
▼お二人のブログはこちら。
貴下の従順なる下僕 松崎より